
「組織マネジメント」に効く組織マネジメントに全く関係ない本3冊〜越境読書 Vol.1
越境読書によって壁を越えていこう
もしあなたがコミュニケーションに困っていたら、『うまく伝える技術』だとか『コミュニケーションは○○を意識せよ』といったようなタイトルの本を探せば、ヒントは見つかるだろう。
課題に対して直線的に解決策を探すことは極めて正しい。その本には課題をピンポイントで解決し得る、ノウハウや体系化された理論が凝縮されているはずだ。
しかし、もしあなたが「慢性的に」コミュニケーションに悩んでいたらどうだろうか?答えを直接的なタイトルの本に求めてみても、そこに書いてあることは、どこかで見て、どこかで実践した内容のはずだ。そこに新たな発見はなく、面白さも感じられないだろう。
直接的な解決策からは、課題から抜け出すためのユニークなアイデアが生まれにくくなっていく。慢性的な課題は、アプローチを変えなくてはならないのだ。
そんな慢性化した課題意識の中で、もし本の中に救いを求めるのであれば、全く関係のない領域の書籍に頼るべきだ。違う領域の知恵が、思わぬ示唆をもたらしてくれることは多い。
実際、人類の歴史を顧みれば、芸術の世界に科学が、科学の世界に哲学が新たな活路を開いてきた事例は数え切れない。
たとえば、ルネサンス期の芸術家たちは、当時の最新の科学的知見であった「幾何学的遠近法」や「解剖学」を積極的に学び、絵画や彫刻の表現力を飛躍的に高めた。レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロは自ら解剖を行い、人間の筋肉や骨格を正確に描き出すことで、それまでになかった写実的かつ躍動感あふれる作品を生み出した。
もしくは、デカルトは「我思う、ゆえに我あり」という有名な哲学命題だけでなく、幾何学や解析学の基礎を築き、近代科学の方法論に大きな影響を与えた。懐疑から始め、論理的に確実な知識を積み上げるという手法は、領域を超えて、実験や観察を重視する科学の姿勢を後押しした。

私たちは壁にぶつかった時、越境しながら異分野との接点を絶えず求め、そこから得た発想を混ぜ合わせることで、これまでにない価値や発明を生み出してきた。
未知の世界に飛び込み、意図的に越境することで得られるインスピレーションは大きい。そこには予想外の発見や気づき、そして何より知的な刺激が潜んでいる。
だからこそ、読書も異分野に踏み込んでいこう。そして、このように課題解決を異分野に求める読書方法を「越境読書」と名づけたい。
「越境読書」を通じて新しいエッセンスを手に入れ、自分の専門や日常の仕事に活かしていくこと。これこそが、私たちに飛躍をもたらしてくれるのだ。
そんなコンセプトで書籍を紹介する連載をしていきたいと思う。
初回のテーマは「組織マネジメント」だ。リーダーが組織をどう運営していけばいいのか。その悩みは尽きることがない。そして、その悩みに比例して、この領域の本も本屋のビジネス書コーナーに行けば大量に陳列してある。
しかし、ここではあえて越境して、人文科学や小説のコーナーに足を運んでみよう。そこからの選んだ3冊を紹介したいと思う。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?