「自動運転いらない」会場では激論も 北米ショー

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25668030U8A110C1000000/

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同じ月にCESとデトロイトモーターショーのある今月はトレンドの対極や振れ幅を近い時間軸で見るいい機会なのかも知れない。

CESではAptivとLyftがタイアップして自動運転車によるRide-Hailing Serviceの公道デモを実施したり、トヨタが未来のモビリティの姿として”e-Palette”を発表したりとAEV (Autonomous and Electric Vehicle)の未来を疑うどころか加速させるメッセージが飛び交った。一方でその1週間後に開催されるデトロイトモーターショーではもちろん自動運転には触れるもののその温度には相当の差がある。興味深いのはCESの展示を行っているプレイヤーとデトロイトモーターショーで展示を行っているプレイヤーには相当の重複があるという事だ。CESは遠い未来を、デトロイトモーターショーは近い未来を、あるいは前者は最速で物事が進んだ場合のシナリオを、後者は逆のシナリオをベースにしていると言えるのかも知れない。

そんな中「消費者団体が自動運転いらないと言っている」というこの記事は色々な事を考え直すいいきっかけのように思う。世の中でどれだけの人が「自動運転技術の目的・提供価値」を言えるだろうか?より安全な交通?渋滞の低減?飲みに行った後でも自家用車で帰れる?

安全な交通だが、それは遠い先の未来で実感できるかも知れないが、数年という時間では無いだろう。自動運転の車が信号無視したトラックと事故を起こしたという記事があったように、自分から事故を起こす事を減らすことができても、他の車起因の事故を抑制することは難しい。被害軽減の為の周囲注視の予防運転を行う事はできるだろうが、非常にいらだつものになるかも知れない。

次に渋滞の軽減だが、これも相当遠い。渋滞発生のメカニズムをご存知の方にとっては明白だが、渋滞の発生も解消に時間を要するのも速度差と時差が原因である。前の車が動き出した瞬間に全く遅れがなく、かつ完全に速度が一致していれば、渋滞はほぼ発生しない。100km連なっている車の隊列が、一番先頭が動いた瞬間に一番後ろも動くのだから。全ての車が自動運転でかつ車車間通信なども装備した状態であれば、上記のような効果が得られるがその中に人が運転する車があるとそこで効果は少なくとも低減される。今の方式の自動運転車の普及には相当の時間がかかるので、渋滞解消を実感できるまでには相当時間がかかりそうだ。

飲みに行った後でも自家用車で帰れる?前述の2つに比べるといささか個人的で小さな価値だが、これは実現されるだろう。でも、自動運転が制御できない状況に陥った際、人に制御を移行するレベルで普及させるというのは1つの方策なのだが、飲酒した人がその状況に対応するとそれは違法だろう。道路で立ち往生したまま、酔いを覚まさなくてはならないのか?あるいは、サポートサービスなどによりその状況から脱出する?

重要なのは、技術はEnablerであって価値には直結しないという事だ。また、1つの技術が提供する価値は限られている。自動運転、電動化、通信端末の普及による嗜好変化など複合要素で「移動」と「輸送」を再定義する必要があるのではないか?スマートフォンが世の中にもたらした価値は何か?私は「これまで有意に処分できなかった細切れの時間に何か価値があることをできるようにした」だと考えている。メールのチェック、銀行口座からの送金、航空券の手配、もしくはゲームを楽しむ、これらは空いた5分で簡単にはできなかったことだ。これにより人々は何にも使えない小さな時間を何かに使えるようになった。またGPSの利用によりいろいろなアプリが用意され、それは人々の空間の使い方を大きく変えて効率的にした。これからも「時間」と「空間」の単位価値は増えていく。

これまで「移動」と「輸送」は大きな価値の革新が行われてこなかった領域であり、この「時間」と「空間」の利用に密接に絡んでいる。多様な分野に勃興する新しい技術を使って、どう「時間」と「空間」を有意に活用できるようにするか?ではないだろうか。

英文だが、ポイントをうまくまとめた記事があるので以下に掲載する。

https://corporate-innovation.co/2018/01/15/next-generation-mobility-stratifies-oems/

https://corporate-innovation.co/2018/01/15/next-generation-mobility-stratifies-oems/

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