【MLB】本当にいいチームはどこなのか

 MLBファンの皆様、お疲れ様です。佐々木朗希くんがMLB挑戦を表明して多分2ヶ月くらいたった今ですが、ここから各球団と面談をしながらどのチームに行くかを決断するというフェーズに向かっているところです。そんな中でフィラデルフィア・フィリーズとボストン・レッドソックスの撤退が明らかになった、つまり書類選考落ちになったらしいです。ボストンはさておいてフィラデルフィアが候補から外された際にXでは「フィラデルフィアの治安が悪い」「フィリー(フィラデルフィア市民のこと、つまりはファン)がヤバいやつだから悪い」「白人至上主義のチームだから佐々木に断られたんだ」「そんなところよりうちの贔屓に来い」と結構フィラデルフィアのことをネガキャンしてる方々が多かったんですよね。
 今回はフィラデルフィアは本当に選手にとって悪い街なのか、そしてそういう意味で選手にとっていい街はどこなのかについて考えていきたいと思います。

そもそもどうしてフィラデルフィア=治安が悪い街になったのか

 皆さんは日本で治安の悪い街、と言われたらどこを思い浮かべますか?例えばすすきのや歌舞伎町、中洲のような歓楽街、もしくは貧困層が多いと言われている沖縄県、もしくは最近の事件で被告人の死刑が確定した甲府市殺人放火事件の現場である山梨県甲府市でしょうか?
 正直どれもピンと来ないのが多くの人の意見だと思います。実際のところ不動産情報サイトのスマイティによると犯罪率が以下のようにランキングになっています

大阪に対して正直そうだろうと思う人は多いと思いますが名古屋や神戸が治安悪いというイメージはみなさんあまりないのではないでしょうか、勿論犯罪率が全てではありませんが治安を測る上で1つものさしになると思います。

テレビの報道による印象

 さて、本題に戻ってなぜフィラデルフィアの治安が悪いと思われているかについてを考えます(思われている、と書いていますが実際治安がいい街とは正直思っていません。)
 2024年初頭、山本由伸選手がロサンゼルス・ドジャースへの入団を決めた際にフィラデルフィア・フィリーズの方が契約額が高いのにも関わらずドジャースを選んだと言われた時にも恐らく話題になったフィラデルフィアゾンビの印象がフィラデルフィアの治安の悪いイメージと直結しているのではと考えています。フィラデルフィアゾンビとは超強力な鎮痛剤かつ危険な副作用も沢山ある麻薬の一つであるフェンタニルを乱用し、まるでゾンビのように街を徘徊した若者のことを言います。フィラデルフィアで蔓延した事からフィラデルフィアゾンビと呼ばれ、現在のアメリカの社会問題のひとつになっています。もしこのニュースを見たことがない、初めて知ったという方はフィラデルフィアゾンビについて調べて見ていただけるとこの問題についてよくわかって頂けるでしょう。そしてあなたはきっとこう思います。「フィラデルフィアはなんて危険な街なんだ。」
 決してこの感覚は間違いではありません。しかしこのように一度認知をしてしまったら最後、きっとフェンタニルに対する恐怖と直接結びついている街としてフィラデルフィアはイメージされます。
 もうひとつMLBファンにとってわかりやすい例を見てみましょう。10月に巨大なハリケーンがフロリダを横断し、タンパベイ・レイズの本拠地であるトロピカーナフィールドの屋根を破壊、このハリケーンにより十数名の死者が出ました。僕のようなレイズファンが悲しみに暮れるなかMLBを最近好きになった方や特に興味を持たない日本人は屋根のないトロピカーナフィールドを見た上で今後タンパベイ・レイズの話題になった際にこう思うでしょう。
「あ、屋根ぶっ壊れたところだ。」
 ちなみにこれはレイズファンの中でもこう思う人も多いと思います。恐らく大谷翔平がレイズ移籍とかそんな奇跡が起こらない限りはレイズと言えば屋根が壊れたところか大型遊撃手が不祥事を起こしたところの2択です。こういう思い込みはかなりの長期間響くものだと思われます。かくいう私もアストロズと言えばサイン盗みという連想は中々なくなりません。こっちの方が例えがわかりやすかったですね。

フィリーズファンは本当に荒いのか

 こっちの方が割と論点になりがちであるフィラデルフィア・フィリーズのファンの民度が低いことについて、まぁ実際荒いと思います。

 実際にこのように敵チームのファンにFワードをぶちまけるような人間も多数いるようです。日本で言う阪神タイガースや浦和レッズのようなイメージでしょうか。ジャビットを引きずり回す阪神ファンとかも一時期話題になっていましたよね。
 フィラデルフィアファンのタチの悪いところ味方への当たりもしっかり強いところでそこはMLBのプレイヤーも強く感じているらしいです。

実際のところは不明ですがフィラデルフィアにあるNBAのチームのフィラデルフィア・セブンティシクサーズに全米ドラフト1位で入団したベンシモンズの1件(話すと長くなるので割愛させていただきます。)もフィラデルフィアのファンからのバッシングもトレード要求の理由に繋がったのでは無いのかとも考えられます。まぁあれはどのチームでも擁護出来ないと思うのはここだけの話ですが。

実際のフィラデルフィアはどうなのか

 ということでフィラデルフィアの治安について調べて見たいと思います。
 今回はNUMBEOのCost of LivingによるデータのCrime Indexを利用していきたいと思います

About Crime Indexes
The data in this section is derived from surveys conducted by visitors to our website. Questions in these surveys are designed to be similar to many scientific and government surveys.
Each entry in the survey is assigned a number within the range of -2 to +2, where -2 represents a strongly negative perception and +2 represents a strongly positive perception.
To ensure data accuracy, we have implemented filtering measures to identify and exclude potential spam from our calculations. Our algorithms identify users who exhibit spam-like behavior and their inputs are not considered in the calculations. This helps maintain the integrity of the data and provide reliable results.
To make survey results easier to interpret for our users, we present them on a scale ranging from 0 to 100. This scale allows for a clear and straightforward understanding of the data, enhancing user experience and facilitating meaningful comparisons.
Our current index, which is continuously updated, is generated using data up to 36 months old. We carefully select cities for inclusion in the index based on a minimum number of contributors to ensure statistical significance. Additionally, our semiannual index is calculated twice a year by incorporating the latest data into the historical view.
Crime Index is an estimation of the overall level of crime in a given city or country. We consider crime levels lower than 20 as very low, crime levels between 20 and 40 as low, crime levels between 40 and 60 as moderate, crime levels between 60 and 80 as high, and crime levels higher than 80 as very high.

https://www.numbeo.com/crime/indices_explained.jspより


犯罪指数について
このセクションのデータは、当ウェブサイトの訪問者が実施した調査から得られたものです。これらの調査における質問は、多くの科学的調査や政府による調査に類似するように設計されている。
調査の各項目には-2~+2の範囲で数字が割り当てられており、-2は強く否定的な認識を、+2は強く肯定的な認識を表しています。
データの正確性を確保するため、潜在的なスパムを特定し、計算から除外するフィルタリング手段を実装しました。当社のアルゴリズムは、スパムのような行動をとるユーザーを特定し、その入力は計算で考慮されません。これにより、データの完全性を維持し、信頼できる結果を提供することができます。
調査結果をユーザーにとって解釈しやすくするため、0から100までのスケールで表示しています。この尺度により、データを明確かつ分かりやすく理解することができ、ユーザー・エクスペリエンスが向上し、有意義な比較が容易になります。
継続的に更新される現在の指数は、36ヶ月前までのデータを使用して作成されている。統計的な有意性を確保するため、最低限の貢献者数に基づいて、指数に含める都市を厳選している。さらに、年2回、最新のデータを過去のデータに組み入れ、犯罪指数を算出している。
犯罪指数は、ある都市や国の犯罪の全体的なレベルを推計したものである。私たちは、犯罪レベルが20より低い場合を「非常に低い」、20から40の場合を「低い」、40から60の場合を「中程度」、60から80の場合を「高い」、80より高い場合を「非常に高い」とみなしている。

DeepL.com(無料版)で翻訳しました。

つまり5件法による犯罪に対する意識についてのアンケート調査をベースにしているようです。ちなみに他にも月の生活費がおよそどのくらいかかるかなどのお金の話などたくさんの生活に関わる情報の統計データを貼ってくれてます、生活版Fangraphsですね。
 さてそんなフィラデルフィアのCrime Rateは

iPhoneのスクショドカ貼りで恐縮ではございますがこんな感じになっております。公式的にはクライムレートは66、犯罪指数の評価としては高いということで間違いないです。特にUsing or dealing drugs、薬物の使用もしくは販売の恐怖についての評価が79とかなり高い数値になっています。逆に生まれ育った国や環境、性差人種による差別に対する恐怖の評価は47とかなり低いのでは無いでしょうか、よくフィリーズは白人至上主義という声も聞こえる中ではここは思いのほか低いのではないでしょうか。
 実際に数字を出しても比較対象がないと分かりにくいですよね。今回はロンドンを例に比較してみましょう。

いかがでしょう。ロンドンは犯罪指数55、評価的には中程度、決して安全とは言い切れないとは思いますがフィラデルフィアと比べてみたらその差は一目瞭然かもしれません。特にドラッグに関しては15ポイント近く差がついているのも印象的です(それでも比較的高いので現代において違法薬物に関しては大きな社会問題かもしれません)。

実際に住みやすい街について考える

 フィラデルフィアに関することが分かったのですがそれでは実際に土地柄をもってチーム選択をするのならどの土地がいいのでしょうか。

治安以外も考える

 治安の善し悪しは大切です。犯罪率なんて低ければ低いほどいいです。ギャングなんて少ないほど死ぬリスクが下がります。でもその一方で治安以外も考える必要ありますよね。例えば物価、MLBを始めとした北米スポーツには基本的に給料に対する制約がある程度着きます。MLBは無いに等しいもんではありますが。例えばNBAにはMAX契約というものが存在し、リーグトップでも契約できる金額の上限が決まってます(それでも年40Mドルとかをゆうに超えることになるのでそこまで問題では無いですが)逆にMLBやNBAには最低賃金も決められているので生活費や物価は結構気をつけた方が良いですよね。また、もうひとつ大きな存在があります。そう、税金ですよね。アメリカ合衆国は50もの州を統括している連邦国なのはみなさんもご存知でしょう。州とはひとつの国と言っても差し支えなく、合衆国憲法や連邦法のように共通の法律はあれど州によっては憲法や法律が別々に策定されています。
 例えば一番所得税が高いのはロサンゼルスやサンディエゴ、サンフランシスコやオークランドなどの都市を有するカルフォルニア州で累進課税制度を採用しており、高所得層は13.3%の所得税を納付する義務があるのに対し、テキサス州やフロリダ州は所得税のない俗にいうタックスヘイブンと呼ばれる土地になっています。他にもコロラド州は所得の多寡にかかわらず4.55%の納付の義務があります。このように住む街によって同じ年俸でも手取りは変わります。
 ここで公民の授業を思い出した方は少し引っかかると思います。日本の所得税の税率は累進課税のシステムで45%もある。最高でもカルフォルニアの13.3%しかとられないのかという疑問が浮かびます。
 実は州のほかにもアメリカの連邦への納税も存在しておりそちらは州にかかわらず累進課税制度により最大37%の納付の義務があります。これにより大谷さんのような700Mドルの契約もカルフォルニアに住めば50%は連邦政府や州に持ってかれます(ただし寄付や基本的な控除はここでは計算しないことにします)。逆に後払いのシステムを活用して10シーズンの契約満了後にフロリダに移り住めば約430Mドルの手取り、約80Mドルの節税ができます(控除等以下略)。
 実際に連邦税について調べるとわかりやすい表があったのでここに張らせていただきます

 OverとBut not overの間の所得のTax rateを見つけ

自分の所得-Over*Tax rate+Plus

という式を計算することで連邦への納税額が決まります。今回佐々木選手の移籍から始まったものなので彼の推定される年俸、マイナー契約なので大谷選手と同じく700kドルのMLB最低賃金だと仮定します(本来はメジャーにいる期間分を700kドルの日割り、マイナーにいる間はマイナー契約の日割りという契約がほとんどですが佐々木選手のことなので1シーズンメジャーに残れるでしょう)。700,000ドルの所得の場合
(700,000-693,750)*0.37+186601.5
=6250*0.37+186601.5=2312.5+186601.5=188914
 700000ドルの年俸の場合188914ドルが連邦に持っていかれます。511086ドル手取りでもらえます。純粋に12分割で月給42590.5ドルになります。ちなみにCost of Livingによるとアメリカでの月の生活費は家賃抜きでおよそ1,163.7ドルかかるといわれています(勿論都市によって異なります)。ここに州それぞれの独自の所得税がかかります。

MLBチームのそれぞれのデータを見てみる

 ということでこれらの治安や税金の要素を考えた際にどのチームの本拠地が住みやすいのかについて調べてみます。前述したデータのCrime Index,差別について、ドラッグについての三項目、ほかにも今回は追加データとしてneighborhood scoutによる1000人あたりに発生する犯罪件数を生命被害(殺人、強姦、居合わせた状況での強盗、暴行)と財産被害(居合わせていない状況での強盗、盗難、車両盗難)の2項目で出したデータ、そして各本拠地での所得税を引かれたのちの年収(控除や他の税金は今回見ないことにしました)を表にまとめました。今回は本拠地がある街の統計情報を用います。例えばロサンゼルス・エンゼルスは名前にロサンゼルスと入っていますがアナハイムが本拠地なのでアナハイムの統計情報を用いますし、コロラド・ロッキーズはコロラド州デンバーが本拠地なのでデンバーの情報を用います。と言いたかったのですが、アトランタ・ブレーブスの本拠地球場があるカンバーランドは非法人地域(市町村のような自治体ではなく国等に直接統括されている町)は情報がないというような問題もあるためここだけアトランタですし、トロントのみneighborhood scoutのデータがないのでToronto Police service(https://data.torontopolice.on.ca/pages/open-data)のオープンデータの情報からまとめました。


 このような結果になりました。全体的にドラッグの蔓延はどの地域も問題になっている一方で差別が強い街はそこまで多くない印象です。治安もクリーブランド、デトロイト、ボルチモア、セントルイスが高いのは想定通り、ブロンクス区が思ったより高かったという点は個人的な感想です。手取りに関しても州税のない街で50万ドル、一番税がかかるカルフォルニアでも44万ドル、トロントのみカナダの連邦税が高い関係から40万ドルとなっています。実はカナダ連邦税の最高税率は33%ですがアメリカだと36万ドルで32%になるところ22万ドルを超えると33%が適用される、またトロントがあるオンタリオ州も22万ドル以降は13.3%の州税率に設定されているためかなりお金持ちからとる街になっています(ちなみにカルフォルニアの最高税率である13%は100万ドル以降の収益から適用されるようになっていきます。)

別に欠点があるから悪い街ではない

 この文章を書いてる当初はフィラデルフィアだけがぼろくそに言われるこの現状に思うものがあったので書いていきましたが長い文章になってしまいました。こんなにデータを一生懸命にまとめた上でいえることは「このデータがあるからこの街に移籍はしてほしくない!」みたいな考えにはならないでほしいです。

治安の良し悪しはマクロではない

 例えばなんですが大阪と一口に言いましても西成と住吉では治安が違いますよね?実際にニューヨークと一口に言ってもブロンクスとクイーンズでは各統計情報が異なったものでニューヨークのCrime Indexは55くらいに収まっていました。LAもギャングがいるところは普通に危険だし、そもそもアメリカでは夜に一人で出歩かないのが原則ってどこのサイトでも書かれています。つまりいくら治安のいい地域でも危ないところは危ない、逆に治安の悪い街にも安全な場所はあるということです。もっと言えば野球選手はシーズンの半分はアウェー、つまりNYからLAまで各地域をめぐりながら戦っていくものです。なので治安が悪いから行きたくないなんて言えませんよね。

ファンの民度なんて大差ない

 こんなことMLBファン、いやスポーツファンなんてみんな分かっているはずです。自分のチームは民度高くて他チームは民度低いという思い込みをしているだけでしょ、
 NPBファンのXとか見てると毎日けんかしてるしマドリディスタとクレもGOAT論争を毎日しているし、レブロン信者が大暴れしているし、なんでフィリーだけ後ろ指刺されてるんですか!!かわいそうじゃないですか!!!

そもそも選ぶ立場になれる人は少ない

 忘れられがちですがMLBもドラフト制です、基本的に初期配属がどこになるかなんてわかりませんよね、治安悪いから、税金が高いから指名拒否する若手なんてほとんどいないのではないのでしょうか。勿論佐々木君は完全な選ばれる立場ではありませんが100%希望が通る大きな立場とまでは言えませんよね。ほぼ選ばれる立場だった河村選手(現在NBAメンフィスグリズリーズとの2way契約)はメンフィスとの契約からキャリアを始めましたがメンフィスはアメリカで1番治安が悪いです。治安と契約を込みで考えたらビーコルセアーズにいた方が安泰だったかもしれません。でもそれを超える何かがあったからアメリカにいると思います。治安の良し悪しとかでその大きな志を諦めないでほしいなと思います。

まとめ

 まとめるほどではないですがフィラデルフィアは派手に住みにくい街には見えませんでした。ボルチモアとかデトロイトとかセントルイスのファンは今後治安を語る際には気を付けるべきかもしれませんね。
 逆に住みやすい街はどこでしょう、比較的安全で税金が安い、そう!!!!!!!タンパベイレイズへの移籍をお勧めします!!!!!マジでいい街だと思います(クソデカボイス)!(なおハリケーンが結構来る街になっております)

参考資料

numbeo Cost of Living(https://www.numbeo.com/cost-of-living/)
Neighborhoodscout(https://www.neighborhoodscout.com/)
Tax
Foundation'State Individual Income Tax Rates and Brackets, 2024'(https://taxfoundation.org/data/all/state/state-income-tax-rates-2024/)
Toronto Police service(https://data.torontopolice.on.ca/pages/open-data)
カナダの税金(https://qlseeker.ca/life-info/tax/#01)
連邦所得税の累進課税制度とは(https://www.cdhcpa.com/ja/whatisthefederalincometaxprogressivetaxsystem/)

おまけ

Crime Indexと犯罪率の相関があるかをいちおうしらべました


そんなにない


数日前にアンケートでイメージで思う治安の悪い街を聞いてみました

やっぱりフィラデルフィアのイメージって強いんだなぁと思いました。

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