鯨骨群集
雨がちな故郷に
老親を置き去ってきた
まだ萎えてはいない腕をさすって
(安息角だ、と思う)
そこは蚕の翅のように柔い
身丈からずいぶん高いところに向日葵を見て
まだ夏になんてなってはいけないでしょう
迷い込んだ先、
いつまでも夜啼鶯たちは眠らずにさえずっている
いつか夕陽を観に行った浜辺
鯨が傍を泳いで
大きく深呼吸をした
はぜるように吹き上がる潮
日差しにめまいがする
(この個体は
どこの海底に肉体を与えるのか
この個体の姿形が消えてなくなるまでに
どれほど多くの生物が鯨骨の中で育まれるのか)
動物の死肉と簒奪した母乳を淡々と口に含む暮らしを
原罪と呼ぶつもりもない
だけど
循環という言葉については鳥瞰できればよかったのかもしれない
ただ廻っている、ということ
潮汐、
ここは見知らぬ花の咲く土地で
庭先の極楽鳥花は微動だにせずこちらを見つめている
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