映画『トラペジウム』初見感想殴り書き
前書き
TLでもちらほらと話題に上がっていた作品。
主題歌を歌っているの追っているVだったこともあり興味はあったものの元々腰が重い性分なのもあり自分から食指は動かず、友人に誘われたので見てきました。
定住型のオタクを他の沼に誘ってくれる貴重な友人に感謝。(今のところ鬼滅にワートリにスタァライト、今回のトラペジウムを入れて4勝ってところですかね……)
事前情報に関しては見る予定がなかったのでほぼゼロ。
Youtubeに上がっている公式の予告とかも主題歌発表時のものを一本見た程度で、シリーズものの作品以外で映画館に行くのもなんだかんだ言って初めての経験。
主人公の名前すら知らない状況でシートに座りました。
以下、映画「トラペジウム」のネタバレを含みます。
というか本編見た前提でいろいろ書いてますので是非見てください。
それぞれのキャラクターへの所感
東:東ゆう
打算で動くズルい女ですね~~~。好き。
作中ほぼこいつの視点で話が進むので、この女を好きになれるかどうか、受け入れられるかどうかがこの映画の評価に直結すると言っても過言では無い。私は好きです。
ただし、賛否はマジで分かれると思う。特に中盤。
どこかツメの甘い狡猾さと根っこの部分にある泥臭さのバランスが良い。
目的のために他人を利用することも厭わない性格の悪い女。
だけどその言動の本質はどこまでも純粋な"アイドル"という輝きへの焦がれるような思いっていうのがまたいい。
結局のところ夢に真っすぐすぎて周囲と熱量が合わないっていう話。本当に一点の曇りもない純粋な思いって傍から見たら狂気的に見えるよね。わかる。最初からアイドルという目標に掲げて人を集めたわけじゃなくて、そこについて伏せたうえでまずは友達四人組としての「東西南北」を作ってるあたり根回しとかは結構慎重派。実際それで計画通りアイドルになるまで付き合ってくれてるので、計算ずくとはいえ人を惹きつける力も少なからずあったんだろうとは思う。
そういう点でもなるべくしてアイドルを目指した女。
作中で何度も描かれていた癖。
左手で首筋に触れて深呼吸するのがルーティーンというか、アイドルに憧れる一人の少女である(だった)自分と、アイドルへの計画に沿って動く自分を切替えるスイッチなんだろうな。
最後の高台でキャンセル入ったのはアイドルとしてじゃなくて1人の友達としてほかの3人と話すシーンだったってこと。多分。
少なくともわざわざキャンセルシーン入れたってことは取り繕わないで話すシーンとして描かれているとは思う。
あのCDショップの袋を見せる3人のシーン、めちゃくちゃよかった。
全員が誰に言われるでもなく発売日にCDを買って、4人で散々練習した同じ場所に集まって。
そんな場面だからこそ、東はスイッチを切り替えることなく素直に謝れたんだろうなとも思う。
西:大河くるみ
スタッフロールが流れるまでCV.羊宮妃那っての気づかなかった。
羊宮さんがこの作品に出てるのはぼんやりと知ってたけど、まさかのバリバリメインキャスト。プロって凄い。
例の発狂シーン、迫力マジで凄かった。
流し読みしたパンフレットにもキャストオーディションに例のシーンがあったらしい。
キャラとしてもかなり魅力的で、笑顔の破壊力がすごい。かわいい。だが普通高専にそんな女子は存在しない……。
結構表情がころころ変わるタイプで、ロボコンで泣いたりボランティアで拗ねたりとにぎやかな子。
それだけにそんなくるみの表情がだんだん死んでいく流れは見ていてかなり辛かった。
東の"絶対にアイドルになりたい"という夢に気づいていて、友達のために自分が苦手なステージの上で限界まで頑張った優しい子。
この子が本当に壊れる前に限界寸前で発狂してくれたおかげで全員が一度立ち止まることができたともいえる。
南:華鳥蘭子
ゆるふわお嬢様。家でけぇ。
多分一番周りが見えてた人、金がある人は余裕もある。
くるみと2人で話してるシーンが印象的で、アイドルとして人前に立つことにストレスを感じていたくるみのケアをしてくれていた。
くるみが発狂したときに東の腕を掴んで引き留めるシーン。音的に結構強めに引っ張ってて、普段温和な南さんの静かだけど確かな憤りを感じた。
それまでのくるみとの会話シーンがことごとく二人きりだったので、くるみの状態にちゃんと気づいていたのが多分南さんだけってのもあったんだろうな。あの説得の場面は。
金銭感覚以外は一般的な感性に一番近い。っていうのはパンフレットに書いてあった。
新しいことに前向きに挑戦して、そこから得られたものをちゃんと大切にできる人。
大人になってボランティアで世界を飛び回る彼女の土台には、4人で過ごしたあの日々が確かに根付いているっていうのが本当に良い。
北:亀井美嘉
東ゆうのファン第1号。
東ゆうに救われ、東ゆうに再び火を燈した女。
初登場シーンから漂う東へのクソデカ感情。こいつはやべぇ女の匂いがするぜぇ……!!と思っていたら主人公の方がずば抜けてやべぇ女だった件について。全体的に物静かであんまり思ってることを言わないタイプ。
そんな美嘉がちゃんと感情を露わにしたのは東が「ボランティア仲間」だと自分たちのことを紹介したとき。
他の2人にも共通して言えることだけど、皆それぞれの事情で友達らしい友達がいなかったところに現れて引き合わせてくれた東に「友達」じゃないと言われて少なからずショックを受けたのは当然といえばそう。
終盤で自分を見失った東に昔のことを語る美嘉。
東ゆうがアイドルの輝きに魅せられる前から、東ゆうという星に魅せられていた女、亀井美嘉。
そんな東の本来の輝きを知っていたからこそ、偶像の輝きに目を焼かれた東を止める言葉が出てきたと考えると感慨深い。
アイドルやってた頃はスキャンダルを踏んだりと危ういところもあったけど最終的に円満そうでちょっとほっこり。それはそれとしてあの時点で上の子がもうすぐ小学生って結構やることやるの早いね???
余談
東西南北、名前にモロ入ってる東はともかく他の3人の名前について
南の華"鳥" =朱雀
西の大河"タイガ" =白虎
北の"亀"井 =玄武
で四神じゃん!!!ってなった。気づけたのは冬木の虎のおかげ
工藤真司
トラペジウムの一瞬の輝きをカメラに収めた男
東の共犯者の様な立ち位置でいて、一定の距離感を保っていたMVP
趣味のカメラが最後まで鍵になっていてニクい演出家。
ついでにこれだけやっといて東とワンチャンもなさそうなのが高専男子って感じでベネ。
ちなみに高専の女装文化はマジである。
(というか男女比が偏ってる学校だったら多分だいたいあると思ってる。)
文化祭とか高専周りの解像度が絶妙に高いのも個人的には面白ポイントでした。
曲と表題について
オープニング
唯一知ってた情報。
『アイドルを目指す少女の物語』を彩る曲として選ばれたのがこちら↓
映画の本筋とは少しズレるので簡潔に済ませます。
この曲を歌った星街すいせいさんはホロライブプロダクション所属の所謂"Vtuber"ですが、事務所に所属するにあたって応募したオーディションに一度落ち、そこから二度目の挑戦で夢を勝ち取っています。
そういう背景もあり、輝かしい部分だけではなくそこに至るまでの苦労も含め、本人の中にある"アイドル"という職業への思いは並々ならないものであることは想像に難くありません。
作中で明かされますが、本映画の主人公である東ゆうもアイドルのオーディションにことごとく落ちているなど、浅からず通じるところのあるタイアップとなっています。
なりたいじぶん
『東西南北(仮)』、アイドルとしての輝かしい初舞台。
3Dも使ってダンスにも気合の入ったライブシーンでしたがちょっと面白く思ったのは、本来なら写らないはずのカメラスタッフや、スタジオの天井など撮影の裏側の要素が盛り込まれていたこと。
アイドルが主役なのではなく、アイドルを目指す少女が主役の物語ということで、ただ輝かしいステージを描くだけじゃなくて、その裏側にいる人たちの存在を蚊帳の外にしない描写が印象的でした。
ついでに初披露前の円陣のシーン、東西南北の配置じゃなかったんだよね。
時計回りに東➝北→南➝西
後々考えてみればここは、他の3人が「東西南北」としての在り方を特に意識してなかったことのメタファーだったのかもしれないなぁ……と思うなど。
エンディング:方位自身
ズルいですねぇ~~~……
あの日完成させられなかった宿題の答え合わせのシーン。
映画の作品としてのエンディングであり、行きずりで解散してしまったアイドルグループ『東西南北(仮)』としての正式なエンディングでもあるわけだ……。
これがYoutubeで聞けるんですか???
表題:トラペジウム
これね。ズルいです。
2 オリオン星雲の中にある四つの重星。非常に高温で強い紫外線を放ち、星雲全体を光らせる。
(※現在では観測技術の向上によって厳密には四つではないとされているらしいです)
空に輝いた四つの星は言わずもがなですが、もう一つの意味にも文脈を感じます。
説明にもある通り、トラペジウムの中に平行な辺は存在しません。
平行の定義は『どこまで伸ばしても直線が交わらない』ということは、逆に言えばトラペジウムを構成する四本の辺は、それぞれ延長線上のどこかで必ず交わると言えるわけです。
一度は4つの星として輝いたトラペジウムが終わりを迎え、それぞれバラバラの方向に再出発した4人が人生の線上で再び交わる。
この関係性が本作の魅力の一つと言えるでしょう。
最初にも書いた通りこういう単発の映画を映画館まで見に行くのは初めてだったんですがかなり楽しめました。
前情報としてチラ見したツイートがかなり酷評だったのでちょっと不安ではありましたが、幸い自分の肌には合ったようです。
時期的に実際にもう一度劇場に足を運ぶことはおそらくないと思いますが、もし機会があればまたこの世界に浸ってみたいなと思いました。