えうやま
その日はいつも通り。いつも通りに眠っていたら「えーう」と言いながらソイツは現れた。俺に飛び込んできて、嬉しそうにしていた。
汚かったそいつを風呂に誘導し、勝手を教え着替えを渡し風呂に入れた。
寝起きだったが頭をフル回転させた結果、なんなんだ。だりー。という結論に至った。
お風呂からあがりさっぱりしたソイツが、部屋に戻ってきてしれっと膝の上に座った。
怪異ではあるが「えう、えう」とうなずいたり腕を広げたり首を横に振ったりして、悪意の無さを伝えてきた。酒臭かった。
どこに居てもいいからここに居る 自由で居たいだけだ そんなことを言っているような気がした。
どうでもよかったのでそいつを自由にさせることにした
えう山と呼んでも反応するので、ソイツを えうやま と呼ぶことにした。
えう山は数日滞在すると何処かに出かけたりする。
えう山は食事が苦手でたまに吐いてたりした。フルーツジュースもお酒もごくごく飲んだ。えう山はいつも子供みたいな恰好をして何食わぬ顔で歩く。えう山は海と月が好きでいつも惹かれるように焦がれている。
しかし、えう山はどうしたらいいのかわかっていないのだろうきっと
自分でつくったものを渡してくれたり、隣で大きいいびきをかいて寝ていたり、急に消えたり、ベソをかいて戻ってきたり、えう山と過ごして1年が過ぎた。お笑い番組は通じるようで、眉間にしわを寄せ食い入るように観て手を叩いて笑った。
えう山は当たり前のように俺の生活に入り込んできた。歩き姿と同じ何食わぬ顔をして俺の生活に入ってきたり消えたりを繰り返している。
怪異でも見かけは人型なので就職ができるみたいだ
「えう」以外の言葉も話すようになった。
むかつくくらい生意気な口も聞いてくる。
怪異を友達に紹介するのは後ろめたかったがあまりにも当たり前の顔をしているので会わせたら「えう」以外の言葉を流暢に、恥ずかしそうに話したり笑ったりしていた。
なにがなんだかわからないまま、時間が過ぎているがある程度はこのままでいいと思う。えうやまの自由を許可した以上、えうやまの自由が終わるまで、俺だってどうしたらいいのかわかっていない。
えう山はまだここにいる
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