考えるな、感じろ:ブルース・リーから学ぶタンゴ
著名な映画スターであり武術家でもあったブルース・リーは、こう言いました:「考えるな、感じろ」彼は体を鍛えることを怠りませんでしたが、この言葉には深い意味が込められています。
私がアルゼンチンタンゴを習っていて気づいたことがあります。それは他のペアダンスと違い、タンゴでは最初に基本的なリズムパターンを教えないということ。例えば、サルサは「クイック・クイック・スロー」、ワルツなら「1.2.3」など多くのペアダンスは一人でリズムを覚えることから始めます。タンゴはそうではありません。
私の先生は最初にステップを教えました。正直なところ、とても難しく感じました。基本的なリーダーステップを習ったものの、複雑に見え、タンゴは難しい踊りだと諦めかけたこともあります。
しかし、ある日タンゴパーティーで踊っているプロのタンゴを見て、こんなにもスムーズな踊りなのだと気づき、踊りたいという気持ちが再び湧いてきました。
そして、私自身がタンゴを教えている時にある重要なことに気づきました。人の体は逆三角形で、立っているときでも目を閉じるとゆらゆらと揺れています。これは体の形からも分かります。肩幅が広く、足元に向かって狭まっているからです。
多くのダンスでは「しっかり立つ」ことを教えます。しかし、揺らぐことに気づいてからは、揺らぎを最初に教えます。そして、揺れているものをコントロールすることを学ぶことによって、より自然な動きが生まれるのです。これはまさに、ブルース・リーの「考えるな、感じろ」という言葉を体現しているように思えます。
さらに、パートナーとお互いの手を組むと、相手の揺れが伝わって来るのがわかります。この揺れを合わせることでコネクションが生まれ、相手の動きが見えてくるのです。ここでも、考えるのではなく、感じることが重要になってきます。
これらの気づきは、私のタンゴの中心にあります。まず自分の揺れを感じ、次に相手の揺れを感じる。そこからコネクションが生まれ、タンゴが始まります。すると、相手の体があたかも自分の拡張のようになり、思った以上に早く動けたり、音楽に乗れたりするのです。
さて、身体は今も動いています。心臓、血管、内臓。生きるということは、動くということです。私たちの体内では、血液が絶え間なく流れ、呼吸が続いています。これらは私たちの意識せずに行われていますが、それこそが私たちの知らない力なのです。
この不安定な動き、揺れを大切にすることで、リラックスや脱力、自然な表現につながります。揺れは波形を描き、音も波形です。そこから音に乗る感覚も生まれてくるのです。
今日は、まず自分の揺れを感じること、そして相手の揺れを感じることについて話しました。ブルース・リーの「考えるな、感じろ」という言葉は、タンゴや他のダンスだけでなく、他のことにも新たな気づきを与えてくれることでしょう。
これらの気づきが、皆さんの人生に少しでも役立てば幸いです。
Abrazo GYU