![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160537916/rectangle_large_type_2_a8e6d00d29f23d9d58dcef6d4ad3764a.jpeg?width=1200)
行政書士開業に向けての準備について その6
もしかしたら史上最悪の行政書士法人
ヒヨコ食いの最も強力な方法
今回ご紹介しますのは、昔存在した行政書士法人です。この代表者は、元々個人で行政書士事務所を運営していたのですが、法人の方が有利だと思ったのでしょうか、登録したばかりの新人を取り込んで行政書士法人を設立しました。行政書士法人の設立には行政書士が2名いないとできないとされていますからね。この行政書士法人は、いまから振り返れば個人事務所のころから反社と関係があったようです。ですが、ヒヨコ食いに関係ない悪事については軽く触れるにとどめますね。
法人設立の手続き
これはまだこの養鶏場が個人事務所だったころに始めた仕事です。
法人設立業務というもので、とりあえず会社を例に取りますと、まず定款という、まあ会社の設計図と言ってもいいような文書を作ります。これは、誰が書くべきかという定めは特にありません。
次にこの定款について、公証人の認証を受けます。ここまでが、誰でも行っていいことです。
それを、登記申請書類とともに管轄の法務局に提出します。
これで、法人の設立手続きは同じです。
行政書士の間で法人設立業務が流行った理由
定款を作成して、公証人の認証を受けると申し上げました。この認証を受けるのに、通常なら4万円の収入印紙を貼る必要があります。しかし、電子定款認証という、インターネットを使った仕組みを使えばこの4万円が要りません。
しかし、この当時そのインターネットを使った電子定款認証を行った場合、専用のソフトウェアを数十万で購入する必要があり、1社しか設立しないほとんどの人にとっては赤字につくものだったのです。
そこで、行政書士たちは定款を作成し、電子認証まで行うということで仕事を請け負っており、数万円お安く上げていたわけです。
上で「定款は誰が作ってもいい」という旨の記述をしましたが、税理士や司法書士などが作ってもいいですし、実際そういう仕事をしている人たちはいます。
行政書士側の言い分としては「税理士や司法書士が定款を作成するのは、行政機関に提出する書面を業として作成していることにあたり、行政書士法に違反する」というものです。
ただ、私の意見ではまず司法書士は会社法をガッツリ勉強しているため会社の設計についてコンサルを行うには行政書士より向いており、会社の設立登記に付随するサービスと考えれば問題はないと思います。
そして税理士は会社設立業務とともに数年間の顧問契約がついてくるのが通例です。行政書士側としてはそういう余計なものがない分行政書士の方がお得と言っているのですが、中小企業のスタートアップにあって税理士のコンサルを必要としない例は少ないと思います。中小企業について行政書士より知り抜いた税理士のコンサルを受けていれば、起業について様々な指導を受けられるでしょう。そして行政書士にはそんな能力はありません。税務顧問の付随サービスとして、こちらも問題ないと考えます。
余談ですが会社設立業務がどうなったか
本筋とあまり関係なくなってしまいますが、会社設立業務が現在どうなっているかをお話しします。
電子定款認証の普及により、その手続きにかかる費用はあっという間に下がっていきました。しばらくは行政書士の間にも価格競争で何とかしようという動きがあったのですが、それでも追いつかないという状態になりました。
現在は定款を作って認証するだけの業務にお金を払う人はいないでしょう。なぜなら、必要事項について穴を埋めていけば自動で定款を作り認証までやってくれる無料サイトまであるぐらいですから、行政書士に頼もうという人がいるわけがありません。
また、そもそも会社設立登記の代行は司法書士だけに許される仕事なのですが、昔から行政書士が本人の体で申請を行う例が後を絶ちませんでした。
最近は法務局も厳しくなって、本人確認を行うようになったと聞いています。
現在法人設立業務はとてもそれだけではまともな収入にはならないと言っていいと思います。私の知る限り、大々的に法人設立業務を行っている行政書士はひとりだけです。
登記申請書類というのは司法書士が書かなければいけないものだというお話はしましたが、行政書士に頼んで、仕上がった定款を司法書士に渡して、なんてことをやっていたら結局割と高くついてしまうんですね。
それでも法人設立業務を行っている行政書士さんはなんで成り立っているかというと、奥さんが司法書士なんですよ。これで回転を速くしていけば、それはまとまった収入になるのは当たり前ですね。
今回のヒヨコ食いさんが大きくなった経緯
前置きが長くなりましたが、今回の養鶏場が大きくなったきっかけがこの会社設立業務でした。
会社設立は一時期バブルのように多量に発生しました。そこで今回の養鶏場はあっという間に大きくなり、個人事務所から法人になりました。
上で本人確認が厳しくなったと述べましたが、私にもなぜかわかりませんし矛盾しているよなと思っているんですが、郵送登記というのが認められるようになったんですよね。
それでこの養鶏場は違法に登記申請書類を作成して、本人を名乗って管轄の法務局に郵送するという手段で登記手続きを事実上代行していました。遵法精神というものが元々なかったことの証明だと思います。
行政書士会から注意があったのか司法書士会から苦情が入ったのか知りませんが、この養鶏場は「登記で安心!司法書士プラン」というような触れ込みで司法書士を入れたプランを提示するようになったのですが、そもそも司法書士を入れないプランがあること自体おかしいですし、顧客から見れば「司法書士を入れたら高くなるのであれば入れない方向で」となるのは目に見えています。
法人設立業務の斜陽とこの養鶏場の変化
上で述べましたように、法人設立業務はバブルであり、あっという間に弾けました。
そこでこの養鶏場が新たに手がけるようになったのは詐欺被害救済業務と闇金被害救済業務でした。
ここまでこのnoteを読んでいただいている皆様には、これは明らかに行政書士業務ではないということをおわかりいただけるのではないかと思います。
養鶏場の詐欺被害救済業務
この養鶏場の詐欺被害救済業務とは、主に通販で買ってしまったものに対して返品・返金対応を求めるというものでした。
行政書士の業務ではないということはもう皆様おわかりでしょう。
養鶏場の闇金被害救済業務
そして闇金被害救済業務というのは、違法かつ苛烈な取り立てをやめて欲しい、と闇金業者に連絡してやめてもらうというものでした。
これはさらに行政書士業務ではないということですね。
この行政書士法人の新人育成業務
この行政書士は、規模の割には大きなビルを借りていました。なぜかと言うと、士業者専用のレンタルオフィスを開いていたんです。
そしてそういうレンタルオフィスの入居者に対して「アカデミー」と称して営業の方法を教えたりもしていたのですが、その「アカデミー」の講義は開始第一声が「前回何やったっけ?」であることも珍しくはなかったそうで、とても「アカデミー」とは言えるほど体系だったものではないと証言している受講生がいます。
内容と言えばはっきり言って「押し売り」のやり方であって、受講生がそれを上手くできていない様子を見て心底楽しそうにケラケラと笑う、それがこの先生の新人育成方法だったようです。
「アカデミー」を卒業した「教え子」たちには脱法登記のやり方で仕事をさせていましたが、この養鶏場の特徴ですが「アカデミー」の講義を受けるためにはレンタルオフィスへの入居がほぼ必須だったんです。
この養鶏場先生は異常に押しが強い人で、受講生が「なんとか通学で」と申し出ても「覚悟が足りない」などと言って強引にレンタルオフィスへの入居をさせていたとのことです。
既登録者もこのレンタルオフィスに入れていたようなんですが、レンタルオフィス契約と同時に事務所所在地を変更させていた例は私が調べた限り見つかりませんでした。
行政書士法にて、法人でない行政書士は事務所を1箇所しか持つことができないことが定められています。この養鶏場先生はそれを知らなかったのか、知っていて法を破っていたのか、どちらにしても悪質です。
そして「行政書士が何をする人か知っていますか?」でバーの開店を例に取りご説明しましたが、事業用として借りた不動産は半年借りるか半年分の家賃を払わなければいけません。
レンタルオフィスもれっきとした不動産の事業用賃貸ですので、たとえ「アカデミー」を途中で抜けたくとも、半年分の家賃は払わなければいけません。つまり、レンタルオフィス入居はこの養鶏場先生が受講生につける首輪なのです。
「恫喝」という行為を娯楽感覚で楽しめるのがこの養鶏場先生で、途中で抜けたいと申し出てきた受講生に恫喝を仕掛けて家賃分を回収することは1回や2回ではなかったようです。
この養鶏場の終焉
この養鶏場先生も、法人設立バブルの崩壊に伴い収入が減ってきました。そこで手がけだしたのが詐欺被害救済詐欺と闇金被害救済詐欺だったのは上述したとおりです。
詐欺師たちは、なぜかこの養鶏場先生から連絡があると、全額ではないもののかなりの割合を返金しました。
また、闇金被害者から頼まれて苛烈な取り立てやめろと連絡すると、実際に取り立てはピタリと止みました。
なぜこんなことが可能だったかおわかりでしょうか。
最初から、この養鶏場先生と詐欺グループや闇金業者はグルだったんです。そりゃ、あらかじめ「こうしよう」と相談はできているんですから、返金や督促の停止が行われるのは当たり前ですよね。
そして、解決したのだからと言って闇金の督促以上に苛烈な取り立てが被害者に向かうことになります。
電話1本で解決したと証言する被害者が出て来たり、養鶏場先生自らが電話している姿がテレビで放送されたりすると、当時のTwitter(現X)で「非弁じゃね?」とつぶやく弁護士が出て来たり、ブログで大々的に取り上げる弁護士が出て来たりして、行政書士業界内ですら問題視する意見が出て来ました。
この養鶏場先生は「協力会社」として3法人とその代表者3個人の名前を明らかにしていました。FacebookなどのSNSでその協力会社の代表者を見ると堂々と闇金業者で働いていた経歴を書いており、また体に入った刺青を誇らしげに見せていました。
また、ちゃんと顧問弁護士をつけていると言ってその名前も明らかにしていたのですが、非弁提携(弁護士の名義貸し)で悪名高き弁護士でした。
最終的にこの行政書士法人と協力会社3社、およびそれぞれの代表者4名を名指しした被害弁護団が結成され、示談になったようです。さすがに和解内容まではわかりませんが、おそらく返金と、滞った場合には刑事告訴の内容は含まれていると思います。
やはり「業務を教えてあげる」に飛びつくべきではない
この例は、行政書士史上最も悪質なヒヨコ食いだったと言えると思うのですが、結局のところヒヨコ食いなんて「営業の仕方と実務経験」をエサに登録直前・直後の人間からカネを巻き上げるものに過ぎません。やはりそれは、自分で四苦八苦しながら自分で自分に相応しいやり方を見つけるものなのだと思います。
それはどんな仕事でもそうです。例えば能條純一という漫画家さんがいます。麻雀や将棋などのボードゲームのプレイヤーたちの模様を、ヒリつくような神経戦として描くのを得意としている漫画家さんです。私は彼の『月下の棋士』という漫画が大好きです。
この方は私の友人がいみじくも口にしたのですが「絵が上手すぎて気持ち悪い」とすら言われる画力を持っています。
そういうわけで、この方はヒリつくような神経戦の漫画に行き着くまで人情コメディやエロ漫画も描いていたそうです。絵が上手いから特に後者には非常に向いていたでしょうね。読んでませんが。
いまや人気漫画家である能條さんも、自分の作風にたどり着くまでは四苦八苦があったのです。
行政書士に限りませんが、サラリーマンではなく自分が主人公で生きていこうと思うのなら、自分に相応しい仕事に巡り会うまでは誰かに頼ってはいけないと思います。自分に相応しい仕事を見つけられるのは自分だけです。誰かに言われたとおりのことをして生きていたいのならばサラリーマンをやるべきであって、自分が事業主なのに仕事のやり方を誰かから教えてもらおうという考え方は間違っていると思います。
今回の養鶏場先生が述べた言葉にこんなのがあったそうです。
「新人を育てるというのは、育てる側にとってライバルを作るということ。そんなうまい話があるわけがない」
わかってるんですよね、この養鶏場先生。この言葉だけ取ってみれば、まことに仰るとおりですよ。しかしなぜそれをわかっている人が養鶏場になっちゃったのかなあ。
では今回はこのあたりで失礼いたします。
最後に宣伝です。
私はココナラで行政書士に関する相談を承っております。
以前にも一度申し上げましたが、私は行政書士および行政書士志望者に対して甘いことは口にいたしません。どちらかと言うと、クライアントが見ている夢に対して「そんなことあり得ないから」という方向で折りに行きます。
それでも行政書士として働きたいという人に対しては、安全な業務と危険な業務について説明もいたしますし、もしまだ合格していない方なのであれば試験の攻略法もご案内します。
実態を知っている人からの情報が欲しいという際にはぜひご相談下さい。
↓30分バージョン
↓60分バージョン
小説なんかも書いております。
こちらもぜひよろしくお願いいたします。
今日もありがとうございました。