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行政書士開業に向けての準備について その4

開業講座の言うことに乗るな!

そもそも論ですが…

これまで、合格して登録前の人を対象にした開業講座についてお話をしてきました。
ですが、そもそもの話をしますと、行政書士の仕事についてちゃんと知った上で受験している人の割合って思っているより少ないと思うんですよ。
何度も指摘していますが「カバチタレ!」の罪って本当に重いと思います。あの漫画で「行政書士はすごい法律家!」っていう誤解が世間に広まり、そして行政書士会連合会その他の関係団体がそれを公式に否定したという話は私の知る限り一切ありません
「カバチタレ!」のおかげで「すごい法律家の割に比較的簡単になれる」という誤解が日本中に広まり、受験生が急増したんですね。当然、多額の受験料が行政書士という業界に落ちたわけです。直接的に受験料が落ちるのは行政書士試験研究センターなんですけど、全員受かるわけじゃないのは当たり前ですよね。そうしたら、たいていの人は資格学校や通信講座を利用して再チャレンジを図るでしょう。当然、そういう会社が潤います。そうしたら合格者が出ますよね。登録する人が出ることになりますので、都道府県行政書士会(単位会)や行政書士政治連盟にお金が落ちます。この勘違いのおかげで業界が潤っているわけですよ。行政書士法を試験に出せばいいと思いますしかつては出していたんですが、出さなくなったのはちょうど「カバチタレ!」バブルのころです。業界丸ごと一般人を騙してお金を取っているんだから本当に救えません

卵食いとヒヨコ食い

  • 卵食い

行政書士受験講座を開いているような資格学校で、勉強を教えているのが卵食いと呼ばれる人たちです。以前述べました、司法試験崩れの人たちがやりがちなことです。他にも、現在事務所を運営している現役行政書士がサイドビジネスとしてやったりもしています。有資格者の仕事のひとつが次の有資格者を育てることというのは、価値がない資格あるあるですが。
ただ、これ自体は騙すという意味ではそんなに悪質ではないと思うんですよ。合格したいと思っている人たちに対して合格できるようにするための勉強を教えているわけですからね。
問題なのは、受験生のやる気を出させるために「行政書士になればあんな仕事もできる、こんな仕事もできる」と大風呂敷を広げがちなことです。前に述べました開業講座で「法で定められた業務にとらわれるな!」なんて言われちゃったらその気になって「あんな仕事やこんな仕事を…」なんて妄想逞しくしちゃう合格者はなんでそう信じちゃうかと言うと、こういう卵食い講座で刷り込まれてしまっているからというケースが往々にしてあります。

  • ヒヨコ食い

2~3ヶ月中に登録しようかと考えていたり、あるいはもう登録はしたけれども何をしていいのかすらわからない、というような人たちを集めて、業務を教えてあげると持ちかけてお金を取るというのがヒヨコ食いです。
ヒヨコ食いに関しては自身が登録者ではないという例は私個人は知りません100%有資格者によるものです。
このヒヨコ食いについて詳しく述べたいというのが、今回(および多分今後数回)述べたいことです。

絶対にヒヨコ食いに乗るな!

簡単になったとは言え、司法試験はやはり難関資格です。toCや、toBの中でも限りなくtoCに近い小規模事業者に対する司法サービスの中核を担っています。
ですので一般の方や中小企業の関係者が「法律について誰か専門家を」と考えたときに、まずうかぶのが弁護士だと思います。つまり需要の方が上回っている状態が続いているわけです。
するとどうなるかと言うと、有資格者が事務所を経営するのが比較的楽なんですね。楽どころか、仕事が多すぎて誰かに振りたいと思っていることも少なくありません。
というわけで、合格後間もなくてまだ十分な経験を積んでいない若手を自分の事務所に雇って、細かい仕事はそういう若手に振ることを考えるんですね。
そんなことをしているうちに若手も一人前になっていくという、平和な循環が弁護士という業界には起きているわけです。
一方で、行政書士というのは世間一般の方々にどういう仕事をしているのか全く知られていません。なんなら既に述べたような事情で行政書士本人ですら行政書士が何する人なのかはわかっていません。ですので当然、どうやってお客さんを獲得できるのかも知りません
というわけで「それ、まるっと教えてあげるよ!経験としていくつか実務も振ってあげるよ!」と言って数十万円巻き上げる、というのが「ヒヨコ食い」と呼ばれる人たちです。

ヒヨコ食いは単位会や支部会の研修と何が違うのか?

行政書士の仕事については、単位会やその下の支部会、または場合によっては単位会の中で結成されている○○業務研究会みたいなものが催している研修会で教えられていたりはするんですね。

東京都行政書士会研修資料

まあたまたま今回手に入ったのが民事法務の資料なんですけど、こんな感じで仕事を教えていたりはします。
ですが、これももう述べたと思うのですが、仕事の知識をいくら身につけても「この人に頼めば自分の問題が片付くかも」と思ってもらわないと仕事なんて絶対に獲得できないわけですよ。
ここで、登録したてで仕事が取れていなくて、業務についての勉強をしている行政書士の皆様に気をつけておくべきことをひとつ申し上げます
どれだけ勉強を重ねても、それが活かされる場がなければ意味がありません。宣伝広告を打って(往々にしてそれは立派なホームページを作ってSEO業者を頼んで、ということだと思いますが)いつかはかかってくる電話を今日も待って、その間に知識の研鑽、と思っていませんか?
それは、申し訳ないけれどズケッと言いますね。いま本当にやるべきこと「営業」から逃げて、業務に関する勉強をすることで現実逃避しているだけの話です。言ってしまえばいつか現れる理想の彼女と出会える日のために恋愛ゲームで「練習」しているのと同じです。そんなことをしている時間があったら、名刺入れをもってお隣さんから絨毯爆撃で良いので「お仕事承ります」と言って回って下さい。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるです。業務の勉強なんて請けてからやれば良いんです
話を戻りましょう。大抵の新人行政書士の皆様は、どうやってお客さんを獲得できるのか、それを悩んでいるわけですね。行政書士に需要がないことは明らかです。考えてみて下さい。あなたはこれまで生きてきた中で、行政書士に何か頼んだことがありますか?ないでしょう?そういうことですよ
多くの行政書士試験合格者は、ハローワークに行って「行政書士」で検索して、それこそ数打ちゃ当たると応募しまくります。やっぱり弁護士と同じように最初は誰か先輩の事務所の傘下で実務を学びたいと考えているわけですね。
しかし行政書士に新人を雇うほどの余裕がある人がほとんどいないわけです。ですが営業方法を中心に教えて欲しい新人はいます。こういう新人行政書士の心の隙間にスッ…と入り込んでくるのがヒヨコ食いです。
ヒヨコ食いというのは往々にして、一見魅力的な人なんですよ。この人が「私の言うとおりにしていれば成功者になれますよ」というのならばきっとそのとおりなんだろうなあ、と思ってしまうような、ある意味カリスマの持ち主が多いです。
さて、実際にそういう人たちに数十万のお金を上納して、その後どうなるかという話になってきます。

ヒヨコ食いの言いなりに…

だいたいのヒヨコ喰い行政書士の下に入って「実務研修」なんかが始まりますと、一方的に「あれをやれ」「これをやれ」と言われてそのとおりのことをやることになります。最初のうちは「ああ、これこそが実務の学習なんだなあ」と思っているのですが、研修なんですから給料も歩合も出ません。
ですが、ヒヨコ食いとの最初の出会いの時に感じたカリスマにある程度心酔していますので、人により程度のこそあれ「この先生の言うとおりにしていればきっと成功者になれる」と思い続けているんですね。
「この作業は何のためにやっている?」というような作業をひたすらやらされるだけの日々を送っていても「これもきっと本気度を試されているんだろう」とか何とか自分の中でそれらしい言い訳を拵えて納得してしまったりしましてね
申し込み電話の24時間受付を開始するから、とか何とか理由をつけて携帯電話を持たされて夜もまともに寝られないようにされ、病院にかかるような事態になっても「良いように使われている」という考えだけは自分の中で絶対に否定してしまうんです。
言っておきますが、これでもなお給料も歩合も出ないんですよ?

結局は自分で学ぶ

そういう風に思考をねじ曲げられたヒヨコさんの中には、ヒヨコ食い先生の教えは「自力で学べ」なんだ!というところに着地して、ヒヨコ喰い先生の事務所でこき使っていただいている時間以外は自分で名刺を持って方々に回り、自分なりに仕事をゲットして食べていけるぐらいの成功はすることがあります
でもそういう人が出てくる確率は、実は登録開業者の中における数年間事務所を維持する人が出てくる確率と大して変わらなかったりします。ヒヨコ食い先生意味ないじゃん。
それでもやっぱり、ヒヨコ食い先生ありがとうとか考えていて、ホームページでヒヨコ食い先生の事務所に勤めた、とか書いちゃったりするわけですよ。お茶汲みとかゴミ捨てを含めた雑用をやらされただけなのにね?

というわけで、結局冷静に考えたら数十万と無償の労働力を提供しただけという結果になっていたりするわけです。
それでも、ヒヨコ食い先生に出会えて良かったと考えて、後々まで「人生の師」なんて考えていたりするんです。ある程度成功しても、結局失敗しても。
「騙された」ということは絶対に考えないのは、多分自分の失敗でもあるということを認めたくないんでしょうね。

今日はこれで終わりにさせていただきます。
開業講座のやばさにかけてはどれだけ説明しても余計という事はないと思いますので、しばらくこの話が続きます。
最後に宣伝です。
私はココナラで行政書士に関する相談を承っております

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小説なんかも書いております

こちらもぜひよろしくお願いいたします。
今日もありがとうございました。

目次

行政書士ウォッチャー桂木晴一です

行政書士が何をする人か知っていますか?

行政書士開業に向けての準備について その1

行政書士開業に向けての準備について その2

行政書士開業に向けての準備について その3

行政書士開業に向けての準備について その5

行政書士開業に向けての準備について その6

行政書士開業に向けての準備について その7

狐と狸の化かし合い

資格学校は行政書士をどう考えている?

資格学校は行政書士をどう考えている? その2

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