行政書士開業に向けての準備について その5
行政書士開業講座はやっぱりヤバい
今回も、行政書士開業講座、いわゆるヒヨコ食いのことについて書きたいと思います。「ヒヨコ食い」とか「ヒヨコ喰い」とか「ひよこ食い」とか「ひよこ喰い」みたいに表記が揺れてますが全部同じものです。しばしば「養鶏場」とも表されますので以下「養鶏場」で行きます。
養鶏場はサイコパス?
以前にも書きましたが、養鶏場を営む行政書士というのは、一見自信に満ちあふれていていかにも成功者のオーラを漂わせていて「この人にいろいろ教われるのなら願ってもない幸福なんじゃないか」と思わせるための説得力があるんですね。
私が人生で初めて出会った養鶏場は某資格学校の実務者講演会なんかで講師に招かれていた人でした。その資格学校が実務者を呼んで講演してもらおうという企画が立てられたときに第1回で招かれた人でした。
この人は、その講演会で自分が手がける「詐欺的商法の売買契約解除」を専門としていると高らかに謳っていました。そしてその人の事務所のホームページも基本的にこの業務が専門みたいな感じで作られていました。
「全国で初めてこの仕事を見出して第一人者になった」みたいなことをいけしゃあしゃあと述べていましたが、何もこの人が最初に見つけた仕事ではありませんし、第一人者でもないと思います。そう思う理由については後述します。
「24時間眠らないつもりでやった」とか何とか根性論的な話をしていましたが、絶対無理ですよね。
ですが何と言いましょうか「人をその気にさせる術」に長けていたことは事実のようで、ひよこを初めて集めたときには「最初は座学をやる」といういかにもそれらしいことを言っていましたが、ヒヨコたちはみんな「行政書士としての仕事に対する心得とか営業の術を学ぶんだろうな」と思っていました。
しかし実際に行われたのは、よくある「自分の殻を打ち破る」みたいな話をして、そして「新しい自分を作る」ための実習みたいなことをやってみんなで楽しみつつ新しい自分になれた!と思わせるような、ひとことで言えば自己啓発セミナーでした。
新人養成講座の受講を申し込んだときに交わされた契約には、この自己啓発セミナーの受講料として数十万払います、というようなことが記されていて、要はこの自己啓発セミナーを受講終了してしまった時点で「お金返せ」とは言えなくなる契約書になっていたんですよ。
この養鶏場は総勢20名あまりのヒヨコを集めたのですが、いまから考えると1/3程度はその時点で怪しいと感じ、契約解除を申し入れたみたいです。そして、全額ではないけどいくらか返すことと引き換えに開業講座に残ったメンバーとは接触しないという条件を付していました。親の介護や大学院への入学といった言い訳を何人かはしていたみたいですが、今から考えると多分事実ではないでしょうね。
そして自己啓発セミナー後の実務研修ですが、問い合わせ電話に応対しながら、いろいろな契約書のひな形をヒヨコたちに作らせていたらしいです。それも、ご本尊の養鶏場先生はほとんど現場におらず、ふたりの人間(事務員?)が指示を出す形で。
このヒヨコたちの中のひとりが証言していましたが、この養鶏場は問い合わせも申し込みもそもそもWebサイトのフォームしか設けておらず、このヒヨコたちが入ってくるのを見越して電話回線を引いたと言うんですね。
だから電話がかかってくるのは1日に数回。それも単純な問い合わせがほとんどで、仕事に繋がるものはほとんどなかったとのことです。
で、ご本尊の養鶏場先生は午後2時~3時ごろになって重役出勤で、挨拶だけ交わしてあとは無言。受講生同士の会話も好ましくなく思っていたとのことで、業務に関しての情報交換であっても受講生同士が会話していると例の事務員?が凄まじい目で睨んでくると。
その事務所お得意の売買契約解除に関する業務などこれはどういうふうに行って対価がいくらで、というようなことを覚える暇さえ与えないという状態だったとのことです。
そんな中、あるヒヨコが電話を取りました。A県に住んでいる中年女性からの問い合わせで、B県に住んでいる母親が羽毛布団を買ったのだがその値段は不当だと思うから解約したい、どうしたらいいか、という内容だったそうです。
ヒヨコさんは「親子ではあってもあくまでも契約当事者はお母さん、だからお母さんが気付いてもらわないことにはなんともできない、だからお母さんと話し合って下さい」という趣旨のことを話したそうです。
限りなく詐欺に近い仕事の取り方
そうしたら養鶏場が大激怒。ヒヨコさんが「契約当事者ではないので」と説明しても「そんなことは関係ない。依頼されたら絶対解決すると押し切らないと仕事なんて取れない!」と言ったそうなんですね。それも、とても社会人としての先輩が後輩に諭すような言い方ではなく、腹立ちそのままにキレ散らかすといった怒り方だったようです。
この養鶏場さん、実は大学生の時に学生起業していまして、事務所名と同じ名前の会社を持っていました。つまり、人に雇われるという経験をしていないんですね。ビジネスマナーなんてものは持ち合わせてないと考えるのが自然でしょう。
この1件で、残っていたヒヨコさんたちの半分ぐらいは離反したみたいです。
ホームページの推薦の言葉
この事務所のホームページには、とある有名人による推薦の言葉が顔写真とともに載せられていました。本当にこの人は推薦しているのだろうか、推薦しているとしてどういう経緯で出会いどういう関係を築いてきたのか、それを知ろうと思って私はその有名人と直にやりとりできる唯一の手段だったFAXで質問状を送ってみたのですが、やっぱり返事はありませんでした。やっぱり煌びやかなホームページは胡散臭いんです。
ヒヨコさんたちのその後
離反したヒヨコさんたちを除いて、結局残ったヒヨコさんたちが数名いたわけですが、だいたい廃業しました。
私が把握している限り3名がいまも登録しています。しかし、そのうちの1名は登録は残しているというだけで、ブログに綴っている生業は全く違うことを書いています。せっかく登録したんだからもったいないっていうところでしょうか。会費払い続ける方がよっぽどもったいないと思うんですが。
他の1名は、養鶏場先生とは別の頼れる先輩に取り入って、ふたりで行政書士法人を運営しています。一時期ネット広告でよく見かけました。
最後の1名は独立した事務所を構えて何とか食べていけているようです。この人のやっていることは絶対に行政書士業務じゃないよなあと私は思っているのですが、その話はまた後日にしましょう。
養鶏場先生のその後
養鶏場先生は「受講生が未熟なせいで機会損失が半端ない」というような理由で一方的に実務研修契約を打ち切りました。もちろん、開始前に支払った金額は最初の自己啓発セミナーの対価ってことになってますんで、返金なんてありません。
そして、この養鶏場先生はヒヨコさんたちに作らせた契約書ひな形を「ビジネスを成功に導く最強の契約書」とか何とか銘打って販売してるんですよね。ここまで来たら感心するほどの銭ゲバっぷりですが。
まあ、もう販売はしてないようですので書く必要はないかも知れませんが、こんなのにお金を払っちゃいけません。弁護士が見たら鼻で嗤うような法律クイズで合格点を突破し、登録したばかりの赤ちゃんたちが、ネット検索して「だいたいこんなもんか」で仕上げたのがこの「最強の契約書」です。
そしてまた、この養鶏場先生は最初の自己啓発セミナーそのものを売りに出したりもしていました。どこから引っ張ってきたのか知りませんが「受講者の感動の声」みたいなものをホームページに並べていましたが、これ多分作り話ですよね。だって、その後自己啓発セミナー業務はやってませんから。儲からなかったってことでしょう。そして、その自己啓発セミナーの販売が詐欺的であると自覚していたと思う、と話すヒヨコさんもいます。なぜかと言うと、その宣伝ページを印刷しようとしても白紙しか出てこない作りになっていたらしいんですよ。「印刷されて、こんなことやってただろと突きつけられるとヤバいと自覚していたからとしか思えない」とのことです。
そして、その後しばらくなんですが悪徳商法救済業務は、やってなかったわけではないんですがホームページを隅々まで探さないと見つからないところにコソッと載せていました。実質やってなかったんでしょう。
この養鶏場先生が悪徳商法救済業務で大して儲けていなかったと私が推測する理由がこれです。本当に24時間眠らないつもりでやらないといけないほど依頼が殺到しているんだったら、思い立ってすぐにはやめられないはずなんです。ふくらし粉を入れまくって話していたんでしょう。
久しぶりのこの養鶏場先生のホームページをいま見てみたんですが、toBの仕事がやりたくてしょうがない、というような雰囲気がビシビシ伝わってきます。それも行政書士の仕事でないことを語っている記事が大半で、例の自己啓発セミナーをまたやりたくてしょうがないという気持ちも伝わってきます。まあ、ほとんどがtoCの内容証明郵便作成業務なんていくらにもなりませんから、toBに切り替えたくなる気持ちはよくわかります。方向性としては正しいとは言えると思います。企業や宗教法人の悩み事をまるっと解決する「軍師」というのがいまの売り言葉みたいですよ。
そしてこれはかなり以前からなんですが、事務所のブログとして「みらい」なる女性が綴っているという設定のブログがあります。みらいって…「魔法つかいプリキュア!」か?
まあプリキュアと名前がかぶってしまったのは偶然なんでしょうが、呆れるのはこのみらいなる事務員にブログ上で「法律秘書」を名乗らせていることです。
行政書士というのは「法律」の2文字が欲しくてしょうがない士業です。別にこの養鶏場先生に限ったことではありません。実は事務所名に「法律」の2文字を謳うことができるのは弁護士の特権なんですが、だからこそ民事法務をやりたい人間は「法務事務所」とかそれっぽい名前を名乗るんですね。一般人にはわかりませんよ「法律事務所」と「法務事務所」の違いなんて。
そして「頼れる街の法律家」を名乗ってみたり、「Gyoseishoshi Lawyer」なんていうのを商標登録してみたり、とにかく弁護士と誤解してもらいたくて必死なんですね。
なお、「Gyoseishoshi Lawyer」は商標登録が抹消されたわけではなさそうなんですが、弁護士会と話し合った結果使わないことになったみたいです。
話を戻りますが、本当にいるのかどうかわからない秘書の名前を出して、その秘書に「法律秘書」を名乗らせるなんて「そこまでして法律の2文字を打ち出したいか?」と思ってもはや気持ち悪いレベルですね。弁護士会としてはOKなんかな?
ちなみに現在のこの事務所の経営状態については私には全くわかりません。toBの業務に舵を切ったこと自体は間違っていないと思うんですが、実際に相談してみた企業がもしあるのなら「ヤバいやつと関わっちゃった」って感想になるだろうと思います。
今日はこれで終わりにさせていただきます。
次回は最終的に犯罪一歩手前にまでなった事例をお話ししようと思います。
最後に宣伝です。
私はココナラで行政書士に関する相談を承っております。
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小説なんかも書いております。
こちらもぜひよろしくお願いいたします。
今日もありがとうございました。
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