映画 ミッシング感想と考察 霜降り肉で胸焼けする不幸感情エンタメ

石原さとみさん主演映画「ミッシング」の感想と考察です。2024年9月にNetflixで配信開始されています。

※ネタバレを含みます。

負の感情の描写を丁寧に魅せる作品

この作品を一言で言うなら

「演技力のある俳優の不幸シーンを連発、まるで脂の乗った霜降り肉だけをずっと食べさせられ続けているようで、胸焼け必須の作品」

辛さを執拗に見せてくるので登場人物に感情移入しすぎる人は観ていられない可能性もあり注意が必要です。(辛いですがグロやバイオレンスシーンはほとんどありません。)

最後に姉弟の和解シーンというミントのスッキリ系ガムをくれるますが、それまでの脂が多すぎて胃もたれがリカバリできません。

ミステリーや謎解き要素が無い事件モノで、俳優の演技力で視聴者の負の感情の描写を軸として、主人公に共感させることに焦点が絞られていました。

石原さとみさんをはじめ俳優陣の演技は本当に素晴らしく、感情を丁寧に描写する編集と脚本になっています。

子ども誘拐事件の被害者になった主人公(親)が精神崩壊していく様子を描かれていますが、ストーリーには大きな展開がないため俳優陣の演技力を楽しむ作品になっています。俳優の演技力をプロモーションする動画でもあり、自分が俳優のマネージャーだとしたら担当俳優に出てほしい作品です。

途中、主人公の娘と年齢が近い他の誘拐事件が解決したシーンの主人公の「良かった」は悲しみの中の喜びという点で良いシーンでした。

ストーリーとして大きな矛盾はなく、登場人物の言動で理由が不可解なところもないためコンセプトを邪魔する要素を排除していて雑味のない、軸がブレない一本筋が通った作品になっています。

事件を解決させないのはコンセプトに合っている

主人公の誘拐事件を解決しない展開でよかったのか? という点ですが、解決する展開だと警察の捜査や目撃証言、犯人の動機・背景の描写も必要になり動画尺の問題でそこを手短に表現すると「なぜか主人公に都合よく話が進む」ご都合主義にも見えてしまうことや、負の感情で惹き込むという軸に合わないため製作陣は事件解決は必要ないという判断になったのかもしれません。

気になった点

  • 現実の犯罪被害者家族に起こる感情部分や起こったエピソードが知りたかった(ざっとインタビューを読んだところ犯罪被害者への実際の取材はなかったように思えました)

  • 欲を言えば中村倫也さん演じるテレビ局記者砂田の背景がもう少し見たかった

印象的なセリフ「その事実が面白いんだよ」

イタズラの子供発見電話に騙されて主人公が警察へ行き嘘だと知り絶望する主人公の後、警察とテレビ局員の会話での警察のセリフ(1時間12分1秒のシーン)

「その事実が面白いんだよ」

この一言が劇中で個人的には最も印象に残りました。

テレビ局員の中にも不幸な事件を面白おかしく報道する砂田の後輩駒井や砂田の上司がいて、テレビの視聴者にもネットに誹謗中傷やデマを流したりイタズラをするような人間がいる、という報道やメディアによる問題。

負の感情や危機感を煽るニュースの方が刺激が強くて視聴率が取れるという現象を皮肉るだけでなく、この映画はフィクションですが、不幸な事件と負の感情で人を惹きつける映画をエンタメとして観る視聴者の嘲笑うかのようなセリフでもありました。

まとめ

  • とにかく心を抉られる不幸シーンの連続、感情移入しすぎるタイプには注意が必要

  • ハッピーエンドではないためスッキリを求める人や、問題解決までの謎解きを求める人にも向いていない作品

  • 俳優陣の演技、感情を丁寧に描写する編集が素晴らしく見応えがある


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