「怪異はどこにでも」・・・体験談。怪談イベントで思い出した話。
毎年楽しみにしている、怪談師の「ありがとうぁみ」さんの渋谷怪談夜会。そのスピンオフとも言える「渋谷怪談女子夜会」が行われました。
出演はぁみさんの他、ちゃんももさん、怪奇サイトの編集長・角由紀子さんなど。
一夜のみライブなので、配信も行われず、DVD化もされない為、写真や動画、音声なども多く、他では言えない実際の地名や実名も出てきて、ある意味恐ろしさも充実していました。
その中に、「心霊スポットで撮影したガチでヤバいものが映っているビデをテレビ局に送ったら『あまりにも念が強すぎて放送できない』と送り返されてきた」という話がありました。
実は、テレビ局という所は、とても近代的な場所なのに、怪しい話が少なくないのです。怪談夜会の話を聞いて思い出した話を紹介します。
以下は、私が実際にテレビ関係者から直接聞いた話です。
ビデオテープで編集した経験のある人ならお分かりになると思いますが、数十年前まで、テレビ番組の取材はカメラで撮影した映像をビデオテープに記録していました。
そして編集は、再生と録画の2台のビデオデッキを繋いで、
映像素材のテープを「再生機」に入れ、「録画機」側の新しいビデオテープに必要な順番でコピーしていくという方法で行われていました。
通常「録画機」側の録画ボタンだけが使われ、「再生機」側の録画ボタンは使われません。使ったら素材を消してしまう事になりますからね。
さて、技術会社の編集オペレーターのAさんは、
久々に長い休みを取る為、連日ハードなスケジュールをこなしていました。
そして、ようやく休みが取れるという前夜、予定していたオペレーターが急病で、急遽代役をすることになったのです。
その仕事は、夕方でも撮影して夜編集に入り、朝の放送に間に合わせる、といったルーチンで、失敗の許されない仕事でした。
Aさんは日中も仕事をしていましたが、ディレクターと二人で眠気と戦いながら、夜中まで編集作業を行っていました。
そして、編集もほぼ終わりかかった頃、眠気で朦朧としたAさんは、うっかり素材テープの入った「再生機」の「録画ボタン」を押してしまったのです。
「Aくん!」
はっきりと自分を叱る声が聞こえ、Aさんは我に返り、慌てて「停止ボタン」を押して、危うく大事な映像素材を消去せずに済みました。
「すみません。ありがとうございました」
ウトウトしているのを、後ろに座っているディレクターが注意してくれたんだな、と思ったAさんは、振り返って礼を言いましたが、
ディレクターは目を閉じて完全に眠りこんでいたのです。
もちろん、真夜中の編集室は二人きり、他に人はいません。
「確かに聞こえたんだけどな、誰だったんだろう・・・」
と思った時、Aさんは思い出したのです。
自分の事を「Aくん」と呼ぶのは、数日前に病気で亡くなった先輩のオペレーターだけだったことを。
大変な失敗をするところだったのを、先輩が救ってくれたんだと、Aさんは思ったそうです。
その後、声を聞くことは2度と無かったのですが、
先輩の命日にはお墓参りを欠かさなかったようです。
この他にもテレビ局周辺で起こった怪異はいくつも聞いたことがあるので、
その内、紹介していきたいと思います。
おわり
*登場人物の名前、場所などは特定を避けるために伏せています。