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「淡々としたムードの中、薄皮を剥いでいくように、登場人物たちの情念が明らかになっていく」・・・西瓜糖第11回公演『かえる』。



緻密な構造の脚本の上で、蠢く情念にアプローチする俳優達に感嘆した。

西瓜糖第11回公演『かえる』劇場 中野 ザ・ポケット
 
*一部、ネタバレになるかもしれない部分があるので、お気を付けください。

一見明白に提示される性格やトラウマさえも、「ああそうか」とか「きっとこうだな」などと油断してはいけない。

さらにその奥に、性格形成の裏、秘めた影とでも言うべきものを内包している。そう考えると、チラシのビジュアルが実に芝居の本質を描いているように思えてくる。

脚本の秋之桜子さんは、山象かおり名義で俳優・声優として長く活躍しており、この作品でもキーになる女性を演じている。その多才さには驚くばかりである。
共に西瓜糖をプロデュースされ、今回も重要な役を演じている俳優の奥山美代子さんをはじめ、どの出演者たちも的確に役を演じていて安定している。

今回、駒塚由衣さんからのお誘いであったが、ご本人が、「自分としては珍しい役」というだけあって、確かに日頃の江戸話などでは余り見ない「下衆であざとい女」の役である。
駒塚さんの元来持つ、品の良さや、気質の気っぷの良さがにじみ出ているが、それも「もしかしたらこの下衆なおばさんも、平和な時代では地元で有名な名士だったのではないか」と人物の過去を思わせてくれる。

駒塚さんだけでなく、それぞれの登場人物が脚本の行間にある「秘めた過去(人生)」のようなものに対峙して戦っているように感じた。

それだけ、深い時代の物語なのだ。

大戦末期の葉山を舞台に、淡々と物語は展開していくが、
家族それぞれが腹に一物抱えていて、それが薄皮を剥いていくように、
次々と舞台に展開する舞台「かえる」。
そのタイトルのダブルミーニング、いやトリプル以上の意味が、終演後に思い浮かぶ。それを知った上で、登場人物たちの過去を想像しながら、二度三度と劇場に足を運ぶのも良いかもしれない。
ご興味のある方は是非。

西瓜糖第11回公演『かえる』は、中野 ザ・ポケットにて、
9月3日火曜日まで。



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夢乃玉堂
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