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「麻田くん。猿と就活を張り合う」・・・意外な職業を選んだ学生の末路は。
『麻田くん。猿と就活を張り合う』
旅行好きの麻田くんが学生時代、バイトのお給料を貯めて
タイのサムイ島を訪れた時の事です。
この島を訪れたのは、夏にバイトした海の家で売った
ココナツジュースに興味を持ち
その産地を訪ねてみたいと話しているところに、
バイト先の先輩が、
「それならサムイ島が良いよ」
と紹介してくれたのです。
先輩が薦めたのは、「ココナツ・アイランド」とも呼ばれ、椰子の実オイルなどの生産で有名だったから。その上、この島では、特殊な方法で椰子の実を収穫するからなのです。
それは、なんと猿を高い椰子の木の頂上まで登らせて実を取らせる、猿式椰子収穫法です。訓練された猿は、するすると木を登り、器用にヤシの実をねじ切って海岸の砂の上に落としていきます。
「素早い。そして見事だ」
猿の手腕に麻田くんは思わず拍手を贈りました。
落とされた椰子の実は、皮をむいてオイルなどの加工品になります。
多い時は一日500個も取るといういうから驚きです。
ところが、麻田くんが一番驚いたのは、その後のガイドの説明を聞いた時の事でした。
この椰子の実、一つ1ドルで売れるのです。
つまり一日500個落とせば、500ドル。日本円で約5万円です。
10日で50万円。
一か月で約100〜150万円
一年で約1,200~1,600万円稼ぐことになります。
実際には500個取れる日はまれで、それほどは稼げないそうですが、
麻田くんは考えました。
「俺は猿じゃないから、いくつ採れるか分からないが
半分だとしても年間800万円。4分の1でも400万円。
大卒の初任給よりかなり多い。
こんな空気の良い所で、のんびりと、
椰子の実と一緒に過ごすなんて最高だな・・・」
さて、すっかり椰子の実に魅了されてしまった麻田くん。
帰国後すぐに、両親の前に手をつき、
「タイに移住して、体で就職したい」
と願い出ました。
最初は冗談だと思って、「良いよ良いよ」と軽く答えていたお父さんでしたが、心配になったお母さんが、タイに行きたい理由を聞いたそうです。
ところが麻田くん、根が真面目なので、適当にごまかすというようなことが出来ません。
海の家のバイトの所から、事細かに本当の事を話してしまったのです。
「猿にするために大学に行かせたんじゃない!」
予想通りご両親は大激怒。
それでも麻田くんは、一生懸命説明したのですが、
「今までの学費を返せ!」
「二度とこの家の敷居は股がせん!」
と全く相手にされず、説教は1時間以上も続いきました。
ついには
「大事な息子をたぶらかしてタイの猿使いに売り渡すような先輩は許せん!
ワシが叱り飛ばして、その先輩も大学を辞めさせてやる!」」
と先輩にまで飛び火しそうになってしまいました。
他人に迷惑をかける訳には行かず、
麻田くんは泣く泣くタイでの就職を諦めたそうです。
今、営業回りで軽快に階段を上っていく麻田くんを見ると
もしかしたら、椰子の木のてっぺんに上っている麻田くんの姿が頭に浮かび、ちょっと残念な気持ちになるのは、やはり不謹慎でしょうか。
おわり
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