「声のアンサンブル」・・・朱の会・第五回公演
今回、運悪く会場のある区で選挙があり、街宣の騒音に邪魔される可能性があったが、事前に選挙事務所にまで連絡し制動をかけさせるなどを行ったという。主催者の思い入れや意気込みにがまず印象的だった。朱の会では、毎回のように観客第一の配慮が感じ取れるのだ。
さて、肝心の公演内容であるが、やや狭めの会場で無理をせずに
シンプルな朗読劇に徹している。
だが、そこは朱の会である、一見シンプルでありながら、
聴かせる工夫がさまざまに用意されている。
冒頭、単独で短めの朗読を重ね、休憩前に、芸達者達の群読を置く。
音楽や効果音も多用しながら聴かせきる。
ここまでなら、いつもとさほど変わりはないか、と思っていると、
後半になって、ある種のイメージが伝わってくる。
これは、声によるアンサンブルなのだ、と。
特に台本を譜面台の上に置き、オーケストラさながらに群読が展開する。
しかもここに並ぶのは、ひと声で印象に残る
黎明期の声優を見るような、個性的な声の持ち主たちなのだ。
それに気づいてからは実に楽しかった。
私の頭の中で、彼はバイオリン系の弦楽器、彼女は木管楽器、
こちらは金管楽器などと、様々な楽器の編成が浮かんでいった。
しかも、それだけではなく、クライマックスに向けて、
オーケストラの編成に個性的な楽器のパートが割り込んでくるごとく
さらに数人の読み手が、まさに「割り込んで」くるのだ。
そこまで来ると、前半の単独の朗読も含めて、一種のコンサートのような編成であることが分かる。
実に多彩な音色のアンサンブルに酔いしれる夜であった。
今回はシンプルでありながら多彩だったが、一種、朱の会としてシンプルな朗読はやり切った感さえある。次は何をするのか、あんな工夫をするだろうか、こんな工夫をするだろうか、早くも次回公演、次のステップが、楽しみである。
野方ブックカフェ「どうひん」にて22日までだが、ほぼ満席完売らしい。
チケットが取れなかった方は是非、次回公演に期待を。
朱の会の次回公演までにも下記のようなイベントが予定されている。
そちらで、ソロやジョイントコンサートのような朗読会を味わうのも良いであろう。
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