「人ごみをそぞろ歩けば締めの声」・・・酉の市で耳にしたもの。
『人ごみをそぞろ歩けば締めの声』
11月は、鷲神社の酉の市。
昼間の雨も上がり、濡れた石畳に注意しながら人ごみの中を歩いた。
自粛解除後ということで混雑を覚悟していたが、
例年よりは少し大人しい感じもする。
商売繫盛の熊手を買った客の為に
あちらこちらで、三本締めの声が上がっている。
三本締めは、「和市(わし)」つまり、
「平和に売買が成立する市場」から生まれた風習で、
鷲(わし)の神様(大鳥神)に平和な取引を誓うために行うのだという。
粋な声、柔らかな電球のともしび、下駄の音、
生きとし生ける人々の温かみが感じられて、
思わず涙が溢れそうになった。
生きていて・・・祭りの町を歩けて良かった。
素直にそんな感想を持ったのだった。
そして、食いしん坊としては、
出店から流れてくる食べ物の香りが
気持ちを高揚させたのも否定できない。
たれの焦げる香りが溜まらない「イカゲソ焼き」は
直径2センチもある大物だった。
酉の市名物の「切り山椒」は、
口の中に広がる山椒の風味と柔らかな触感が心地よい。
初めて見た「はし巻き」は、お好み焼きを割り箸に巻きつけたようなもので、明太子、チーズなどトッピングが選べる。
出店の品も年々変化していて、あれもこれもと覗いていたらキリがない。
だが、神参りの後の食べ歩きを、
本末転倒などと言って貶してはいけない。
十歳くらいだろうか浴衣姿の女の子と父親の会話を耳にした。
「お参りと食べるのとどっちが大事なの?」
「両方大事よ。
お参りだけじゃ、神様も寂しいでしょ。
だから、出来るだけゆっくり居てあげられるようにしてるのよ。
こう見えて、無理して色々食べてるんだから」
イカ焼きのたれを頬に付けて、女の子は嬉しそうに笑っていた。
春を待つ ことのはじめや 酉の市
おわり
2021年の酉の市は11月9日と21日。
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