「泪の叫びに向き合う覚悟はあるか」・・・舞台「泪橋エレジー」そのエネルギーには驚かされる。
「泪橋エレジー」中野アクトレ 19日まで。
まず失礼な事から言わせてもらう。
この舞台作品の出演者たちの平均年齢は高い。
最高齢は80歳台だ。
その年齢の役者たちが、くんずほぐれつの取っ組み合いを見せ、
力の入った叫びを見せる。
粋がって、殴り合い、笑い合って、歌い合うのだ。
そのエネルギーには驚かされ圧倒される。
この舞台では、声にも注目した。
神太郎さんの通りの良い声。
大槻ヒロユキさんの力強い叫び
風間舞子さんの謡い。
村松恭子さんのセリフには、悲しみと優しさが滲んでいる。
その他にも、元アイドルなどと言わせない演技の岩間沙織さん、闇の声(ナレーション)でありながら当然のように存在感を示す大塚明夫さん、江上慎吾さん、銀ゲンタさん、古川がんさん、谷畑聡さん、麗空音さん、そして主宰の香川耕二さんまで、全ての役者の個性を考慮した、語りやセリフの見せ場が用意されている。
そんな眼福ならぬ「耳福」の声の持ち主が多い中で注目したいのは、清水克彦さんの個性的な声である。
ややしゃがれたような、一度聴いたら忘れないある意味とげとげしいまでの個性は、多くの可能性を秘めていると感じた。今後も良き作品に恵まれることを期待したい。
作品は、山谷を舞台に、数十年に及ぶ人々の熱い交流を描き、貧困や理不尽を叫び続ける。
叱られたい気分の人には是非お勧めする。
ただひとつ、長い時間を描く舞台はとてもデリケートだ。
小さなセリフや歌などでも時代を示す記号として印象づいてしまう。
映画なら「○年後」という文字テロップ一つで済むが舞台ではそうはいかない。
もし観劇されるなら、その点を注意して混乱しないようにご覧になられることをお勧めする。
最後に一つ。
観劇後に現代と未来の若者たちを思っていると、こんな言葉が浮かんだ。
「貧困や理不尽は、己の糧としたとしても、決して友達になったり、甘えてはいけない。いつかは突き放し、前に向かうのだ」
「泪橋エレジー」中野アクトレにて 19日まで。
おわり
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