「麻田危機一髪・重慶で野宿?」・・・笑劇の海外旅行。予約が入っていない?
知らない土地に旅をした時、一番不安なのは宿のことですよね。
移動は何とかなっても、夜露をしのぐ場所が無ければ、大変です。
特に海外となると、その不安は倍増します。
『重慶で野宿』
今では出張経験も積んで「海外なんてへっちゃら」という麻田くんだが、
生まれて初めての出張はトラブル続きだった。
20年ほど前、まだ中国への旅行がそれほど一般的でなかった頃。
夕刻に重慶市内で取引先の方二人と合流し、そのままホテルにチェックイン、翌日朝から現地コーディネーターがホテルに迎えに来て
その案内で、様々な企業を見て回る予定だった。
ところが、重慶のホテルに到着し、フロントで名前を告げると
「没有予約(メイヨウイユェ・予約は入っていない)」
とフロント係は首を振ってくる。
麻田も取引先の二人も中国語が話せないので、
ガイドブックの「旅行に便利な中国語」ページとにらめっこしながら
身振り手振りで「代金支払い済みで、予約表もある」と伝えても
フロント係は「没有(メイヨウ・無い)」の一点張り。
満室で予備の空き部屋もないらしく、「泊まれない。他を当たれ」と言ってるようだが、こちらは中国語が分からないし、
ホテルのスタッフは日本語が分からない。
現地で通訳する筈のコーディネーターは明日ホテルで合流する予定で
彼の携帯番号も聞いてない。万事休すか。
東京に電話を入れて、予約をした本社の担当デスクに聞いてみても
「別のホテルじゃないの?」と、冷たい反応。
その内に、事態の本質が分かったらしく、
「東京の代理店が休みで、コーディネーターの趙さんに連絡が付かないの。
こちらからは打つ手がないの。もう少しだけ我慢して」
と同情してくるのだが、打つ手がない。
しかし、その後良い連絡は無く、ロビーで待つ取引先に頭を下げながら
フロントにへばりついて、針のむしろに座る気分で待っていた。
およそ一時間が経ち、「大都会の真ん中で野宿」という映像が頭をかすめ始めた時一人の中国人がフロント係に話しかけている声が聞こえた。
「・・・・アサダ・・・・」
アサダ? もしかして今麻田って言った?
ハッキリとはわからないものの、それは、
「宿泊客の麻田さんを呼んでください」
と言っているように思える。
麻田はダメもとで、その人に話しかけてみた。
「麻田です麻田です。私が麻田です」
「おお。あなたが麻田さんですか、私コーディネーターの趙です・・・」
握手してくる趙さんの手が実に暖かく思えたという。
趙さんは日程を聞いていたので、仕事前夜に気を利かせて夕食を一緒に食べようとホテルにやって来たのだった。
地獄に仏とはこのこと。
趙さんに事情を話してフロント係に確認してもらうと、
ホテル側の手違いであることが分かり、無事宿泊することができた。
食事をした後、もう帰っているだろうな、と思って東京の本社に連絡を入れると、報告を待っていた担当デスクは、
「解決したなら早く報告しなさいよ。そもそもあなたの日頃の行いが悪いから、こんなことになるのよ」
と怒りの一言。
でもその声には安堵の響きがあった。
おわり
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