「二度と帰らぬ」・・・幻の漫画。消えた作品を求め続ける虚しさよ。
『二度と帰らぬ作品』
以前、「絶筆」をテーマに怪談を書いたことがあった。
その発想の元になったのは、
私が学生の頃に追いかけた幻の漫画のひとつ、
「新・巨人の星」である。
ご存じない方は少ないと思われるが、昭和40年代に一世を風靡した大ヒット野球漫画「巨人の星」の続編である。
子供の頃から巨人軍の投手になるべく、野球の英才教育を施されて来た主人公「星飛雄馬」が
自らの体格のハンディを乗り越え、数々の魔球を生み出して、球界を席巻するというスポコン漫画の金字塔。
その続編が「新・巨人の星」。
魔球を多用したために左腕の筋肉を傷めて投手の道を断たれ、一度は引退した飛雄馬が、日本一どころか、リーグ優勝からも見放され、最下位に甘んじていた長嶋巨人のために帰ってくる。
飛雄馬は、旧友・伴宙太の協力を得て、努力の末にピンチヒッターやピンチランナーとして、再び巨人に一員となるのだが低迷。その後、「投手は左利きが有利」と考えた父親によって、幼い頃に右利きを左利きに矯正されていた事実が分かり、今度は右の剛速球投手として復活する。
そしてやはり、魔球を開発していくのだ。
この魔球が蜃気楼ボール。球が複数に分かれて見える、というものだが、
その原理を紹介する前に休載。
それから連載が再開されることなく、原作者・梶原一騎は逝去した。
作画の川崎のぼるは、「新」の連載にかなり抵抗したそうで、梶原一騎に押し切られるように、連載を始めたそうである。さらに近年漫画家の引退宣言をしてしまったので、もはや、新巨人の星が復活し、蜃気楼ボールの球が増える原理や話の結末が分かる日は来なくなってしまった。
左腕の力を失って夢半ばで引退した投手を描いた作品。その夢の続きを書き始めた作家が途中で亡くなり、再び、夢破れる。
そんなところからの発想だった。
ところで、かつて「腹上死で絶筆が本望」と言った作家がいたが、
出来る事ならば、その枕元に物語の結末だけでも書き記しておいて欲しいものである。
(敬称略ですみません)
おわり
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