「こごえ滝」・・・約束を守れなかった男は。
東北のほとんど人の入らない、人里離れた山の中に、こごえ滝という
小さな滝がある。
落ち武者が追っ手に見つからないように、小声で話したとか、
ここで話した悪口はなぜか下の村人たちに伝わってしまうので
小声で話せとか、いくつか名前の由来は伝わっているようだが、
どれも確かなものはない。
ある日、嘉助という男が、渓谷で魚釣りをしている時、
腰に挿していた小刀を、こごえ滝の滝つぼに落としてしまった。
小刀を拾うため、嘉助が滝つぼに飛び込むと
そこにはこの世のものとは思えない美しい滝乙女が住んでいた。
滝乙女は、小刀を嘉助に渡すと、
「ここで見たことは、決して誰にも話してはなりません」
ときつく戒めた。
嘉助は、決して他言はしないと誓い、刀を受け取り、山を下りて行った。
「嘉助。お前、今までどこにいたんじゃ!」
村に帰ると、村人が総出で嘉助を捜していた。
嘉助が滝乙女と会っていたのは、ほんのいっ時であったのに、
村では一週間も過ぎていたのだ。
「今までどこへ行っていたんだ」
「それは・・・」
嘉助は約束を思い出し、村人に滝乙女にあった事は話さなかった。
村人たちも、しばらくは真実を探ろうとしていたが
嘉助が頑なに話さないので、やがて皆諦めて、
話を聞くのをやめた。
それから二月ほどたった頃。
嘉助の幼馴染の茂平が行商から帰って来た。
茂平は不思議な噂を聞きつけるほすぐに」」
「ここだけの話にするから・・・」
と、しつこく尋ねた。
幼馴染の茂平が、口が堅いことを知っていた嘉助は
茂平に本当のことを話してしまったのだ。
とたんに嘉助の体が震え出し、体が冬の滝よりも冷たくなって
動かなくなった。
いや、嘉助は動けなかったのだ。
一瞬で嘉助の体は氷に変わり、その体を中心に
どんどん回りが氷に代わっていった。
茂平は恐ろしくなって逃げ出そうとするが、
時すでに遅く、嘉助から広がる氷漬けの力が
茂平の足を捉え、悲鳴を上げるいとまもなく、凍り付いた。
その力は広がり、やがて村全体が凍り漬けになったという。
おわり
浦島太郎を思い出すような話だけど、こちらは村が全滅とより恐ろしいですね。
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