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「倦怠期の恋人たちへ」・・・不思議なこと。彼氏・彼女との関係に飽きがきているのなら。



『倦怠期の恋人たちへ』

年末になると思い出す。

昔むかし、大むかしの学生時代。
付き合っていた彼女と倦怠期を迎えていた頃、
評論家の評判も良く大ヒットしている映画を見たことがあった。

ロングランにもなっていたので、期待値は大きかった。

ところが、
その映画はありふれた展開で、テンポものろく、
おまけに登場人物が皆似たようなタイプで魅力が全く感じられない。
とにかく、始まって10分も経たないうちに、飽きてしまったのだ。

彼女はどうかな、と横を見ると、眉間に皺を寄せて、
貧乏ゆすりをしている。同じく飽きてしまっているようだった。


終映後、近くのカフェに入り、二人でパフェを頼んだ。
なぜか甘いものが食べたくて仕方がなかったのだ。
ストレスを緩和したくて、体が求めていたのかもしれない。

パフェを挟んで、俺たちはそれまでに無いほどたくさんの会話をした。
曰く、
「使い古されたテーマでシナリオがひどい」
「出演者の演技が緩すぎる」
「映像に緊張感がなく、クライマックスも盛り上がらない」

出るわ出るわ、2時間溜め切った不満を二人とも爆発させた。


俺は、誰かが言っていた言葉を思い出した。


「良い映画は観客を寡黙にし、悪い映画は観客を饒舌にする」


映画を鑑賞した後、静かに余韻に浸っていたいか、
文句の一つも言いたくなるか、という意味であろう。

そう思うと、「コミュニケーションを生み出す」、という点では、
悪い映画にも存在意義があるのだろう。


いや。逆に、そんな映画こそ、
倦怠期の二人には向いているのかもしれない。



                                                         おわり




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夢乃玉堂
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