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玉堂デスヨ。

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癒しの日常と、気がついたあの事。人生が豊かになる一瞬。 怪談、恋愛以外の作品も。
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#旅

「トラブルの多い怪談会」・・・ホラー短編。問題の多い怪談会に参加してみると。

怪談好きの例にもれず、たくさんの怪談会に行ったり、配信を見たりしています。そうすると、怖いこと、不思議な事の楽しみ方が、実に多彩であると分かります。 今回は、そんな怪談好きのお話です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『トラブルの多い怪談会』 「心霊好き・怪談好き」と言っても皆が皆同じ事をするわけではない。 心霊スポットに行くのが好きな人。 心霊写真やいわくのある秘仏やミイラなどを見るのが好きな人。 怪談や体験談を聞いたり集めたりするのが好きな人など、色々なタイプが

「敗北の意味」・・・墓標に刻まれたものは何を意味するのか。

最近は、「敗北」を極端に恐れる傾向があるようです。 いや。最近ではないのかもしれません。 およそ30年ほど前でしょうか。 「小学生が、仲良し3,4人で道いっぱいに広がって歩いている時、 正面から人が歩いてきても、よけない」 ということが話題になりました。 普通なら、真ん中の一人か二人が一歩下がって道を空け、 前から来る人を通すのですが、それができない。 という話でした。 友達といる時、一歩下がる、という行動がとれないのです。 下がると、会話に付いていけなくなるから、

「旅先で喧嘩した時は」

旅先で喧嘩した時は最悪ですね。 以前、とある人と旅行に行った時、 原因も分からず、黙りこくられて、会話が成立せず、 全く理由も話してくれないので、難儀したことがありました。 おまけに、最後には「何に怒っていたのか忘れた」 とまれ言うのです。 一緒に怒りも忘れてくれれば良いのですが、 怒りだけは残っていたそうで、 もうこうなるとどうしようもありません。 という訳で、旅先で喧嘩した時のお話。 これは先週、調布FMの「町田政則の語りの小部屋」で放送されたものです。 *一部改変。

「美しい世界を堪能」・・・十八世中村勘三郎 十三回忌追善

十八世中村勘三郎 十三回忌追善 中村勘九郎 中村七之助 錦秋歌舞伎特別公演2024を観劇した。 会場は、ティアラこうとう 大ホール。 歌舞伎座や国立劇場とは違った魅力の会場でかぶりつくように、中村勘九郎さん、中村七之助さんと中村鶴松さんのの歌舞伎(今回は舞踊)を拝見した。 「トークコーナー」に続いて、「若鶴彩競廓景色(わかづるいろどりきそうさとげしき)」 15分程の短い踊りだが、桜の花の書き割りが美しい。いつも思うのだが、歌舞伎の書き割りは眺めていて心地よい。 そして、華

「がらんどうに満ちるもの」・・・人生を考える短詩。自分には何もないとあきらめてはいけない。

これは、自分自身が落ち込みそうになった時に考える物語。 旅先で見つけた物語から、力を貰う事もある。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 『がらんどうに満ちるもの』 役目を終えたものを軽んじてはいけない。 中尊寺の境内の一角にひっそりと鞘堂は佇んでいる。 奥州藤原氏繁栄の証である金色堂は、世に知られているが そのすぐ近くにひっそりと建っている鞘堂の存在は あまり知られていない。 当初、鞘堂は黄金に輝く金色堂を覆うように建てられ、 長年その輝きを風雪から守り続けてきた

「生首と女房」・・・こんな時代劇怪談も書いています。

「生首と女房」      作・ 夢乃玉堂 無粋ながら、と言いつつ伊和谷(いわや)鉄心(てっしん)が酒の席を早退したのは、もう亥の刻を過ぎていた。 借り物の提灯の明かりは、夜の闇の中で実に頼りなかったが、 『勘定方の鉄文鎮』と呼ばれるほどの堅物で 理論派、現実主義者であった鉄心は特に臆することも無く 大川の土手を両国の屋敷に向かった。 足元が急に明るくなったので、満月が顔を出したかと思い、顔を上げると ぼおっと光る生首が頭の上を飛んでいた。 「奇怪なり。狐狸妖怪の類なれ

「奇しくも愛の怪談特集になりました」本日のラインアップは、ほっこりする怪談。怖いのが苦手の方も楽しめます。

木曜日16時からの「清原愛のGoing愛Way」「ラジオde怪談」は 私の短編と体験談。 体験談をお話しいただいたのは、ハープ奏者のSANAEさん。 先日もハープ2台による小さなホームパーティ形式の会にお邪魔したのだけど、一口にハープと言っても種類はたくさんあるようで、その音色のバリエーションに驚かされた。 皆さんもコンサートに行かれた時は、ハープに注目して見るのも良いかもしれません。 という訳で、ラインナップは、 ①「水飴と石段」 新野アコヤさん ②「はがたの栗」 デ

「湧き水の女」・・・真夏に体験した怪談。

兎に角暑い。 今日、15分ほど太陽の下を歩いた。 汗もかいたが、その後電車で冷えたのが良くなかったようだ。 体の中に熱が残っているような気がする。暑さと戦う為にエネルギーを使い果たしたのかもしれない。 という訳で、暑さと戦う話を。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「湧き水の女」 それは、まだ若さが恐怖に蓋をしてくれる頃の話である。 俺は、学生時代を通しての純愛を失い、ニヒルを気取って羽州から奥州の放浪を企てた。 不調の極みだった学業のストレスが、それまでの不

「欲望という名のバス」・・・次、とまりません。

間もなく、7月4日より「めざせ100怪!ラジオde怪談」企画の放送が始まります。8月末まで、毎週放送。 「清原愛のGoing愛Way!」(SKYWAVE FMにて放送中)の番組内で、めざせ100の怪談をということで、どこまでいけるか分からないけど。猛進中です。 今回はその中から、不思議な話を。 ・・・・・・・・・・・ 「欲望という名のバス」 「あちゃ~。寝過ごしちゃった」 目を覚ますと、バスは見知らぬ停留所を出たところだった。 「朝トラブルると、その一日は調子が悪い

「幽霊が苦手なもの」・・・もっとも強力な魔よけの方法とは。

「めざせ100怪!ラジオde怪談」は、「清原愛のGoing愛Way!」(SKYWAVE FMにて放送中)の番組内で100の怪談を特集する「怪談朗読特別企画」。 その為に用意した怪談を紹介していきます。 ・・・・・・・・・・・・ 「幽霊が苦手なもの」 作・夢乃玉堂 耽美な甘い香りに誘われて、私は白い道を歩いていた。 半透明の薄い布のような道。 虹の形にアーチを描き、空に掛かっている。 不思議に足を滑らすことも、道を踏み外すこともなく、 柔らかな触感が裸足の裏から伝わ

「敗北の意味」・・・墓標に刻まれたものは何を意味するのか。

旅での出会いで生まれた物語の数々を紹介していきます。 「敗北の意味」 私は、切り立った山の狭間にある港、アラスカのスキャグウェイにやって来た。 美しい雪山に囲まれ、おだやかな入り江の奥にあるこの静かな港町に 世界中から熱い情熱が集まった時代があった。 19世紀末。スキャグウェイから800キロの山中に金鉱が見つかり、 時ならぬゴールドラッシュが起こり、 一攫千金を求める男たちはこの港から山に入っていったのだ。 だが、険しい山の中で栄光を掴むものは多くは無かった。 「

「マルタ島の伝説 幻の地下都市発見」・・・地中海に浮かぶ島に伝わる謎。

『マルタ島の伝説 幻の地下都市発見』 港に連なる城壁が朝日を浴びて輝いていた。 世界屈指の入港風景といわれるマルタ島バレッタの港。 蜂蜜色と呼ばれる、淡いベージュ色のマルタストーンで作られた城郭が 入り江を見下ろす様に立ち並んでいる。 マルタ島は、地中海のほぼ中央にあるため、 古代ローマ時代から様々な国が支配し、交易の拠点として発展してきたのだ。 私が島に降りた途端、一人の老人が近づいてきた。 「あんた、何しに来たんだい?」 家族連れのリゾート客がほとんどの港町で

「六本指の猫」・・・幸運不運の境界

そのおじいさんはドウマンという名の猫を飼っていた。 ドウマンの足には指が六本あった。 おばあさんは初め飼うことを嫌がったが、 「船乗りの間では、六本指の猫は幸運を呼ぶ猫と信じられているんだ。 狩猟能力が高くてネズミをより多く捕まえるとされとる!」 とおじいさんが頑として譲らなかったため キッチンには入れないという約束で、渋々同居を認めた。 ドウマンには少し変な癖があった。 何もない壁や部屋の角を何分もじっと睨むのだ。 そんな時は、おじいさんもドウマンに付き合って何もない

「麻田くんつかまる」・・・イタリア旅行の果てに

「麻田くんつかまる」・・・イタリア旅行の果てに 「アドリア海の女王」とも言われる美しい街、ベニス。 ヴェネツィアとの呼ばれ、イタリア北東部のラグーナと呼ばれる潟にある水の都で、 歴史ある建物の間をたくさんの水路が走り、ゴンドラや水上バスが主な交通手段です。 後輩の麻田くんがこの美しき歴史の都を訪れたのは、ルキノ・ヴィスコンティ監督の 映画「ベニスに死す」に感化されたためでした。 「映画に負けないくらい美しい写真を撮って、写真集を作るつもりです」 と宣言して、出発した