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玉堂デスヨ。

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癒しの日常と、気がついたあの事。人生が豊かになる一瞬。 怪談、恋愛以外の作品も。
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#怖い

「すきま」・・・怪談。隙間を恐れる男は何を見たのか。

真夜中に、障子や襖がほんの少し開いていることに気づいた時、 わざわざ布団を出て閉めに行く勇気がありますか? 今回は、そんな怖い隙間のお話です。 ・・・・・・・・・・・・ 『すきま』by 夢乃玉堂 「目が覗いてくるんだ」 杉田は、明らかに神経過敏になっていた。 レスリングのインターハイに向けた強化選手に選ばれた杉田が 練習にも大学にも顔を出さなくなって二週間。 業を煮やした部長の命令で、同期の俺と吉野がアパートを訪れたのだが、 杉田は奇妙な話をするばかりだった。 「

「高速嫌い」・・・怪談。深夜のタクシーに乗ってきたのは。

昨今では少なくなりましたが、一時期タクシーは効率の良い遠方客を優先、 ひどいときには、「近くは行かない、別のに乗ってくれ」なんて言うものまでいました。 今回はそこまでひどく無いですが、似たようなお話。 ちなみに、今は都心を除くとタクシー自体がつかまりにくく、深夜に移動するのは至難の業です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『高速嫌い』 バブルの頃よりは少なくなったとはいえ、金曜の夜は今でもタクシーの稼ぎ時である。 タクシードライバーは歩合制なので、どれだけ効率よ

「始発前の仮眠室」・・・怪談。駅員に伝わる不思議な話。

鉄道会社によって多少違いますが、駅には仮眠室があります。 これは主に始発に対応するためです。早朝にタクシーや自家用車で駅まで来て、入り口を開けるところもあるそうですが、その鉄道会社では駅の仮眠室に駅員が泊まり込む、と決まっていました。 居残りの駅員は、終電を見送った後、駅の入り口にあるシャッターを閉めて構内の灯りを消し、駅員室の奥にある仮眠室で少し眠ります。 そして翌日の始発が走る1時間くらい前、午前4時前には起きて、 再びシャッターを開けるのです。 以前は、ベテラン駅

「トラブルの多い怪談会」・・・ホラー短編。問題の多い怪談会に参加してみると。

怪談好きの例にもれず、たくさんの怪談会に行ったり、配信を見たりしています。そうすると、怖いこと、不思議な事の楽しみ方が、実に多彩であると分かります。 今回は、そんな怪談好きのお話です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『トラブルの多い怪談会』 「心霊好き・怪談好き」と言っても皆が皆同じ事をするわけではない。 心霊スポットに行くのが好きな人。 心霊写真やいわくのある秘仏やミイラなどを見るのが好きな人。 怪談や体験談を聞いたり集めたりするのが好きな人など、色々なタイプが

「急かされる」・・・知り合いから聞いた怪談。

会社の保養所や研修所などといったところには、 不思議なお話があったりします。 身近でありながら、何かしら距離を感じてしまうのかもしれません。 今回は、そんなお話です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 『急かされる』   by 夢乃玉堂 これは友人の小野君(仮名)から聞いた話です。 小野君の働いている会社は、入社してすぐ社員研修があります。 新人に社会人としての基本を学ばせると同時に、 どの部署に向いているか適性を見極めるためのもので、 新入社員全員が参加。 3

「鏡の向こう」・・・怪談。地方のホテルで。

旅先の宿で一人になると、なんとなく気になるのが 鏡です。 洗面やお風呂場、時には洋服ダンスの扉の裏側にあったりして、思わずドキッとすることがありますよね。 今回は、そんな鏡のお話です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 「鏡の向こう」 by夢乃玉堂 今日は初めてのお泊り。 広いベッドの上で目を覚ました唯野未伊は、 隣で寝ている年下の彼氏である、雅史を眺めた。 「可愛い寝顔ね」 未伊は男を起こさぬよう、そっとベッドを抜け出すと、洗面に向かった。 そのホテルは、改装

「うわさのアプリ」・・・ホラー。無作為に送られる噂のアプリが。

SNSやインターネット上に広がる噂には、もう歯止めが効きませんね。 今回は、 そんな未来の噂の話。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「うわさのアプリ」 『エアウワサ(仮)』というスマホ向けアプリが開発された。テキストや写真を、近くにある同じアプリを入れているスマホに、次々に転送していく、というものだ。 iphoneの「エア〇ロップ」に少し似ている、と指摘する者もいたが、どちらかというと、チェーンメールに似ている。 「口コミをアプリ化したようなものだな」

「怪談。あります」・・・今週もぞっとして暑さを忘れるお手伝いを。

本日、9月12日木曜日16時から SKYWAVEFM「清原愛のGoing愛Way」「ラジオde怪談」。 いよいよあと2回。 内容は ①「山道のトラック」 朗読は川島美衣さん。 これは、私の知り合いの実体験に基づいたお話です。明かりの無い夜の山道で助けてくれたのは・・・。 ②「忙しいハネムーン」 朗読は上谷留佳さん。 以前書いたものを女性用に少し改訂したもので、新婚夫婦が巻き込まれる 不思議な出来事とは。 ③「お手伝い」 朗読は清原愛さん 番組MCの清原愛さんが語られ

「イベントでも怪談」・・・さすがに疲れた。

流石に疲れた。でも心地よい充実感のある疲れだ。 今年の怪談十大イベントの一つ、「HORROR TELLER FESTIVAL 2024」の事である。 少し雲の多い日だったので、それほど暑さに苦しめられる事もなく、観劇していても快適だった。 このイベントは、東京・渋谷にある O-WEST、O-nest、7th floorなどのライブ会場を使い、30名にのぼる怪談の語り手が、実体験の不思議な話や怪談を披露するというもの。 午後1時から夜の9時過ぎまで、怖い話にとっぷりと浸かる

恐怖あり、感動あり、ヒトコワのホラーあり

今週もぞっとして暑さを忘れるお手伝いを。 8月29日木曜日16時から SKYWAVEFM「清原愛のGoing愛Way」「ラジオde怪談」も9回目です。 ①「交差点の歴女」 村松 恭子さんは、舞台やTVを中心に活躍されている俳優さんで、私と葉はもう40年近いお付き合いになります。その特徴ある声が魅力。今回は様々な年齢の女性を演じ分けます。 (X 旧Twitter:@kyokoM1) ②「怖がりの彼女」 和田 真理子さんは朗読や舞台で知り合いになりました。シュッとしたエキゾ

「愛しいものを思う心」・・・それは誰も同じ。

失われたものは、常に愛しい。 それは、自分がどのような立場になっても、 触れていたい、傍にいてほしいと思うものである・・・ この物語は、そんな愛しさのお話です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「水飴と石段」 作・夢乃玉堂 浄法寺の長い石段の下で待っている二台の人力車を眺めながら、 友司は深いため息をついた。 雨上がり森から涼しい風が通り抜けていく。 その心地よさを感じていても、友司の心は晴れなかった。 『飴を選ぶときに指をくわえるのが、友恵の癖だったな』

「印象は当てにならない?」

その人の持っているイメージ、というのは誰にでもありますよね。 ぱっと見、第一印象で持たれるイメージはある意味「偏見」と呼べるレベルまで行くことがあります。 ところが、そのイメージを覆すようなポイントを見つけた時に、 惹かれる人と、引く人がいます。さらに、その先に・・・・ この物語は、そんなお話です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「双葉の入れ墨と夜盗草(よとうそう)」 「じゃあ。もう遅いんで、私帰ります。お金はここに置いておきます。 もし余ったら、皆さんで分けてく

暑いから少し涼しいお話を。

毎日暑いですね。 熱中症が怖いです。どうぞお体にお気をつけてお過ごしください。 という訳で、少し涼しくなるお話を。 ・・・・・・・・・・・ 「ミラクルマン」 我々アタックチームが、頂上を目指してベースキャンプを出発したのは、 午前5時。 尾根を縦走して4時間ほどで頂上に着くはずだったのだが、 天候の急変は予想をはるかに超え、すでに10時間以上経っていた。 激しい吹雪が止む気配は無く、 ほんの1メートル先も真っ白で何も見えない。 振り返っても、雪の上に残した足跡すら、

「レジ係の心得」・・・とても気の回るレジ係の方のお話です。勿論、怪談です・

スーパーやDIYの店に行くと、やたら時間がかかって、長い列が出来てる時がありますよね。 逆に、こちらが慌てて財布を出さなければならない程、手際が良いレジ係もいます。 今回は、そんなレジでのお話です。 *SKYWAVE FM「清原愛のGoing愛Way!」「めざせ100怪!ラジオde怪談」8月1日放送分より ・・・・・・・・・・・・・・・ 「レジ係の心得」 作・夢乃玉堂 買い物かごをレジの台に乗せる主婦の袖が捲れ上がると、 真新しい火傷の跡が見えた。 「痛そうだな・