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玉堂デスヨ。

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癒しの日常と、気がついたあの事。人生が豊かになる一瞬。 怪談、恋愛以外の作品も。
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2021年2月の記事一覧

じっくりと言葉の向こう側を考えると・・・「復顔術」

あっという間に読める、超ショート怪談。でも、よ~くその場面と背景にあるものを想像してみると、じわっと何かが迫ってくる。 「復顔術」 by 夢乃玉堂 一年前、溺愛する妻を事故で亡くした男を、 喪失感という名の鞭が苛んでいた。 妻の遺品を見るたびに、 楽しかった日々を思い出し、 心をいたぶるように打ちすえる。 「愛しき妻よ。もしも帰ってきてくれるなら、 私は何でもする」 ある日男は、さびれた骨董屋の一角に置かれた リアルな骸骨の置物を見つけた。 骨董屋の主人によると、

ショートショート「慙悔の桜」

あっという間に読める、超ショートショート。急逝した父親の納骨日に、娘たちが思う事とは・・・。  「慙悔(ざんかい)の桜」by 夢乃玉堂 「綺麗だったぞ。来年はみんなで行こうな」 母の墓参りを終えて帰宅した父が、肩に桜の花びらを一枚乗せて言った。 「そうだね」 私たちは、口先だけの同意を父に伝えた。 強い拒絶ではなく、遠回しの不同意である。 賛成しているふりをして、近くなったところで 急な用事を入れる・・・ 親不孝な三姉妹だ。 「地方の古い墓地なんて、綺

あっという間に読める、超ショートファンタジー「アラスカを買った男」

あっという間に読める、超ショートファンタジー。 旅先での不思議な出会いに翻弄される女は・・・ 「アラスカを買った男」by夢玉 「アラスカの土地は、2セントで1200坪買えたんじゃよ」 アラスカの氷河見物ツアーを待つ港の桟橋で レトロなファンションに身を包んだ、奇妙な老紳士が話しかけてきた。 『何かの売り込みか宣伝かしら・・・』 一瞬面倒くさく思ったけど、どんな話でも、 取りあえず聞くのが旅のルールだ。 「1867年。アメリカは当時ロシア

「名刀お加代」先月ラヂオつくばで放送された作品です。

実際に伝わる明治初期の伝承を元に、加筆脚色いたしました。先月、ラヂオつくばで放送された作品です。 「名刀、お加代」  作・ 夢乃玉堂 年号が、慶応から明治に変わって間もない頃。 薩長を中心とした新政府は、 「鎮撫使(ちんぶし)」と呼ばれる使節を全国に派遣した。 この鎮撫使、表向きは、各藩の石高を確認するのが役目であったが、 本当の目的は新政府に対する忠誠心を探ることにあった。 日本海に面した山陰の小藩、松波藩。 折しも若干22歳の勘定方末席

¥300

第一部完結記念 「七色ケーキ」

虹のような多様性を象徴するケーキ。 伝統を感じる町、浅草で発見。 層ごとの味の違いは微妙だが、出された時の驚きは抜群。 ケーキに思い出を持っている人は少なくない。 忘れえぬ恋の思い出、友人との楽しい時間。失恋したり、失恋させたり、 「あの味にはあの瞬間の・・・」という奴だが、その思いは思いのほか長く続くものである。時にはトラウマと呼ばれるほど・・・。 スイーツが至福の時間を作るのは、喜怒哀楽の思い出をよみがえらせてくれるからかもしれない。 #朗読 #恋愛 #会社

「24分のX」:XX 最終話 超ショートショートで連載小説 「追伸」終わらない終末」

〇「24分のX(にじゅうよんぶんのえっくす)」 短編よりも短い、あっという間に読める超ショートショートの連続小説。 いよいよ最終話。でも、よ~くその場面を想像してみると、じわっと何かが迫ってくる。最終話、終わらない終末が始まる。 最終話(XX) 「追伸 ピロートーク」 「ここが勝負どころよ。 夫が浮気してるらしいの。 待って待って、焦ってはダメよ。 気持ちが高揚するのは分かるけど、浮足立ってはダメ。 しばらくは、甘えん坊の妻を演じ、 平穏な家庭の幻を見続けてもらうわ。

「24分のX」:第19話  超ショートショートで連載小説 荒れ野

〇「24分のX(にじゅうよんぶんのえっくす)」 短編よりも短い、あっという間に読める超ショートショートの連続小説。 分かっていても、なぜか答えにくい「問いかけ」がある。 第19話 「何が良いの? 私の」 その問いに俺は困惑した。 「気に入っているところ・・・困ったな。 まず、顔とスタイル・・・は、タイプじゃないんだよな。 醸し出す色気・・・も、ある方じゃないしな。」 それから暫く、考え続けたが、 彼女が求めている答えを俺は思いつかなかった。 やがて彼女が冷めた目

「24分のX」:第18話  超ショートショートで連載小説 二番手の男

〇「24分のX(にじゅうよんぶんのえっくす)」 短編よりも短い、あっという間に読める超ショートショートの連続小説。 告白後、覚悟を問われた男は・・・ 第18話  「私自身が面倒くさいだけじゃない。 会社にいても面倒くさい事がたくさん起こるわよ。 上司や同僚にだって笑われるのよ。 課長のお古を引き受けた、二番手の男、予備の愛人のその又補欠って言われるわ。何て悪口を言われるかは、私、ずっと考えてきたもの!」 こぼれそうな涙をこらえながら 彼女は一気にまくし立てた。

「24分のX」:第17話  超ショートショートで連載小説

〇「24分のX」 短編よりも短い、あっという間に読める超ショートショートの連続小説。単独でも良いが、続けて読むとさらに伝わってくるものがある。 第17話 「もう少しだけ話していいか」 すがるように俺は続けた。 「課長の妻と、つまりあんたの不倫相手の奥さ・・・」 ここまで言って、きつい言葉を言ったと思ったが、 もう止められなかった。 「奥さん・・・あの女と話していたのを俺は見ていたんだ。 浮気相手に泥棒猫だと言ってやれ、 とかきつい言葉を並べていたよな。 だけどな、

「24分のX」:第16話  超ショートショートで連載小説  ついに告白・・・

〇「24分のX(にじゅうよんぶんのえっくす)」 短編よりも短い、あっという間に読める超ショートショートの連続小説。 友人にあおられ、告白することになった男だったが。 第16話 長年思い続けた彼女に、 勇気を出して 「好きです」 と言ったら 「あなたもどうせ体だけが目的なんでしょ」 と言われた・・・ 歯を食いしばって、普段の俺を恨んだ。             つづく #朗読 #恋愛 #会社 #恐怖 #失恋 #不思議 #小説 #可愛い #ショートショー

「24分のX」:第15話  超ショートショートで連載小説 「告白して来いよ」

〇「24分のX(にじゅうよんぶんのえっくす)」 短編よりも短い、あっという間に読める超ショートショートの連続小説。 どんな女でも落として見せると豪語する見栄っ張りで小心な男が、「あの女、今なら簡単だ」と言ってしまったために追い込まれる羽目に。 第15話 「そこまで言うなら、今すぐ告白して来いよ」 友達は面白がって煽ってくる。 無責任、軽薄、愉快犯め! でも、もしかしたら・・・ 「きっかけ」とは こんなものなのかもしれない。 俺はすっかり覚悟を決めた。    

「24分のX」:第14話  超ショートショートで連載小説  強がり

〇「24分のX」 短編よりも短い、あっという間に読める超ショートショートの連続小説。恋につきものの無関係な「忠告」が男に・・・。 第14話  恋を前にすると、たくさんの危険信号が聞こえてくる。 「お前とは不釣り合いだ」 「なんでわざわざ不幸になろうとする」 「傷ついている時に始まった恋は絶対に上手く行かないぞ」 そして・・・ 「あの女、面倒くさいぞ。」 だが俺は、どんな忠告にも耳を貸さなかった。 「警報機の音で逃げ出すような意気地なしには、 恋をする資格はない」

「24分のX」:第13話  超ショートショートで連載小説 恋を恐れる男に救いの手が・・・

〇「24分のX(にじゅうよんぶんのえっくす」 短編よりも短い、あっという間に読める超ショートショートの連続小説。恋を恐れて身動きが取れなくなっているチキンな男に、あるアドバイスが・・・・。 第13話 「どうせ又、怖がってるんでしょう。 相変わらず意気地なしね。これでも観て、勉強すれば?」 唯一俺の本当の姿を知っている幼馴染の女(幼稚園からの腐れ縁だが)から、『感動の恋愛もの』だというDVDを何枚も渡された。 『キミスイ』 『セカチュウ』 『ある愛の詩』 『ラス

「24分のX」:第12話  超ショートショートで連載小説 男の正体とは・・

〇「24分のX(にじゅうよんぶんのいち)」 オトコの正体とは・・・ 短編よりも短い、あっという間に読める超ショートショートの連続小説。 男の言葉には、常に嘘があるのか? 第12話 「あの女、俺なら簡単に落とせるぜ」 嫌なセリフだ。これまで何度使っただろう。 成り行きで始めた『軽い奴』というキャラを 特に嫌う訳でもなく、面白がって演じ続けてきた。 いつの間にか使うことに躊躇も無くなり 言い慣れた挨拶のようなものになっている言葉だ。 だが、本当に傷ついて地の底に沈みそ