ゼロヨンパブリカ チーム橙組【桜年代記】2/3
Fragment 2:山田佳江
「ねえパパ、退院したらハナミに行きたい」
娘の言葉に、僕は興味のないふりをする。自分の心拍数が上がっていくのを感じ、ひそかに呼吸を整える。
「ハナミ?」
「昔のアニメで見たの。ピンク色の花の下で、お弁当を食べたりお酒を飲んだり」
「五月になればこの木にも花が咲くから、病院の中庭でお弁当を食べようか」
彼女はありふれた橙の庭木を見上げ、木漏れ日に目を細める。
「だめだよ、ハナミはピンク色の木の下でするんだよ」
「そんなの、アニメの中にしか