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ヴィパッサナ瞑想の基本 その3

 ウ・ジャナカ・セヤドーのインストラクションを読み返してみると、とてもやさしく丁寧で、わかりやすく合理的な説明に感動してしまいます。25年前の日本にこのような教えをもたらしていただいたことに、改めて感謝いたします。

歩く瞑想

 それではウオーキング・メディテーション、歩く瞑想について話しましょう。歩いているあいだは、足の動きの最も特徴的なことについてマインドフルでいなければなりません。

 歩いているあいだは、まず左足が出て、右足が出ます。そのき、「左足」「右足」というふうにあるがままを意識してください。左、右ということが観察できるようでしたら、瞑想の対象を増やしましょう。まず足をあげるときに「あげているlifting」と意識しましょう。足を降ろすときは「降ろしているdropping」と意識してください。「あげている、降ろしている」というふうに。

 足の上げ降ろしの動作に意識を集中できるようになったら、瞑想の対象を広げましょう。歩く場合には、まず最初に足を上げ、それを前に出し、降ろします。まず足を上げるときに、「上げている」と心の中で記しながら、足を上げる動作を観察します。続いて「前へ出すpushing」「降ろす」という動作をひとつひとつ心に記していきます。このように一歩踏み出すということは、三つの場面に分けてはっきりと観察してください。

 心の中でラベルを貼るということはそれほど重要ではないのですが、それによって対象にとても正確に集中することができます。だから心の中でラベルを貼るということをするわけです。

できるだけゆっくりと

 もちろん一番大切なのは、この瞬間、自分の心や身体になにが起こっているのかを知っていることです。歩いているあいだは、きょろきょろ見回してはいけません。動作はゆっくりとしてください。ふつうの早さで歩くと、上げたり降ろしたりするひとつひとつの動作を観察することができません。

 できるだけゆっくりと、歩幅は自分の足の大きさくらい。それ以上大きくしないでください。自分の足の大きさより大きくしますと、足の動きを認識することができなくなります。足を上げ、前へ出し、降ろすという動作は、風の要素になります。風の要素の本質を理解するためには、足のひとつひとつの動きについてマインドフルにならなくてはなりません。

 歩いていてまわりを見回したいという欲求が起こった場合は、「見回したい、見回したい」というふうに、そういう気持ちが起こったことを認識してください。そういう気持ちが消えてしまえば、見回したいとは思わないでしょう。歩いているあいだにまわりを見ると、集中力が崩れてしまいます。

 立って瞑想する場合は、きょろきょろしないぞ、という確固たる信念が必要になります。そのような信念を持って、足を上げる動作、前へ出す、降ろすという動作を心に記してください。

 このように、一本の線の上を行ったり来たりします。部屋の端から端まで歩くわけですが、部屋の端まで行った場合、急いで振り返らずに、一度立ち止まり、自分が立っている姿を観察して10回ノートしてください。

 立っている姿勢を認識したのち、身体を回そうという意識がはたらきます。そこで「回そう、回そう」とノートしてください。そのような意向を意識したのちに、ゆっくりとゆっくりと身体を回してください。そのひとつひとつの動作も、はっきりと把握します。身体が今来た方向へ向いたら、まっすぐに立って、立っている姿勢を10回くらいノートしてください。

 自分が立っていることを認識したのちに、それまでと同じように「上げている、出している、降ろしている」とノートしていただきます。

 このようにウオーキング・メディテーションを1時間ほどやっていただきます。今日は半日しかありませんので、30分くらいしていただきます。

座る瞑想

 歩く瞑想と坐る瞑想は交互にやらなければなりません。坐る瞑想の前には、必ず歩く瞑想をします。

 なぜなら歩く瞑想において足の動きに注意深くなることによって、集中力を高めることができるからです。歩く瞑想において得た集中力を、坐る瞑想のために姿勢をとるまで持続しなければなりません。決められた席まで歩いくまで、足を上げ降ろす動きに注意していてください。

 坐る位置に立ったとき、まず「立っている、立っている」と立っている姿勢をノートします。そののちに、坐ろうとする意図を持ちながら、「坐ろう、坐ろう」とノートします。さらに、腰を降ろす動作を「坐る、坐る」とノートし、身体が床に触れる感覚を「触れている、触れている」とノートします。身体が落ちついたら、お腹の上下の動きを観察しはじめます。

 坐る瞑想のときは、楽な姿勢で坐ってください。

 ビルマでは、足は組まずに、すねを平行にします。足を組んで坐ると、血行が悪くなります。すぐに足が痛くなって、集中ができにくくなります。ですから足を組むのはあまりよくありません。坐ってみて楽な、リラックスできる姿勢なら、それが一番いいのではないでしょうか。

 気をつけていただきたいのは、背中はまっすぐに伸ばしていただくということ。背中が丸まっていると、お腹の上下の動きが分かりにくくなります。坐る場合は、帯やベルトはゆるめて、お腹が自由に動くようにしておいてください。頭と首はまっすぐに伸ばしてください。

目は軽く閉じる

 目はつぶってください。意識をお腹の動きに集中してください。両手は、掌を上に向け、重ねて、足の上に置いてください。

 そして、お腹が上下する動きに集中します。

 目は軽く閉じてください。あまりきつく閉じないで。

 このようにして、お腹が上下する動きを「ふくれている、へこんでいる」とノートしていきます。お腹の上下の動きがよく感じとれない場合は、両手をお腹の上に置きます。手によって、上下の動きが分かるはずです。

 お腹の上下の動きに集中しているときに、みなさんの心がさまよい出してしまったら、心を追いかけて、それを観察してください。ノートしてください。それについて、マインドフルになってください。それに気づいていてください。「さまよっている、さまよっている」「考えている、考えている」「想像している、想像している」という具合に。

 そうすると心の動きも消えますから、第一の観察対象であるお腹の動きに戻って、ノートしていきます。このように歩く瞑想と坐る瞑想とは交互にやらなければなりません。

日常的な動作への瞑想

 瞑想とは、歩いたり坐ったりすることだけではありません。日常的な行動、一般的な行動に関する気づきも瞑想の練習になります。

 たとえばみなさんが腕を伸ばす場合、伸ばす動作そのものをゆっくりと行いながら「伸ばしている、伸ばしている」というふうにノートしていきます。腕を曲げるときは、ゆっくりと曲げながら、「曲げている、曲げている」と観察していきます。

 このように、坐っているとき、椅子から立ち上がるとき、手を降ろすとき、歩いているとき、顔を洗っているとき、手を洗っているとき、風呂に入っているとき、食事をしているとき、これらの動作を行うときには、あるがままにノートしていきます。

 このように日常的な動作に気づいていくことは、洞察を得るために、集中を高めるために、たいへんたいへん重要なことです。あらゆる心や身体的な状態を観察していきます。その目的は、そのような心身の状態の本質をさとることです。

 みなさんも、この瞑想というものがだいたい分かっていただけたのではないでしょうか。瞑想には三つあります。歩く瞑想、坐る瞑想、日常生活における動作に気づいていること。

 まず15分ほど歩いていただきます。そのあと、坐る瞑想にうつります。

 では自分の動作をひとつひとつはっきりと意識しながら、行動をはじめてください。



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