中華料理屋がつくるチャーハンは〈案件〉なのか
「いま難しい案件に取りくんでいます」
「いい案件にめぐりあえた」
などと、巷のライターさんたちが自分の仕事を〈案件〉と呼んでいる。近ごろそれが気になっているんだ。日本語としておかしいから? いや、コトバの使いかたはまちがっていない。
たとえば、弁護士や経営コンサルタントならいい。会社勤めの人が上司から頼まれたことを〈案件〉と言うのもよさそうだ。なぜかライターが使うのには抵抗がある。不思議だ。
〈案件〉には、「解決すべき問題」という意味合いが含まれていると思う。弁護士やコンサルタントは、まさに問題を解決するのが仕事だから、〈案件〉がなじむ。
では、反対に〈案件〉がふさわしくない仕事はほかにあるか? たとえば中華料理屋。「チャーハンひとつ」という注文に応えることは、はたして問題解決なのか。
キミは「客の空腹という問題を解決しているぞ」と考えるかもしれない。でも、ボクの感覚ではそんなチャーハンは不味そう。味は二の次という感じがする。
ライターの仕事は、中華料理屋のように“美味しい文章”を読み手に与えること。ボクはそう思っているから、ライターの〈案件〉に違和感をおぼえるんだろう。
巷で日常的に使われていて誤りというわけではない。でも、ボクがちょっと気になるコトバを挙げてみた。コトバ狩りをしたいんじゃない。コトバの不思議さや奥深さに迫りたいだけだ。キミも肩の力を抜いて読んでほしい。