〈ウソをつけ!〉は諸行無常の世のなかを表現している
〈ウソをつけ!〉と命令しているようでも実際は「ウソをつくな」と禁止する意味だったりする。
ある海外ドラマでは「(不愉快な冗談なので)笑えない」という意味で「笑える」と言っていた。福本伸行氏のマンガには「ふざけろ(=ふざけるな)」が登場する。あるテレビゲームでは、絶望的な状況に追いこまれた人物がモノを投げながら「パーフェクト(perfect)!」と言っていたが、字幕では「くそっ」となっていた。
こんなふうにコトバと真意がまるっきり正反対になるのは、なぜなのか? 正解が出せそうな問題ではないけれど、ちょっと考察してみよう。
モノゴトは、正反対に見えるものこそ、じつは隣りあわせに存在しているのではないか。「笑える」ものがいつも「笑える」わけではなく、ちょっと位置がズレると、「笑える」が「笑えない」になる。この世にあるものはつねに変化しているからだ。ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。諸行無常。そんな世界の〈真理〉の片鱗が、〈ウソをつけ!〉「笑える」「ふざけろ」「パーフェクト」といったコトバに滲み出ているのかもしれない。
巷で日常的に使われていて誤りというわけではない。でも、ボクがちょっと気になるコトバを挙げてみた。コトバ狩りをしたいんじゃない。コトバの不思議さや奥深さに迫りたいだけだ。キミも肩の力を抜いて読んでほしい。