辞書の旅は古くて新しい学問である
明生人嘉 〜 Myojo Jinka 〜 127話
こんにちは。愛を知る県名古屋市の佐藤嘉洋です。雑学の宝庫でもある辞書を序文から読み進め、まとめてお届けしています。辞書、どえりゃあ面白いです。
さて、ここ最近は父親の他界と共に色々なことが重なっています。K-1サラエボ大会では、初めて徹夜で解説する機会にも恵まれました。その翌日には東海三県で放送されたメーテレ『超町人! チョコレートサムネット』に瑞穂区の超人として出演し、見事MVCを獲得しました。皆さま、ありがとうございました。
手始めに愛を知る
私は2013年5月30日から辞書の旅と名づけ、ほぼ毎日辞書を読み、一ページの中から一語書き出し、考え、SNSで呟いています。これまで四冊の辞書を読破しました。今調べてみたら、4241日間継続していました。
当初は格闘家がいきなり辞書の旅を始めたものだから、そういう話が苦手な人は、どんどん離れて行きました。しかし自分が正しいと思った通りにアレンジして続けていたら徐々に評判となり、2020年にはラジオでレギュラー、2021年には新聞掲載、2024年には地上波TVでも話題となりました。 今回はまず、辞書の旅の良かった点をお伝えします。
第一に、本文「あ」に入れば、手始めに愛の意味を知ることができます。辞書の旅をすると、すぐに愛知県民にふさわしい人になれます。またキリスト教では、神は愛と説いていますから、序盤から凄いことを学べます。
第二に、多くの宗教それぞれに考えがあることがわかります。仏教、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教など。八百万の神や神道も載っています。いろいろな思想があるとわかれば寛容になれ、争いも減ります。
第二次世界大戦後、日本は神道を解体させられたそうです。しかし電車の中で急な腹痛に見舞われたとき、咄嗟(とっさ)に「神さま」と祈ったことはないでしょうか。表面上は解体させられても、多くの日本人の心底には当たり前のように神がいたということになります。
第三に、古今東西の四字熟語、故事ことわざ、中国古典、西洋哲学、東洋哲学の基本にも触れられます。イメージすれば深く学べます。どこかで自分にしっくり来る思想と出会えるでしょう。それが自分の資質であり、才能でもあります。努力して磨くべし。
辞書の旅の心得
紙の辞書を用意してください。ページをめくる感覚。旅の足跡が徐々についていく味わいを楽しみましょう。
初心者には、新明解故事ことわざ辞典がオススメです。これを読破したら次は新明解四字熟語辞典か新明解や明鏡などの小型国語辞典に挑戦しましょう。後者は難易度がぐんと上がりますが、ついにすぐに愛を知ることができます。辞書の旅をゲームと捉え、遊び感覚でやりましょう。
辞書の旅のやり方
❶ まずは序文あるいは本文「あ」から一日一ページずつ読み進めます。気になった言葉を蛍光ペンでマークしながら読むと効率も良くなります。
❷ そこから選んだ言葉をスマホで手打ちします。無理な量は禁物。一日だけなら誰でもやれる量に留(とど)めます。また、コピペは推奨しません。手を使ってアウトプットすれば自身の能力もより高まります。
❸ そこから思い浮かんだことをSNSやメモ帳に呟きます。続けていると、そのうち小説だとか金言だとかが降ってきます。
あとはほぼ毎日やるだけです。Have a nice trip.
また、私の辞書の旅は書道とも繋がり、選んだ言葉を揮毫(きごう・筆で書くこと)する工程も加えてしまいました。書道より家事を手伝えと妻は言いますが、字は相当上手くなったので吉としましょう。
硬筆はいまだに下手です。ジムの会員さんにはバレているでしょう(笑) だからせめて、誰もが読める程度の字には鍛錬しておいた方が善いです。
書道の話は大変面白い発見が多くありますので少し付け加えてさせていただきます。
書道再開のキッカケ
私は中学二年までの四年間、北区の西大曽根の書道教室に通い、後藤先生の元で準六段まで習いました。不惑(40才)から書道を再開し、はやく上達できた要因は、基礎を学んでいたおかげだったと思います。感謝。
書道再開のキッカケは本誌の辞書の旅コーナーのロゴです。これを筆で書いたのが始まりです。机の上に息子の書道セットが置いてあり、これを見たときに「久しぶりに書いてみるか」と思い立ったのです。
そして四字熟語辞典の言葉を書いてみては、という後述する書家の先生の声にビビッと来て、辞書の旅と書道に熱中する人生となりました。当時はコロナ禍。高尚な暇つぶしとなりました。2023年6月には、当時併読していた故事ことわざ辞典と四字熟語辞典の本文「あ」〜「わ」まで計1386ページを一語以上ずつ書き切りました。
記念に、そこから選んだ珠玉の名言を集め、
『株式会社エントリーpresentes 具鷲個展 1 』
も初開催できました。活力が沸いたり、ほっと力が抜けたりするような良い空間を演出できたと自負しております。再開からのご縁で東京の星野葉柳先生と池下の伊藤道子先生の二人の書家からよくアドバイスをいただき、新たな知見をいくつも得ました。また、書道は古を貴(たっと)ぶことがよしとされるので、教えていただいた書道アプリや書き順アプリを駆使して、主に中国古典から学んでいます。
書道の少しマニアックな話
少し専門的な話をすると、真筆のない書聖・王羲之(おうぎし)からはあまり学んでいません。楷書は顔真卿(がんしんけい)から入って力強い筆を学び、欧陽詢(おうようじゅん)の切れ味のある線の美しさに惚れ、今は褚遂良(ちょすいりょう)の空間づかいも魅力的に感じてよく真似しています。
行書は米芾(べいふつ)や空海(弘法大師)、蘇軾(そしょく)、隷書(れいしょ)は楊貴妃に骨抜きにされた愛らしい玄宗皇帝、篆書(てんしょ)祭りになった広辞苑第七版「き」では呉昌碩(ごしょうせき)からよく学びました。
下は麒麟(きりん)の篆書です。
このとき奇跡の偶然が起こり、東京国立博物館、台東区書道博物館で開催されているの知り、上京の度に呉昌碩展を嬉々として観に行きました。
書道専門誌『墨』も年間購読し六冊、他にも書道関連本は五冊読みました。その道の専門家を名乗るなら、その分野の本を十冊読むと、その入り口に立てるという格言を聞いたことがあります。どれどれ、門は開けたかな。
広辞苑を全ページ書いている
現在は広辞苑第七版を序文から一語ずつ全ページ書いています。先日ついに「さ」行に入りました。なぜこんなことをやっているのか、自分でもよくわかりません。しかし、これだけは絶対に成し遂げなければならないという使命感だけはあります。
コロナ禍も終わり、忙しい日常が戻ってくると共に辞書の旅と書道の時間も取りづらくなってきました。しかも今は中型辞典の広辞苑です。一ページ中の情報量も今までの小型辞典より一・五倍は多そうです。それを一日三ページずつ読み進め、揮毫しているのです。時間が全然足りません。ペースを落とすのはアレだしなあ。
しかしこのままでは、広辞苑読破、全ページ揮毫(きごう)の偉業を達成できずに挫折してしまう。そこで効率化を図りました。工夫してみると面白いもので、意外とできるようになりました。これは無理だろうと決めていた限界は、意外と無理ではないこともあります。
もちろん、辞書の旅を始めようとしている方は、書道は別に考えてもらって大丈夫です。けれど気楽な気持ちで、月に一度くらいはどうでしょう。辞書の旅から厳選した一語を書く程度ならできるのでは。面白いですよ。そのうちウィークリーになっちゃったりしてね。
辞書の旅は新しい学問
SNSにアップし続けていると、付随して色々と教えてくれる人もいて、辞書を軸に多種多様の知識が身につきます。現代は凄いです。忘れても大丈夫。一度でも読んで書いて考えたという自分の行動が自身の身体に刻み込まれています。0かそうでないかは大きく違います。
人に見られるという意識を持てば、反省する心も生まれ、字もさらに上手くなります。調べてみると、書道は日本の大切な文化の一つでした。これ幸いと、人に良さを伝えています。
先日、母校の名城高校で辞書の旅と書道の初授業をしてきました。私は古(こ)を貴(たっと)んだ新しい学問の誕生だと考えているので、実現してよかったです。
辞書の旅は、冒頭に述べた宗教と同じように日本文化の数々も端的に学べます。愛知県の地域にも詳しくなれます。世界遺産も巡ることができます。
ということでブルート通信199、始まります。ある人は当誌を通勤時間の楽しみにしてくれているそうです。有り難い話です。
今号のなにとぞグルメ紀行は、昨年も好評だった名古屋おいしいうなぎ特集2024版です。そして辞書の旅コーナーも相変わらずの面白さです。
他にも愛知県の地名、人生に役立つ名言、世界遺産巡りなど盛り沢山です。スマホと一緒にどうぞお楽しみください。
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語源【 Brave Heart 】