見出し画像

取り壊し直前の美術館

明生人嘉 〜 MyojoJinka 〜 130話

取り壊し直前の美術館

んにちは。現物バージョンのブルート通信では、コラムの一語目の「こ」が手書きなのに気づいた方はほとんどいませんが、筆で書いた広辞苑第七版の「こ」を、PCでいそいそと切り抜いて作った佐藤嘉洋です。


【 ブルート通信vol.202 】

私は現在、1日3ページずつ広辞苑第七版を読み、そこから一語ずつ選び、序文から筆で書き進めています。 講演をきっかけに母校の名城高校で辞書の旅の授業をしたこともあります。語彙力もつくのでキックボクシングの解説や指導にも活きています。


AIはよく使うべき


【 名城高校にて2時間『辞書の旅』の授業 】


3年前にデザインを勉強し始めました。その流れで書道も中学以来に再開しました。ブルート通信も毎号改良を重ねて大きく様変わりし、かなり良くなってきたと自画自賛しています。

AIで辞書の旅コーナーの絵も描きますが、文章や書は自分でやるのが楽しいので手作りです。楽しむために書いているのに誰かにやらせては面白くありません。効率を良くすることと趣味を楽しむことは同義ではありません。

AIはあくまで助手です。今のところ感情はないので彼らに気を使う必要はありません。無理に酷使するのは可哀想だけれど、よく使うべきです。そして核心的な部分、心髄(しんずい)には人の手を加えることによって魂が宿ると考えています。これぞ画竜点睛(がりょうてんせい)ですね。


【 吹毛じいさん / 2024 】


AIはプロとアマとの境界線を曖昧模糊(あいまいもこ)にしました。だから過去のプロたちは、自分たちのフィールドが素人に犯されるかもしれないという危機感を抱いているのでしょう。著作権の問題もあります。しかし、これに関してはあまり主張し過ぎても自分の首を締めることになります。時代は変わりました。魅力的なコンテンツを作ってもケチケチし過ぎると、さらに良い類似のモノが、すぐに、必ず、出てきます。

ところで、アイディアやひらめき、創作物は自分だけのモノなのでしょうか。私たちは本を読んで真似て、勉強して真似して、経験して真似たことを織り交ぜて何かを生み出しています。世の中は、突き詰めればすべてパクリとも言えます。極論、子も親のパクリです。


妻が急病で父子水入らずだった沖縄旅行


学ぶの語源は「真似(まね)ぶ」です。書道にも古典を真似して書く臨書(りんしょ)という練習法があります。私は主にスマホアプリを駆使して中国古典を参考にしています。

だから、今書き進めている広辞苑第七版の書作品のほとんどが古を貴(たっと)んだものになります。一語に取り組み過ぎると間に合わないので、ある程度で次に向かいます。


温故知新 ~ Guwashi ~ 2023

一瞬の美


私は2017年から月1で名古屋市にある中村保育園でキックボクシング教室を開いています。園児一人ひとりに違った個性があります。小さな子どもの集団を指導することは大人とは全然違うので、試行錯誤しながら今日に至っています。


【 保育園児にもミットの持ち方を教えている 】


園児たちの人生でキックボクシングを経験したことが少しでも強さや自信、そして優しさに繋がれば幸いです。初年度に教えた子のお父さんが、だいぶ前に中村区のキックジムに入会しました。そして前号の名古屋格闘技通信に掲載された西田光汰日本チャンピオンの試合にもセコンドとして立ち会ったようで、とても嬉しく感じました。

そして中村保育園の旧園舎は建て替えのため、2024年の暮れにかけて取り壊されました。

【 中村保育園 旧園舎 / 2024 】
【 整地され、新築工事が始まる / 2024 】


仮園舎への引っ越しなど忙しい中、粋な計らいで取り壊し直前の園舎で展覧会が開催されることに。そんな貴重で儚(はかな)い経験の機会をいただき、私具鷲(ぐわし)も気合いを入れて臨みました。園児や先生方を中心に、画家や書道家が壁や天井などに作品を創りました。園舎全体がアート空間になったかのようです。

皆で一生懸命作りましたが、すぐにお別れです。形あるモノは必ずなくなり、出会えたモノとも決まって離れる運命にあります。しかしそこに一瞬の美があります。


必見の和訳



具鷲のメイン作品は陶淵明の『雑詩』です。全紙6枚の超大作です。日が暮れるまで没頭して書きました。

この詩は昨年初開催の『株式会社エントリーpresents 具鷲個展一』でも書きましたが、今回はボリューム感のあるタヌキの毛筆で迫力ある書に仕上げました。

素晴らしい和訳は向かいの壁に書きました。詩の全文は後に載せています。ぜひご覧ください。このような心持ちで人生を過ごしたいものです。


【 感慨深い 】

三階ホールには画家と園児との自由奔放な共同作品や随筆『ウクライナの控室にて』もドアや壁に直接書きました。


【 陶淵明 雑詩 書・具鷲 ~ Guwashi ~ 2024 】

陶淵明『雑詩』

人の命は風に舞い上がる路上の塵のようなもので、
あちらこちらへと吹き飛ばされて、いつ終わりを迎えるかわからない。

そんな世に生まれたわれわれは、皆兄弟のようなものだ。
血の繋がりがすべてではない。思いも繋がる。

喜びたいときには親しい人を集め、酒を飲んで楽しもう。
一日に二度朝が来ないように、若いときも二度ない。
しかし、今が人生で一番若い。
だから今、この一瞬を大切にして、機会あるごとに楽しむべきだ。

年月は過ぎていくだけで待ってはくれない。
盛年重ねて来らず。
歳月人を待たず。

time and tide wait for no man.



ブルート通信とは

2007年12月から、ぶるーと整体院の院内報として月1で発行しています。毎月少しでも良いものに、という姿勢で作り続けていたら2000部の冊子になりました。ブルート通信はぶるーと整体院でも無料配布中です。ぜひお越しください!
語源【 Brave Heart 】