ラブドール

美和子ちゃんを忘れました。すぐ、戻ります。

著:2017年1月25日


女子大生の私が、東京の繁華街でラブホのフロントをしてなんだかんだで3年が経つ。

今日は、「美和子ちゃんを忘れました。」の話をしようと思う。


ラブホの忘れ物は、多岐に渡る。


1番多いのは、ローションで、ものすごい量を皆さん持って来ては、忘れていく。


ローション相撲でもするのかよ。


といつも心の中でツッコミながら年末は、忘れ物の分別をしたりしている。


『美和子ちゃん』の電話があったのは、私がそんなポリタンクのローションをまとめてゴミ捨て場へ運んでいるときだった。



プルルルルル


「はい、お電話ありがとうございます。〇〇ホテルでございます。」

「すみません、先ほどそちらを利用していたものですが…

忘れ物をしてしまいまして…」

「はい、何号室か覚えていらっしゃいますか?あと、お忘れ物は何でしょうか?」

「さっきまでいたので、覚えてます。501号室です。


忘れ物は………」


「お忘れ物は?」


「忘れ物は、美和子ちゃんです!!!オレ、戻ります!!!」


…………???


人間忘れたん…?

と思ったけれど、よくよく聞いたらマネキン

を忘れたらしい。

美和子ちゃんとは、愛玩具マネキンの事だった。


お忘れ物は、1階フロントで渡さなくてはならない。

捨てようと胸に抱えていた忘れ物の大量ローションは、さて置いて
主人に忘れられたマネキンを救いに5階へ向かった。

501号室で、

マネキンはベットに横たわっていた。





何故、こんなに、強烈なディープインパクトを残してくる、このシロモノを忘れていったのか…?


という疑問を持ちつつ、163センチの私と同じくらいのマネキンを、

さながら社交ダンスの練習をしているかの如く、腰を持ち上げ、手と手を取り合い、1階フロントへ運んだ。




持ち主の、マネキンの主人は程なくして現れ、
マネキン断ちをしようと思っていた事を半泣きで語り、

ごめんね、ごめんね

と言いながら、二人で帰って行った。


※帰りに軽トラだったんだけど、荷台まで一緒に運んだ。お客様の大事な美和子ちゃんに傷1つ、付けさせないよ!


という事で、ラブホにマネキンを捨てようとしては、いかん。ダメ、ぜったい。ってお話。

非日常度 ★★★★☆
(マネキンを、お忘れになったのはこの方が初めて。持ち込みも、なかなかいない。)


次回は、「仲良し家族」。

よろしくお願いします。


では、今日はこのへんで。


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