抗生物質の投与が腸内細菌に与える影響とプロバイオティクスとの関係
抗生物質が腸内フローラに与える影響について、意識されている方はあまり多くないのではないでしょうか。抗生物質は、病原菌などの細菌の増殖を抑制したり、死滅させる効果があり、病気の治療には大変役に立つものですが、一方で、体内に常在する腸内細菌へも影響が及んでいます。
今回は、日本の研究グループが2018年に発表した、抗生物質とプロバイオティクスの投与と腸内細菌の関係について調査した論文を紹介します[1]。
1、研究の背景
抗生物質の一つであるクリンダマイシンは、嫌気性細菌による感染症の治療薬として使用されており、身近なところではニキビの治療薬としても用いられています。
抗生物質の使用には、副作用として抗菌薬関連下痢症(AAD)を発症することがあり、これは抗生物質の抗菌作用による腸内細菌叢のバランスの乱れが原因であるとの研究報告のもと、プロバイオティクスがAADの治療と予防に使用されています[2][3]。
プロバイオティクスとして用いられている嫌気性細菌の一種Clostridium butyricum MIYAIRI 588(CBM 588)は下痢の予防、治療に効果があることが報告されています[4][5][6]。 CBM 588を主成分とする「ミヤBM」という整腸剤は、AADの治療と予防に効果があるとの研究報告もあります[6]。
しかしながら、これまで、クリンダマイシンのような抗生物質(嫌気性細菌に抗菌作用を持つ)と、下痢の予防治療に効果があるとされる嫌気性細菌CBM588を同時に投与した場合に、どのような効果があるかについては未解明でした。
そこでこの研究グループは、本研究において、この効果を明らかにすることを目的として、マウスを用いた実験を行い、複数の観点から調査を行いました。
2、実験方法
マウスを
A. クリンダマイシンを投与したグループ
B. CBM588を投与したグループ
C. CBB588とクリンダマイシンを投与したグループ(併用グループ)
の3つのグループに分け、それぞれ4日間、経口投与により接種しました。
投与開始前を0日目とし、投与開始から18日間、2日おきに糞便サンプルを採取解析し、クリンダマイシンとCBB588の投与が腸内細菌へ与える影響について調査しました。
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