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お散歩吟行

まず、工場直営パン屋さんに向かう
いつもは水筒に飲み物を用意して行くのを、今日はコーヒーを買いにコンビニに寄ったため、土手ではなく遊歩道を歩く
かつての工場用水路が暗渠になり整備された遊歩道なので、工場の機械や部品をモチーフにしたオブジェとそれに実用性を持たせたもの、ベンチやテーブル、遊具が道なりに並んでいる
野放図に茂った植栽と雑草、空き缶や吸い殻と相まって、ポップでサイバーパンクな終末感があるのだけれど、ここは春には桜、秋には紅葉が美しいのだ

パンを買って、丘陵に広がる公園へ向かう
広がると書いたけれど、この公園、実際は麓から頂上へほぼまっすぐ伸びている
丘陵に伸びる公園ではどうにも収まりが悪いので、一旦嘘をつきました
いつもは保育園児が崖を草地を泥道を縦横無尽に遊んでいるのだけれど、今日は姿が見えない
代わりに幼児がカートから抱え下ろされて、おむつに膨らむお尻もしっくりとおにぎりのように草地に並んでいた
頂上でパンとコーヒーをいただく

丘を下る辺りには竹林があって、合歓の木があって、畑を縁取り季節の花が咲いている
今は紫陽花
平地を少し行くと、田圃がある
サッカーコートにも足りない広さに数枚
米どころの人から見れば「これが田圃?」という規模かもしれないけれど、私には「田圃、あるじゃ〜ん!!」という掌中之珠みたいな田圃である
広い田圃から順に作業が行われるようで、今日は手前から植田(未完)、代田、田打ち済、鋤きこむ稲藁も積まれたままという状態だった
田圃の縁をお散歩リュックを背負ったおばあちゃんが歩いている
長辺100m弱、短辺50m弱を歩き切り、程よい高さの何かに腰掛けるのを見届けて田圃を去ることにした

用水路のこちら側は田圃、その先は畑、向こう側は工場
畑と畑の境を示すものか、ぽつんと立つ桂が一本、赤土に木陰を広げていた
畑の外れに平飼いの鶏小屋がある
雀は入り放題、鶏は出放題だった金網とネットは補修されて、ちょっと狭くなったけれど、小綺麗に整っていた
入れ替わり立ち替わり土の窪みに収まる鶏から離れて一羽、嘴を柵の隙間に突っ込んで鶏冠を揺らしていた

用水路が川の本流に流れ着き、土手を進むと橋がある
この橋の下に川底の岩盤が露出している
岩盤には草が生し、岩の裂け目や窪みに川の流れは分かれたり、逸ったり、渦を巻いたりしている
この川底は一枚岩で、ここに見えている凹凸は岩盤の剥がれなのではないかと思ってネットで検索したりしたけれど、わからなかった
一度、ボートを出すライフジャケットの作業員さんを見かけて尋ねてみた
「私たちは水質調査員で地質のことは…」と丁寧に詫びられてしまった
川底の謎は一生解けないかもしれない

続く

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