関西弾き語り時代の話

大学を卒業し、当時活動していたバンドを解散した2008年、社会に出てからもソロで弾き語りをしていた。

そんなに頻繁では無かったが、ライブハウスを中心に活動。

バンドメンバーがいる心強さが無くなった代わりに自由度は増した。

2回、3回とライブをこなして行くうちにとある男子高校生と知り合った。

メガネをかけた真面目な男の子だった。

最初は軽くお辞儀を交わす程度だったが、ライブハウスで顔を合わす度に少しずつ言葉を交わすようになった。

僕『お、こんばんは!』

男の子『あ、河野さんお疲れ様です』

僕『今日選曲ミスったな』

男の子『そうですか?まぁ確かに、失恋ソング多かった気がします(笑)』

僕『やっぱり?(笑)』

ちなみに未だに僕のオリジナル曲に占める失恋ソングの割合は94パーセントである(笑)
ライブで演奏する失恋ソングも多くなりがちなのである。

僕『今日のお客さんカップル多かったのに失恋ソングて(笑)』

男の子『(笑)河野さん。僕は河野さんの優しい失恋ソング好きですよ。で、ですね、失恋ソングが多い河野さんを恋愛マスターと見込んで相談があります!』

僕『何でや(笑)逆に手本にしたらいかんて(笑)』

男の子『失恋ソングがいっぱい出来るくらい人を好きになったんですよね?』

僕『未練たらしいだけだよ(笑)』

男の子『河野さん、僕、今好きな女の子がいます!』

僕『そうなん?』

男の子『はい。でもクラスのマドンナなんです、、、。』

僕『マドンナ好きになったんかぁ(笑)』

男の子『こんな僕がですよ(笑)マドンナですよ(笑)』

僕『もう、告っちゃえよ(笑)』

男の子『言い方軽っ(笑)』

僕『関係ないよ。マドンナだろうが、クレオパトラだろうが(笑)』

男の子『あ、僕クレオパトラ嫌いです』

僕『知らんわ(笑)』

男の子『(笑)』

僕『でも、俺は誰かを好きになったらちゃんと伝えるべきだと思うなぁ。』

男の子『こんな真面目メガネの僕が告ったら笑われませんかね?』

僕『もし笑う奴がいたら、そいつ馬鹿だよ。あと、自分を真面目メガネとか言うな(笑)』

男の子『何かありがとうございます(笑)告ってみます』

僕『もしフラれたら俺が失恋ソング作ってやるよ(笑)』

男の子『遠慮しときます(笑)』

数ヶ月後、、、
ライブ前。

男の子『あ、河野さーん』

僕『おー、久しぶり!』

男の子『フラれました(笑)』

僕『ん。今日ライブ終わったら飲み行くぞ!!』

男の子『僕、まだ高校生ですよ(笑)』

ライブ後、、、

男の子『ちょっと河野さん、何やってるんすか、もー』

僕『俺のライブだ。選曲は俺の勝手だ(笑)』

男の子『いやそれにしても、全曲失恋ソングて(笑)』

僕『失恋した奴がいたから(笑)』

男の子『河野さん、ありがとうございます。』

男の子の目尻に少し涙が見えた。

それから3年程して、僕は宮崎に帰った。

そして、今でも音楽をしている訳だが、男の子と出会い、失恋ソングばかりだった僕のレパートリーに『恋せよ、少年』という曲が出来た。

元気か、少年。俺は元気だ。

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