自分を見失う話
色々な事がある現代の世の中で、自分を見失う事がある。例えばそれは、こんな話。
大学時代、中々友達が出来ず、もちろん女の子と話す事なんて出来ず、それでもなんとか大学生活を送っているうちにようやく友達も出来、緊張はするが話が出来る女の子とも知り合った。
元々音楽が好きでドラムをしていた僕は、同じくバンドを組み、ライブハウスなどで活動していたその女の子と音楽の話をするようになった。
ある日、その女の子がこんな事を言う。
女の子『私、 NIRVANAが好きなんよね〜』
僕『へぇ、いいよねぇ、俺も好きだよ』
嘘をついた。
高校時代、先輩にNIRVANAを勧められた事がある。
しかし、当時の僕はNIRVANAの良さが分からずあまり聞くことはなかった。
存在は知っていたが、好きと言う程ではなかった。
僕は女の子の一言で自分を見失ったのである。
僕は女の子を駅まで送ると、その足でTSUTAYAに走り、片っ端からNIRVANAのCDをレンタルした。
初期のアルバムから、その他まで片っ端からレンタルした。
“女の子と話すきっかけが欲しい”
ただそれだけの理由で僕はNIRVANAを聞き込んだ。
そんなある日、女の子に話があると言われた。
すっかり仲良くなっていたので、ちょっとばかりの期待感を持ち、待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ時間に到着。
女の子は今で言えば横浜流星に似た男と2人で待ち合わせ場所にいた。
女の子『彼氏できたんだ、紹介しようかなと思って』
横浜(仮名)「初めまして。こいつがいつもお世話になってます」
少しハニかみながら見つめ合う2人。
そんなラブラブな2人に、
『おぉ、良かったやん!おめでとう!!』
と言い、しばらく3人で談笑後、その足で自宅に帰り、NIRVANAを爆音で聞いた。
NIRVANAで女の子と仲良くなろうと思っていた僕は、NIRVANAで女の子への気持ちを洗い流した。
その後に残ったものは、心の底からNIRVANAが好きになっていた自分だった。
その後、NIRVANAのコピーバンドを組んだり、
新しくベスト盤などの音源が出ると予約して買ったりもした。
自分を見失う事はそれがどんな形であれいいとは思わない。
しかし、自分を見失う事が悪いとも思わない。
結果的に失うものもあれば、得るものもある。
ただ、自分を見失っても、自分を失ってはならないと、この経験を通して強く思った。
その女の子が最近結婚したと言う話を聞いた。優しい子だったから、きっと幸せになる。本当におめでとう。
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