埼玉県 こども・若者計画(案)をみんなで読みました
「埼玉県こども・若者計画(案)」(令和7年度~11年度)に対するパブリックコメントが募集されています。
しかし、開いてビックリ!
なんと110ページもあるんです。
全部を深く読むのはなかなか厳しい。
自分の関心があるところだけでも!と思っても探し当てるのも大変。
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/261359/2024112603.pdf
なので、
全く読んでなくても…
ちょっと読んだんだけど…
読んだんだけど、ちょっと聞いて!という人たちで情報を共有すれば、
この大量のページの概要をつかめたり、
課題が見えてきたりするかもしれない!
そう考えて、知人の知人を誘いZoomで集まったところ、なんと9人もの方が参加してくださいました!
滑川町、東松山市、入間市、ときがわ町などさまざまな地域から、
子どもの居場所支援に携わる方、人権に関するNPOのスタッフ、健康教育研究の補助をされている方、
さらに地方議員や県議会議員の方まで集まり、
多角的な視点で意見を共有する場となりました。
出た話がとても有益なので、まとめてみました。
参考にしていただいて、たくさんのパブリックコメントを届けましょう!
全体と構成についての感想
全体を眺めると、新しい未来への計画ではなく、現在やっていることの寄せ集めのようで、「古い!」と感じます。
どのような専門家が関わって、誰が作成したのかもわかりません。
計画が目指すべき未来像や、そのために必要な具体的な行動が欠如しており、既存の施策やアイデアの寄せ集めにとどまっている印象を参加者のほとんどが感じていました。
「現状維持の延長線上」でしかなく、急速に変化する社会や子どもたちを取り巻く環境に対応できるものと言えるのでしょうか?
また、計画全体に統一感や一貫性がないため、「誰のために」「何を目指しているのか」がぼやけている印象です。
また、横断的な項目が並んでおり、他の基本計画等に書かれているであろう事も含まれていますが、関連項目が変更された場合、この「埼玉県こども・わかもの計画」に書かれていることは連動して変更をかけていくのででょうか?
他計画との関連性や、何が上位法になっているのかがわかりません。
(そもそもこども基本法を上位法として意識されているのか?)
以下が具体的な問題点として挙げられたものです。
子どもの権利が十分に反映されていない問題
子どもの権利に関する言及はあるものの、「意見表明の権利」に偏り、遊ぶ権利や休息する権利など他の重要な権利が軽視されている。
「子どもの権利条例に基づく」としながらも、すべての権利が包括的に扱われていない。
計画全体において子どもの権利の扱いが薄く、構成に荒さを感じる。
少子化対策との混在
本来は子どもや若者を主語とするべき計画であるが、少子化対策や結婚・出産支援が混在し、焦点がぼやけている。
プレコンセプションケア(妊娠前の健康管理)が「婚活支援」として扱われており、性教育や子どもの権利に関する議論が後退している。
「結婚・出産の希望実現」が含まれている点が子ども若者計画としては不自然。
若者の定義と射程の広がり
「若者」を30歳までと広げたことで、計画の射程が拡散し、軸がぼやけている。
各要素が効果的に整理されておらず、焦点が曖昧。
子ども基本法との不整合
計画は子ども基本法を基礎にしているとされるが、法の四原則(差別の禁止、生命・発達の権利の尊重など)が計画に十分反映されていない。
基本法に基づく計画でありながら形式的に見え、本来の目的が達成されていない。
ここ少し変じゃない?と思ったところ
ここからは各自が読んで、指摘したいところを共有しました。
ご意見は重なるところもありましたので、項目にまとめてみました。
1. メタバース中心の取り組みで本当に良いの?
メタバース空間でのユースセンター構想が計画の中心となっているが、若者たちからは「リアルな居場所の方が重要」という意見が多い。
市町村のリアルなユースセンター設置支援が意図なのか、メタバース施策が重視されているのか不明確。
オンライン施策への依存に現実的な効果が伴っていないとの指摘もある。
2. 不登校児童・生徒への支援の不足
不登校の子どもたちのための居場所作りや学習支援が具体的に記載されていない。
学校外の柔軟な支援体制が必要だが、計画は学校内に限定した支援に留まっている。
学校外で学びや支援を提供する仕組みが欠如しているとの声が多い。
3.「親になる学習」に関する問題点
時代遅れの教材が使用されている
平成18年・19年に作成された「親になるための学習」教材がそのまま使われており、現代社会の価値観や子育ての実態にそぐわない。例として、教材では中高生が「近い未来に親になる」という仮定が前提となっているが、現代の多様なライフスタイルや価値観を反映していない。
内容の偏りと古い価値観
教材の内容が、伝統的な性別役割分担や家庭像に基づいており、現代の社会や家庭の多様性を軽視している。特に、親の役割を固定的に捉えた記述が多く、子どもたちが多様な家族観を学べる内容になっていない。
ジェンダー平等や多様性の観点からみても不十分である。
検証や更新が行われていない
作成当初から教材の効果や妥当性について十分な検証が行われておらず、時代に即したアップデートもされていない。親がもつ”子育てに関する否定的感情”が増加している現状を考慮した内容改善
が必要だが、それに向けた取り組みが見られない。EBPMに基づいた施策であるならば、教材が使われて17年経っているので、効果測定を行なった上で計画に入れるべきではないか。
4. 学習支援の限定的な対象
支援対象が生活困窮世帯や生活保護世帯に限定されている一方で、学習塾費用の高騰により支援を必要とする層が拡大している。
足立区の「未来学習塾」のように、希望するすべての子どもが利用できる仕組みを目指すべきでは。
5. 特別支援教育に関する課題
インクルーシブ教育の推進不足
障害の有無にかかわらず共に学ぶインクルーシブ教育が国際的に推奨されているが、計画ではインクルーシブにほとんど言及されておらず、具体策が示されていない。分断型教育への批判
特別支援学校や特別支援学級が中心となる分断型教育に対し、国連から改善勧告が出ていることへ対応するような計画になっていない具体的な対応策の欠如
教員研修や地域連携、施設改善などの支援体制が不足しており、実現に向けた計画の具体性が欠けている。
6.子どもの意見表明の仕組み不足と、声をどのように反映させるのかの具体策がない
意見表明の仕組みの不足
計画には「子どもの意見を反映する」とあるが、具体的な方法が明記されていない。意見表明を可能にする仕組みやプロセスが不足している。子ども参加型のワークショップの欠如
子どもたち自身が意見を述べ、計画に反映するためのワークショップや対話の場が用意されていない。これにより、実際のニーズが計画に反映されにくくなっている。学校での主権者教育の不足
学校を通じて子どもたちに行政や政策への参加方法を学ばせる仕組みが十分に整備されていない。意見収集の可能性を広げる取り組みが求められる。地域社会との連携の不十分さ
地域社会や市町村との連携が弱く、子どもの声を計画に取り込むための統合的な枠組みが不足している。アドボカシーの重要性の認識不足
アドボカシーは社会的養護が必要な子どもだけでなく、すべての子どもに必要な支援である。特に、子どもたちが自分の権利やニーズを表明し、それを実現するためのサポートが不可欠である。
計画作成プロセスの透明性への指摘
今回の計画を読んで多くの参加者が感じたのは、「誰がこの計画を作成したのか」「どのような専門家が関与したのか」が明確に示されていないということです。計画には専門家の知見や現場の声が不可欠ですが、こうした情報が曖昧なのも問題だと思います。
最後に
今回の集まりを通して感じたのは、一人では気づけない視点や意見が、こうした場を通じて共有されることの重要性です。
もっとさまざまな場所でワークショップをするなど、対話をしながら声を集めていくことはできないのでしょうか?
そして、子どものための計画ですから、子どもにもそのような対話の機会を作れないものでしょうか?
引き続き、この計画をより良いものにするため、多くの声が届くと良いなと思っています。
興味を持たれた方は、ぜひパブリックコメントに参加してみてください!