モノダマシイ 022 初級冒険者から世界を救う勇者様にもおすすめ出来る万能装備品 (スコップ)
剣と魔法とスコップ
「若いの、この手のものを見るのは初めてか?」
武器屋で装備品を迷っていると強面の腕組みおじさんが話しかけてきた。
「は、はい。 昨日村から出てきて冒険者登録をしたので依頼を受ける前に装備品を整えようかと・・・」
おじさんは目を瞑ってうんうん頷く仕草をしたかと思うと「ついてこい」と僕の腕を引っ張って隣の道具屋まで連れて行った。
「冒険者の装備品ならこれしかねぇ!」
おじさんが僕の目の前に突き出したものはスコップ(シャベル)だった。
「え・・・これだと」
言葉を挟もうとするもおじさんの熱い語りがはじまってしまう。
「若いの、冒険者は見栄えじゃねぇ。 そもそもおまえ剣なんて振ったことあるのか? スコップ位はドブ攫いか何かで使ったことがあるだろう。 スコップはな、叩く、切る、突くと大抵のことは出来るんだ。」
おじさんの熱いスコップ語りは止まらない。内容をまとめてみるとこんな感じだ。
・頑丈、とにかく頑丈
・持ち手が自由で使い勝手が良い
・何処ででも手に入る・・・何ならその辺の民家でも(!!!)
・突くことが出来る
・尖らせればかなり鋭く切断にも使える
・投擲武器として投げナイフより殺意が高い
・小型の盾(バックラー)代わりにもなる
・武器制限のある場所で武器では無いと言い張れる(怪しい人物扱いされそう)
・食うに困れば人が嫌がるドブ攫い
・塹壕戦の友(塹壕戦って何?)
・ハンマーほどではないが、それぞれの部位で鈍器や鉄板の様な使い方ができる
・テコ代わりや杖がわりと雑な扱いが出来、移動時はぶら下げることも
・調理もでき、お皿代わりに使え、カレーも掬える(え? ええっ!?)
・穴を掘れる(そのまんまですね)
おじさんの胡散臭さは別としてたしかに有用な装備だと思う。
「坊主、お前の心はもうスコップのことでいっぱいだろ?」
腹が立つけど否定し難い。実際に素人の僕が扱っても程よく手に馴染み、思い通りやりたいことをそれなりにこなせそうな感触がある。
「でも・・・お高いんでしょ?」
僕のその言葉を聞いたおじさんは(食中植物の)花が咲き誇る様な笑顔で
「スコップはな、黄金と銀、そしてミスリル製以外は安いんだ!」
あるんだミスリル製! そしてスコップを叩き込みたくなる邪悪な笑顔はやめて欲しい・・・あ、自然に使い道が浮かんだスコップやはり便利だな。
気がつくと僕はスコップを購入していた。道具屋の店主が優しそうな目をして何故かおまけもしてくれた。
「ありがとうおじさん。 とても参考になりまし・・・」
邪悪な笑顔が待っていたら右手に持つスコップを叩き込まない様に意識しつつ振り向くと・・・そこにおじさんはいなかった。
数年後、僕は中堅冒険者としてギルドではそれなりに知られた人間になった。
互いに背中を預けられる仲間もでき、今日も冒険に向かっている
僕達のパーティー名は「ワイルドヘブン」。
実は仲間達と冒険者ギルドでパーティー登録をする時にスコップおじさんが現れてつけられたつけてくれた。
いや、長々と名前を決められない僕等が悪いんだけど受付嬢の「決まりですね!」という喜びの声とスコップおじさんの邪悪な笑顔には逆らえなかった・・・登録が終わって振り向くとまたいなくなってたけど。
今日は旅商人が襲われたらしい街道へ調査に出かける。冒険者始めたての頃とは違う意味でのドブ攫いの為に。
勿論右手に握るのは以前ものとは別の品だけどやはりスコップだ。
・・・また何か節目があればスコップおじさんの邪悪な笑顔を見る機会があるのだろうか?
というわけで本日のアイテムはスコップです(;´Д`) ナンジャソリャ
日常生活で使わない人は使わないけど、使う人は無茶苦茶お世話になっているだろう万能アイテムですね。
私も思い出した頃に使う機会があるのですが、寸劇の初級冒険者くん同様に手に馴染むよなぁ・・・と毎度完成された道具のフォルムに感心してしまいます。
サイズに見合った重さがあるものの、それすらも無駄なく穴を掘ったりする際の仕事量として活かされているのですよ。
この辺は長年の試行錯誤で得た重量配分と持ち手の多さが効いていますね。
穴掘りの深さ次第で筋肉痛になるのはお約束。
冗談抜きで素人が危機的状況に陥った際はこれ以上の万能装備はないのではとも思います。
まぁ危機的状況がどの様なものかにもよるかと思いますが・・・少なくともゾンビに追われてホームセンターに逃げ込んだら真っ先に探しに行くレベルの基本装備ですね。
まぁゾンビに追われることはそうそうないとは思いますが震災時に瓦礫撤去や衛生環境を保持する等、やはり一家に一本あって損はない装備でしょう(゚∀゚)ノシ
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