湘江怨(湘妃怨)1
中国古代の五帝の一人・堯には二人の娘がいました。長女の名を娥皇、次女を女英と呼びます。
堯帝はある時、舜という若者が親孝行であるという噂を聞きました。
彼を召し寄せて話をしたところ大変気に入り、二人の娘を嫁がせて舜という人物が如何ほどのものか試してみることにします。
やがて二人の娘は舜のように慎み深くなり、また倹約に勤しんで、舜を助け、仲睦まじく暮らすようになりました。
堯帝は彼を信頼して様々な行政を任せます。舜はどれもよく治め、そして堯帝の死後、舜が帝位を受け継ぐことになります。
帝位について39年後、舜帝は南方を巡査する途中、蒼梧(現在の湖南省)の地で亡くなりました。知らせを聞いた娥皇と女英は舜帝が葬られた九嶷山を尋ね、悲しみのあまり湘江へ身を投げたと言います。
『湘江怨』はまたの曲名を『湘妃怨』と言います。
”怨”という字がおどろおどろしい感じがしますが、こちらでは哀愁の意味を表し、娥皇と女英のこの世を去った舜帝への思いを歌っています。
古琴の指法は難しくなく、初心者でも弾ける曲です。同じ旋律が繰り返されるので、慣れないとどこまで弾いたかうっかり忘れちゃう。笑
悲しみの情感たっぷりに弾くのがコツです。
歌詞を歌いながら古琴を弾いている動画が探せなかったのですが、曲だけのものはいくつかあるので是非検索して聞いてみてください。
落花落葉落紛紛,盡日思君不見君。
腸欲斷兮腸欲斷,淚珠痕上更添痕。
一片白雲青山内,一片白雲青山外。
青山内外有白雲,白雲飛去青山在。
我有一片心意,無人與我對君說。
願風吹散雲,訴與天邊月。
花が散る、葉が散る、はらはらと散ってゆく。一日中あなたを思ってもあなたに会えない。
腸断の悲しみに身が引き裂かれ、涙の痕にまた痕を重ねる。
一片の白雲が青山の内にあり、また一片の白雲が青山の外にある。
青山の内にも外にも白雲はあったのに、白雲は飛んで行って青山だけがある。
私のこの一片の心意を、誰もあなたに話すことができない。
願わくば風が吹いて雲を散らし、天の向こうにある月へ伝えて。
攜琴上高樓,樓高月華滿。
相思一曲彈未盡,淚珠兒滴那冰弦斷。
人道湘江深,未抵相思半。
海深終有底,那相思呀是無邊岸。
琴を携えて高楼に上る。楼は高く月光が満ちている。
相思というこの曲は弾いても弾き尽くせず、涙が滴り落ちて琴弦が断ち切れる。
湘江は深いと人は言うけれど、あなたへの思いの半分にも達しない。
海は深いけれど終には底がある。でもあなたへの思いにはたどり着く岸辺がない。
君在湘江頭,妾在湘江尾。
相思不相見,淚滴湘江水。
夢魂飛不到,所欠唯一死。
入我相思門,知我相思苦。
あなたは湘江の頭(源流)にいて、私は湘江の尾(流れの終わり)にいる。
思っても会えず、涙は滴り落ちて湘江の水となる。
夢で魂を飛ばしてもたどり着けず、残るはただ死のみ。
相思の門に入って、相思の苦しみを知る。
長相思兮長相憶,短相思兮無窮極。
早知這樣掛人心,何不當初莫相識。
永遠の思い、永遠の思い出。短い思いでも極まることがない。
この様に心に掛かるのを早くに知っていれば、最初からあなたを知らないでいたのに。
湘江湘水碧沉沉,未抵相思一般深。
自以夢中相見後,令人不覺痛傷心。
湘江の水は深い緑色をしているけれど、この思いの深さには達していない。
夢であなたに会えば、悲しい痛みを感じることはないのに。
引用&参照元:
弦耕琴社 古琴教材【一】
https://baike.baidu.com/item/%E5%A8%A5%E7%9A%87%E5%A5%B3%E8%8B%B1/549790