古琴吟(相思曲)
古琴入門曲の一つ、『古琴吟』を紹介したいと思います。
短い曲の中にいろいろな弾き方の技法がつまっていて、古琴を学び始めるにはぴったりの曲なんです。
この曲には歌詞が付いています。
音音音,爾負心,爾負心,真負心,辜負我,到于今。
記得當年低低唱,淺淺斟,一曲值千金。
如今拋我古墻陰,秋風荒草白雲深,斷橋流水無故人。
凄凄切切,冷冷清清。凄凄切切,冷冷清清。
音音音、あなたは裏切者よ、本当に裏切者、私を背いて今に至る。
あの時、悠々と楽しく歌を歌って飲み交わしたのを覚えている。
一曲が千金に値するほど、あなたと過ごした時間は素晴らしかった。
でも今は古い壁の陰に私は捨てられている。
山奥の荒れ果てた場所で見放され、愛しいあなたはいない。
なんてさびしいの、なんて冷たいの。なんてさびしいの、なんて冷たいの。
『古琴吟』は、古くは1864年に張鶴が編集した『琴學入門』という古琴の楽譜の中に見られ、次のように曲を解説しています。
「昔、蘇子瞻という人が霊隠山で宿をとった。
夜半になり、どこからともなく女の歌声が聞こえてくる。
その歌声を辿ると壁の下に埋葬した跡があった。
翌日そこを掘り返してみるとそこに古琴を見つけた。
この曲はその歌詞を元に作られたものである。」
歌声の主は、恋人に捨てられた女性の霊でしょうか。もしくは持ち主に捨てられた古琴の精でしょうか。
人知れぬさびしい場所で、ずっと想い人を思い続けている女性のやるせない心情を歌っており、この曲が別名『相思曲』と言われる所以です。歌いながら古琴を弾くと、一層悲しさが増す感じがします。
“泛音“の幽かな響きから始まる曲の冒頭は、どこからともなく聞こえてくる女性の歌声を表現しています。歌詞の古壁の陰に捨てられたというくだりでは“推出”という指法を使って見た目にも演出しています。
【引用元】
・弦耕琴社 古琴教材【一】
・https://www.baike.com/wikiid/3794697710288781237?prd=attribute&view_id=58wh2gx2fhs000