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車にハネられすぎて交通事故ごときでは怪我しなくなった話


よく車にハネられます。たしか片手じゃ足りないぐらい轢かれています。途中から数えるのをやめたから曖昧です。

気を抜くと車にハネられる人生でした。
だいたい4年に一度のペースです。オリンピック周期。こち亀に日暮熟睡男が出てきたら警戒しています。今年も読み切りで出てましたね、日暮。


何度も車にハネられているうちに、交通事故に完全に適応しました。慣れてしまったので全く怖くないです。交通事故とは友達になりました。

最初の事故こそ大けがしたものの、二度目から前回の経験を踏まえ、轢かれた直後に受け身を取れるようになりました。
3度目は自転車に乗ってるときにハネられたのですが、チャリを犠牲にして緊急離脱しました。ちょうどマリオがヨッシーを乗り捨てる時みたいな身のこなしです。結局軽度のかすり傷で済みました。
車両と正面衝突した自転車はマキマさんに名前を呼ばれた人ぐらいペシャンコになったので危なかったですね。

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近年はさらに進化して、車に轢かれる瞬間は周りがスローモーションになります。マジです。そんで無傷です。
「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」では敵の攻撃をタイミング良く避けると世界がスローモーになって連続攻撃ができる「ラッシュ」という状態がありますが、まさにあの感覚です(ゲームと漫画の例えが多いのは僕の悪癖です)
きっと当たり屋のプロもこういう感覚を持っているのではないでしょうか。

今度は人をハネる番だ!

交通事故と友達になった弊害は意外なところで現れました。
僕は自動車教習所に1年間通いましたが、ついぞ運転免許は取れませんでした。これ言うと引かれるんですけど、あんまりないことらしいですね。

なんど試験を受けてもダメでした。今度は僕が人をハネる番だゾ~!となるのが怖かったです。高速道路とか泣きそうでした。
あとシンプルに運転が下手すぎました。縁石を縁石とも思わぬドライビングスタイルは教官にとても不評でした。

最初の交通事故

記念すべき交通事故一発目は、小学一年生の時です。2歳年下の弟(写真が面白い)と、一緒に歩いていました。

当時、僕と弟の間ではマリオカートごっこが流行っていました。
口で「ブゥ~ン」とエンジン音を再現しながら走るだけのたわいもない遊びです。ようはただのかけっこなのですが、あの日は様子が違っていました。

いつも通り競走していると、突然 弟が「トゥルルトゥルルトゥルル」などと口から発しました。直後、彼のスピードが急激に上がり、先を走っていた僕を抜き去りました。
僕は何が起きたか、分かりませんでした。すると弟は大きな声で「キノコ!」言いました。ハッとしました、弟は「キノコダッシュ」を使ったふりをしたのです。

マリオカートごっこに革命が起きた瞬間でした。アイテムがあるからマリカーは面白いのです。
弟に負けるわけにはいかない僕は、アイテムの力を借りようと決意しました。キノコに勝つには…

僕は「トゥルルルトゥルルル」と唱えたあと、「テンテンテンッ♪テンテンテレンテン♪」とBGMを口ずさみました。

僕は「スター」を使ったふりをしました。無敵のスター音を絶叫しながら、無我夢中で走りました。半狂乱とはこの様をいうのでしょう。狂人の真似とて大路を走らばなんとやらです。振り返ると弟は遥か後ろにいます。勝利。
弟に負けるかよ。負けないから兄なんじゃ。
自分の肉体が本当に黄金色に光っているような、猛烈な全能感が僕を包んでいます。このままゴールまで突っ切ろう。テンテンテンッテンテンテテンテンッ!無敵無敵僕は無敵!!

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気づいた時には、道路の上に横たわっていました。弟が不安そうに覗き込んでいます。黒いリムジンが止まって、慌てた様子のおじさんが二人降りてきました。壮絶な痛みで視界が歪み、何も考えられません。
おじさんは弟に道を聞いたのか、僕を赤子のように抱えて家に向かいました。


実家の玄関のチャイムを鳴らすと、ヘラヘラした母が出てきました。うずくまる僕を見て驚いたように聞いていました。

母「あら!(息子は)転んだんですか?」

おじさん「それが、お子さんを車で轢きまして」

変な会話でした。おじさんがペコペコ謝っていました。そこからの記憶はありません。

次の記憶は、集中治療室。お尻に麻酔をされたんですが、それが車に轢かれるより断然痛くて、暴れて何回も注射されたのを覚えています。

これが1回目の交通事故のあらましです。スターは無敵じゃなかったんだなと子どもながらに思いました。ピノキオハイウェイみたいにはいきませんでした。

ちなみに、僕を車でハネたおじさんは大企業の社長で、よく部下の専務の方と一緒にお見舞いに来てくれました。お見舞い品は豪華絢爛を極め、欲しかった本や親が買ってくれなかったゲームなどなんでも与えてくれました。交通事故に遭うのも悪くないな、と思ってしまったきっかけであります。
ちなみに部下の方いわく、僕はなにかをさけびながら(スターの音)真正面から車にぶつかってきたそうです。社長さんマジで全く悪くなくて罪悪感すごいな。




そんなわけで車に轢かれることに適応してきたんですが、逆に油断しすぎて、そろそろ漫☆画太郎先生のオチみたいに大型トラックで完殺されるのではないかと気を引き締めています。

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おわり。

身に覚えのない慰謝料にあてます。