伝説の教師
小学生のころ、途方もなく怖い先生がいた。
生徒によく怒鳴り、よく手をあげていた。30代の男性教員だったが、体罰を信じていた最後の世代かもしれない。
カチンときたらすぐ怒鳴る、まさしく瞬間湯沸かし器。怒りのきっかけが毎回分からない。少なくとも小学校低学年には難しかった。
当時「動物占い」が流行っていた。生年月日などをみて、性格を動物に例える占いだ。
休み時間になると女子たちが頼みもしないのに「あなたはイノシシ」「君はオオカミ、黒ヒョウと仲が悪いから気をつけて」などと占ってきたものだった。
お昼休み、占いの矛先は先生にも向かった。教卓で給食を食べる彼に、女子が甘えた声で話しかける。
生徒A「先生も動物占いやろ〜よ〜!先生は何の動物がいい?」
生徒B「ワタシ、先生はコジカだと思う!」
先生「先生はいいよ…」
生徒A「いいじゃん!先生、ぜったいライオンだと思う!ねー!」
生徒B「とりあえず、生年月日おしえてーw」
先生「動物占いは興味ないんだ・・・」
生徒A「え、流行ってるからやったほうがいいよー!w」
生徒B「ぜったい子鹿だよーw」
ドガッ
机を殴る音。振り向くと先生は二発目の拳を振り上げていた。何度も何度も打撃音がする。啞然とする女子たち。
先生「俺はなぁ!!人間だあ!!!!!人間様だあ!!!!決して動物や獣なんかじゃない、知性をもった人間だ!!!馬鹿にするのもたいがいにしやがれ!!!」
先生は吠え続ける。女子は泣き続ける。人間宣言とは裏腹に猛獣のような振る舞いだったので覚えている。
体罰のバリュエーションも豊富だった。
ハマダ君というロン毛気味の子がいた。宿題を忘れた時、彼は先生に長い髪を掴まれてびゅんびゅん振り回されていた。ジャイアントスイングみたいだった。
翌日、ハマダくんは丸坊主にしてきた。よほど嫌だったのだろう。二度と同じ技をくらうまいと対策をしているのがなんだか おかしかった。
◆
先生は尖っていた。授業参観で性教育の授業をやった。
後ろで見守る母親たちの前で、男性器と女性器の説明をしていた。「男子と女子の違いは何か?」と先生は質問をした。
「服が違う!」「髪の長さ!」「声の高さ!」と答える子たち。先生は首を横に振る。親はドキドキしている。
クラスで一番バカそうな子が手を挙げた。「はーい!!女はー!!ちんこがありませ〜ん!!」と叫んだ。教室はどっとウケた。先生は彼をベタ褒めした。親は恥ずかしそうだった。こんなに手が挙がるのを喜べない授業参観があるだろうか。
#忘れられない先生 というハッシュタグがあったので、思い出して書いてみた次第です。
風の噂で、問題を起こして先生を辞めさせられたことだけ聞いてます。今ごろ何してるかなぁ。
P.S
僕は松本人志さんを「伝説の教師」というドラマで初めて見たので、しばらく松ちゃんのことを個性派俳優だと思ってました。
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