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ぐん税ニュースレター vol.51 page03 -FP通信- Part 2
Part 1の記事では導入として金融所得課税それ自体と1億円の壁について解説しました。Part 2の記事では問題点や議論の争点について見てみようと思います。
何が問題か
まず株価が下がります。市場の動向なので要因を断定することはできませんが、単純に金融所得の課税が強化されることは投資家にとっては当然不利なメッセージと受け止められます。岸田前首相は元々金融所得課税の強化を主張していましたが、総理大臣になると株価は急落しました。そして石破首相も同じく金融所得課税の強化を主張し、自民党総裁が決定した瞬間に株価は暴落しています。そして両者ともに金融所得課税については一気にトーンダウンし株価暴落の火消しに必死になっていました。
内容はともあれ声を大にして主張していた政策を短期的な(瞬間的な)反応だけを見て引っ込めるなら最初から言わなければいいのに・・・と思います。彼らのこういうところが政治家として不向きであり、また信用されない要因かと思います。
庶民の影響
話が逸れましたが、金融商品を多く保有している富裕層にとっては金融所得課税が強化されるということは累進課税のように所得が多いほど税負担が大きくなる可能性がありますので、これに嫌気してその前に株式を売却したり海外の金融商品に投資したり、といった行動が考えられます。資金が海外に流出するので、国内企業の資金調達の規模が縮小し株価下落の要因に繋がっていくので、そうすると少額ながらも投資をしている一般庶民にとっても影響が及びます。つまり金融所得課税は富裕層だけでなく一般庶民にも影響する議論と言えることになります。
影響があるのはそうかもしれませんが、その影響はどの程度なのでしょうか。まず富裕層と言われる人は日本にほんの2%程度しかいません。ですが格差が広がっているのは事実で、一般庶民の投資行動よりも富裕層といった大口投資家や機関投資家の売買の方が市場に与える影響は大きいです。2003年に金融所得課税が軽減され20%から10%になった際は1年で日経平均株価は4,000円弱程度急上昇しました。そして2013年に10%から20%に引き上げた際は一時的ですが1ヵ月ほどで日経平均株価は1300円程度下がりました。現在の日経平均株価は円安進行で下駄を履かされているものの40,000円程度で推移しています。まぁこれが少し上がりすぎとして3万円台半ばだったとしても長期的にみれば金融所得課税の影響が直接的に株価下落要因と断定するのは尚早かもしれません(あくまで長期的な話です)。また新NISAの恩恵が今後どう影響してくるのかもわかりません。制度自体は良いのですが、いかんせん政府の財政出動が弱すぎて民間にお金が行き渡っていませんので。
そして金融所得課税は資金の流出だけでなく人の移動、つまり税逃れのための海外移住のリスクも議論されています。そうなると税収が減ることにも繋がりますが、このあたりも国税庁は既に対策を考えてはいるようです。相続・贈与税については海外への税逃れ対策は講じられているので、所得税についても同じ方法を取ることも検討可能なようです。(参考:東京財団政策研究所)
課税の公平性
高所得者の税負担が少ないという現行制度を是正するとして、どう金融所得課税を強化するかも問題です。現在は一律20%ですが一律で割合を増やすと我々庶民の負担も大きくなります。そんな時のための新NISAがあります。ですが投資枠を使い切るかは人によりますが上限があるには変わりありませんので、累進の方が適切なのかもしれません。
結局、金融所得課税も現在議論されている103万円の壁や消費税減税と同じくどうやって公平性を保つかという話になります。103万円の壁については、高所得者の方が恩恵があるといった揚げ足取りの主張もありましたが、それって消費税の減税も同じですよね?みんな消費税は減税した方が嬉しいと思っていると思いますが、高所得者ほど高い買い物をするので恩恵は大きくなります。
金融所得課税を強化した方がよいかどうかの結論には至りませんが、課税の公平性はもちろん、そもそもの話として格差生まれる構造を経済政策で是正すべきだと思います。競争はあるべきなのですが、現状格差が拡大している状況は健全と言えるか非常に疑問です。
ファイナンシャルプランナー 原