ぐん税ニュースレター -お客様訪問- バックナンバー 2017年7月号
お客様との対談 ~上野村様~
挑戦と自立の上野村。
村役場出身の新村長、始動。
小林浩一:村長就任、おめでとうございます。
黒澤八郎村長:6月14日に初登庁したばかりなので、まだ1週間のほやほやです。
小林:上野村の第三セクターの株式会社上野振興公社設立からのおつきあいなので、今年で20年になりますね。当時は黒澤さんが村役場の職員として作業服を着て振興公社の経理を自分で入力していたのですが、頭脳明晰でとても印象的でした。企業会計の複式簿記を誰にも教わらずに、公会計の知識を使いながら、自分で仕訳をしていました。能力があるのに謙虚で気さくな人柄で、村の誰からも頼りにされていましたよね。
黒澤村長:1980年から今年の2月まで37年間職員として、公社や振興課などで観光開発事業をはじめとする村の事業はほぼ全て経験してきましたので、村の行政は分かっているつもりです。
小林:村長としての抱負をお聞かせください。
黒澤村長:前村長の政策を継承しつつ、自立した村を作っていきたいと思っています。
小林:雇用としては、株式会社上野振興公社の他に株式会社上野村きのこセンターがありますね。ぐんま税理士私法人は両方の法人の税務顧問をさせていただき、ありがとうございます。
黒澤村長:他にも、平成27年には「合同会社ゆーぱる上野」を設立しました。上野村内の土木維持工事などは、これまで村外の業者に発注していたのですが、簡単な修繕であれば、村内の人材でできることがわかりましたので、この会社に技術者登録してもらい、村からこの会社に発注することにしたのです。
小林:変わったネーミングですね。
黒澤村長:前村長からの指示で社名は私が提案しました。「ゆー」は、上野村の「U」。協働を意味する「結う」のゆー。挑戦を意味する「勇気」のゆー。持続を意味する「悠久」のゆーの4つの意味があります。さらに「ぱる(仲間)」を合わせて、親しみを込めて作りました。日本郵便とは関係ないですよ(笑)。
木材燃料が村の活路に。
エネルギーの地産地消を実現しています。
黒澤村長:これから特に力を入れたいのは、林業の六次産業化です。村の96%が森林という上野村では、山は村の重要資源。木材利用の“出口”をエネルギー産業に見出した動きがあります。平成23年から建築資材に不向きな木材から作った固形燃料「ペレット」を活用して発電し、供給しています。ヴィラせせらぎなど温浴施設や農業施設のペレットボイラー、一般家庭や公共施設ではペレットストーブが活躍しています。外部から購入する灯油と価格比熱量はほぼ同じです。ペレットを使えばエネルギーの地産地消ができるだけでなく、雇用も創出できるんです。実際、波及効果も含め150人の雇用を生み、12億円の経済を回しています。
小林:黒澤村長は20年前から村の自立について発言されていましたよね。
黒澤村長:村の森林資源と経済が村内で有効に循環する「村内循環型経済社会」の構築をめざしています。交通条件や地形的な条件から企業誘致による雇用の拡大は難しい状況にあるため、これを過疎化を食い止め、森林保全と雇用拡大を両立させた打開策と位置づけて取り組んでいます。村独自の制度で村の自立をめざす「上野村モデル」です。
また、村事業の経営を安定化させて、民間企業のようにフットワークを軽くしてステップアップさせることが重要と考えています。実際、上野村の様々な事業を支える優秀な人材がたくさんいます。上野村を愛する彼らの仕事が将来につながる仕組みをつくっているのです。
経営者型村長による改革モデル。
村一丸でのブランド力構築へ前進。
黒澤村長:平成27年には産業振興と雇用促進の両面からきのこセンターを株式会社化しました。椎茸の栽培・販売を通じて、これも「上野村ブランド」づくりになります。雇用を安定させて、所得の向上につなげ、さらに新しいことにもチャレンジしていきたいです。
小林:まさに「経営者型村長」ですね。では、最後に村の方向性を教えてください。
黒澤村長:上野村のさらなる発展をめざし「攻める 守る 備える」というキーワードで考えています。村は、村の外から外貨を集め、経済を回していく必要があります。特産品をブラッシュアップし、観光に来てもらえるように魅力ある村にしていきたい。人口がかつての5,000人から1,000人台に減少し、村内経済が縮小している今、村の資源に付加価値をつけて売り、外からこれを補うしかありません。これが「攻め」。これら観光などの産業振興で雇用を創出しつつ村民の暮らしを「守る」、そして定住対策と合わせた人材育成ですね。そして、将来の人材への投資が「備え」にあたります。
小林:人口減少、高齢化への取り組みは日本国の縮図のようですね。
黒澤村長:行ってみたい、住んでみたい、住み続けたくなる魅力ある村づくり、ブランド力の向上が今後の課題です。どんどん情報を発信して「選ばれる村」にしていきたいです。
小林:企業経営者のように村の将来像をビジョン化し、導いていくという黒澤村長さんの就任によって、これからの上野村の将来についてますます期待が持てました。本日はありがとうございました。