学習指導の「足並みバイアス」を乗り越えるを何度も読み返している件。
私が通常級での実践を何度も読み返すのは自分的にかなり珍しいことでしたので、書き残しておこうと思い、久々にnoteを開きました。
学習指導の「足並みバイアス」を乗り越える
フォレスタネット 企画・編集
渡辺道治 著
学事出版 2021.5
気になった箇所をいくつかnoteしていきます。
p86 作文指導の「足並みバイアス」を断舎離する
まさしく「守破離」です。型を教え、真似をし、変化させながらオリジナルにたどり着きます。学校文化では「写す」ことへの抵抗値が恐ろしく高いですので、先生方は二の足を踏むことが多いかと思いますが、渡辺先生は軽やかに超えています。「自分で思ったことを書きなさい」という一見すると主体性を重んじている言葉が、実は子どもたちの主体性を一番奪っているのではないだろうかと考えさせられました。「教師が指導せずとも」と謙遜されていますが、この学習をデザインし、環境を整え提供し続けることで「教師が指導せずとも」の一言につながるのです。「書き出し集め」という具体的な取組は、ぜひ多くの学級で取り組んでもらえると作文嫌いな子たちは救われますし、作文が好きな子たちは自分の文章をさらに高みに持ち上げることができるでしょう。
p92からの「算数の学習を変える」ではステップ6 知識記憶から方法記憶へが特に気になりました。具体的な取組は本書を読んでいただければと思いますが、「利き感覚」のお話の中で、「体感覚優位」を取り上げていたことにびっくりしました。視覚優位、聴覚優位は特別支援教育の分野以外でも見聞きすることが多くなりました。しかし、体感覚まで取り上げていることはそう多くはないのではないでしょうか。算数指導として「向山型算数」を参考にしたと記されていましたが、教科指導の中に、特別支援教育で言われているような感覚を意識した学びが作られていることに嬉しくなりましたし、今後、教科指導×感覚のコラボはさらに化けるかもなという認識に変わりました。
「合科的指導」特別支援教育がもっとも得意としている領域かと思いますが、渡辺学級では各教科をしっかり意識された合わせた指導がすでに展開されていました。子どもたちの学びの深化・広がりを発達段階に合わせながらデザインできる力は突出しています。特別支援教育の現場では、「合わせる」意識よりも先に「学ばせたい内容」がどうしても先に来てしまい、合科の意識が弱いのだと考えていますので、特別支援教育に携わる先生たちは自分も含め、渡辺先生の取組から学ぶところは大いにあると思います。
あまり内容を具体的に書き出してしまうとネタバレになってしまいますので、具体的なところはもちろん本書を手にとっていただければと思います(決して、私が何かを頼まれているわけではありません(笑))。
最後に一つだけ。
p154ノマドスタディで輝く子どもたちでの取組に一つ。ここまでは本当にいろいろな積み上げがあるわけですが、子どもたちに全てを任せる学びの学習場所。教室や図書室、コンピューター室は皆さんすぐにイメージできるのかと思いますが、「スタンディングシート」。これは本当にワクワクしました。ちょうど私がTwitterに「立って学ぶ」ことが選択肢にならないのだろうか?座って学ぶことがデフォルトを脱却できないのだろうか?と呟いていた時でしたので、同じように考え、実践されていることに単純に胸が踊りました。いるじゃん!!って。これより先は本書に任せますが、通常級でこのような取組をされている渡辺先生自身がどのような学びをされ、なぜこの取組に至ったのかをお聞きしたいと思うようになりました。
「バイアス」を視点として、学びを新たにクリエイトしている本書ですが、私が読むかぎり特別支援教育の視点がいくつも取り入れられています。著者ご本人の思いとは違う切り取り方をしているかと思いますが、そこはあくまで個人的な感想ということでご容赦いただければと思います。
ぜひ一度手にとって読んでほしい一冊です。