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『踊る自由』

2023/6/6
大崎清夏,2021,左右社.

同期から借りた詩集を開く。1編めからサイコー。「たぶん好きだとおもう」って言われて手渡されたけど、なんでわかるん?占いみたい。
大崎清夏さん、『目をあけてごらん、離陸するから』も私の周りのひとたちの間で話題で、読みたいなと思っている。

【ふたりで】

あなたの線は黙ってきっぱりと絵になってゆくのに、わたしの線はぺらぺらと言葉になってばかりいた。(p. 27)

「線画の泉」

渋谷区の路上で、きちんとした身なりの会社帰りの歩行者や、小型犬を連れた夜の散歩の人に混じって、いずれ植込みの緑が車の吐き出す悪い空気を吸い取ってくれるはずのいくつもの四角い区画を横目に、泣きながら歩いている私は生きていた。ひとりぼっちで、満ちて、引いて、浮かんで、沈んで、晴れて、凪いで、澄んで、繋がって、切れて、揺れて、翻って、膨らんで、萎んで、潤って、乾いて、光って、溢れて、
生きて、どこにもいなかった。(pp. 35-36)

「渋谷、二〇一一」

「照明論」「東京」も好き。

【ひとりで】

五千年も昔に誰かが放った想像上の蠍を、私たちはいまもたいせつに養っている。プラネタリウムには蠍の物語が
いつでも取りだせるよう密封してある。(p. 44)

「プラネタリウムを辞める」

Iさんは水滴を振りはらった。
ららららっと鳩が飛びたった。(p. 44)

同上

いまでもたまに仕事で六本木へ行くんですけどあそこのハトはカラスみたいに真っ黒で都会を生き抜くためにハトだってこうして黒く染まったんだと思うといとしくなります。(p. 67)

「みや子の話」

ほんの十数年暮らしただけよ東京なんて。みんなほんとうにいなくなるのが好きだよね。海のある街に住んだってきっと海だけじゃ満足できないから高い電車賃をかけてあちこち出かけるだろうし出かければ出かけただけ思いいれのある場所が増えて——生きてるあいだあとどれだけ寂しくならなきゃいけないんだろう。(p. 69)

同上

「世界が踊っているのだから」「みや子の話」「渋谷、二〇二一」と続いてやっと、震災だって気づいた。幽霊の気配がするよね、そうよね。幽霊、というのはここでは直接死者を意味する言葉ではなくて、記憶とか、巡る時間のはざまにたゆたう輪郭のぼやけた他者のこと。

まだこんなにも、何もかもすべて、説明が足りていないのに
ぜんぶぜんぶ中途半端に調べたままで
私たちはいなくなってゆく。(p. 83)

「魂の療養所」

「魂の療養所」はタイトルもだけど情景がまんま『銀河鉄道の夜』だと思った。

***

配属初日から寝込んでて病弱な新人入ってきたと思われてそうで恥ずかしい。けど復帰。
同期は好きな子いっぱいいるけど、チーム文芸の安心感はよい。「あの上司の部署なら安心してるなちゃんを送り出せそう」って、みんな私のパパママなん?愛されキャラ的な自己提示はしてないしできないんやけど、なんでか同期から可愛がられてて居心地がいい。(せんぱいに話すと「そりゃあんたが危なっかしーからでしょ」って言われた。ちゃんとしてますよぉ)
ご近所さんの会もちょうどいい。お昼よく一緒に食べてたギャルズのお泊まり会は流れちゃったからリスケしたい。
配属発表の日、待ち時間に後ろの席の子と恋話してたら、遠くの女子が椅子持ってすすすって寄ってきて「うんうんわかる」って参加して、ゆきずりの男子に「お菓子いる?」って話しかけて絡め取って、みんなでわいわいキャッキャしてた、たのしい。高校卒業する時、こんなのはもう二度とないって覚悟したのに、研修の2ヵ月間だけ高校生だったな。

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