999日目の話
最近滅多に見なくなったもの
身近にいる人とモニターの向こうのメディアの人を除く
程よいパーソナルスペースの外側にいる人たちの
鼻から下、口元を滅多に見なくなった
そしてボクも滅多に見せなくなった
昔からある目は口ほどにモノを云うという諺は
たしかに今なら頷ける
ここ数年間で目元だけで表情が読み取ることが器用になった
顔全体の表情が隠れてしまっているので
隠れた余白の部分を読み取る
いや、都合のいいように想像して補正していく
そんな行間を読むような作業を繰り返すうちに
人の顔というものが目元だけの存在に感じられるようになってきた
勝手に脳内補正している方が楽だし無駄な情報も少なくて済む
飲み物を飲んでいる時とか、
食事をしているとき時に一瞬見えるあの部分を見てしまうと
別人を見ているような奇妙な感覚を覚える
口元ってこんなに恥部だったっけな
髭を剃り忘れても
ヘルペスが出来ていたとしても
舌を出していたとしても
相手にはわからないんだよな
素顔を隠したがらない人がいるように
素顔を隠したい人もいる
その内実にはやましさがなかったとしてもだ
そのうち本当に心を許した相手にしか素顔を見せないような
マスカレードな世界になってしまえばいい
それ以外の心を繋がない関係ではボクたちはお互いに記号で十分だ
ハッシュタグが付いて
カテゴライズがあって
レッテルがあって
国があって人種があって性別があって
顔も〇目も〇鼻は△
手は2本足は2本 指は5本
耳が左右に付いていて
髪の毛があって、ないときもあって
服はいろいろな色と形があって
ざっくばらんに言ってしまえば記号の塊
そう ボクたちは思ったより ずっと記号なんだ
※
毎日文字をウェブの世界に流し込んで
999日が経った
文字の羅列を紡ぎ続けて
明日ひとつ桁が上がる
すこし、ほんのすこしだけやり遂げた感がある
意味のないことでも継続していけば
それなりに見栄えが良くなるものだ
ちょっとは自慢してもいいよね
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