初めて入選を頂いた。

2024年3月
ある絵画の公募展に初出品し、
ありがたいことに入選いたした。
会友推挙の速達通知がまず届き、
次の日に入選の速達通知が届いた。
本日、
出品するにあたって額縁を頂いたりアドバイスを頂いたり公募展について詳しく教えて頂いたり等などめちゃくちゃお世話になった高校の恩師に電話でお聞きしたところ、
一発会友推挙は稀らしい。
先生もびっくりしていた。
とても、
とてつもなく、
めちゃくちゃ激しく嬉しい。
叫びながら真っ直ぐの道路を爆走したい
心持ちだ。
「やったァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
「嬉しいぃぃぃぃぃいい!!!」
「ありがとうございますゥゥゥゥゥォォォォオ」
本当にありがたい。
本当にありがとう。

そんな気持ちのままで何食わぬ顔をして過ごし
約1週間が過ぎた。
今日もまたそろそろ明日へ向け寝るかと
布団に脚を入れ込んだ折にふと、
頭の中で光が反射するように
高校時代の記憶が閃いた。
高校3年に上がるときだ。
あのとき私は落選した。

部活動ラストイヤー、
高校美術部が伝統的に毎年出品している
市町村の地区展で私の作品は入選し、
全国総合文化祭と呼ばれる
全国の高校文化部が目指す祭典、
そこに出品される作品を選考する県展に
私と、共に選ばれた友人の作品が展示された。
順序でいうと地区展→県展→総文祭の勝ち上がり戦。
そして、各作品の講評や代表の総評を終え、
廊下で待機していた2人に近づいてきた先生が
「おめでとう」
と手を差し伸べたのは、
友人の方だった。
あの瞬間の衝撃を未だに忘れはしない。
色褪せもしていない。
ただ、ただ、
心臓の辺りから溢れる数多の感情を抑えて
隣で一緒に座り込んでいた友人に
「すごいじゃん!おめでとう!」
と私は努めて明るく声を掛けた。
今考えると、
あぁいうのを世間では挫折と呼ぶのだろうか。
その上、美術部部長だった私は
晴れて総合文化祭へ発つ友人の同行者として、
自分の作品は1点も無いのに、
祭典に参加することになってしまった。
あのときの私の心中は、
なんというか、
耐え難いほど屈辱的で、
悔しくて、
哀しくて、
憎たらしくて、
腹立って、
やり切れないほど虚しかった。
参加者が割り振られたグループごとに分かれて、
会場周辺を散策するツアーのときになど、
にこやかなリーダーの子に
「あなたの作品はどこら辺にあるんですか?
このあと観に行きたいです!」
と聞かれて
「あっ…実は私は出品してないんです。
部長として代表として、同行してるだけで…」
と申し訳なさそうに返した気まずい空気の
それといったらもう。
地獄だった。
その祭典で行われる全てが、
「私は出品してないのに。」
という気持ちでいっぱいで、
何も心から楽しめなかったし
屈辱以外の何ものでもなかった。
自分のためを思って仕向けてくれたと分かっていても
先生は酷なひとだ、とも思っていたし、
同行された友人は自分のことをどう思ってんだろ、
という疑問がずっとささくれのように
心の端に引っかかっていた。

あれから高校を卒業した友人は、
絵画とは全く関わらない学校に入り、
絵画とは全く関わらない仕事に就いた。
その間私は絵を描いていた。
美大は美大でもデザイン学科に入ったため、
絵を描かない時期もあったり、
別のことにハマったり、
就活中はデザイナーになる一心で、
絵を描くことなど微塵も
将来の候補に入れていなかったが、
なんやかんや
やってみたり辞めてみたりしているうちに
また握っていたのは筆だったし、
また向かっていたのは布張りキャンバスだった。

そして最近、
ついに私は画家になろうと腹に決めた時点で、
画家として生きていくなら
ダメ元でもやってみないと何も始まらないから、
積極的に公募展とかに出品していこうと考え、
高校恩師から紹介された公募展へ出品してみたのだ。
なんだか、
高校3年のあのときから、
今この瞬間まで筆が繋がっていたような気がして、
私は私の頭を撫でたくなってきた。
あのとき全国手前で落選して、ジョナサンにタコ殴りにされたディオか
それ以上位に屈辱的で悔しい思いを味わったのも
私だし、
それからずっと何かは描いてたのも私だし、
就職してすぐに辞めてから
なんかデケェ絵を描きてぇな〜って世界堂からキャンバス買って担いできて黙々と描いてたのも私だし、
その絵で初出品・初入選・推挙を頂けたのも私で。
だから、今になってあの苦い記憶が
頭の中でヒラッと反射したのかもしれない。
あぁ、あそこから来たんだ、それで
だからこそ、ここへ来たんだなと。
色んなことや色んな所が
変わったり変わらなかったりしていく中で、
約8年前かもっと前から地続きで、
何か一つ実が成った感じがするのだ。

そして、
それはもちろん私自身だけの手柄ではない。
あの日友人に「おめでとう」と手を差し出したが、
卒業後もずっと自分と交流を続けて応援して下さった
高校の恩師。
ずっと反対せずに私を支えてくれている母や祖父母。
私と付き合い続けてくれている友人たち。
私の作品を額装してくれた美術用品店の方々。
運搬・搬入作業を行ってくれたスタッフさん方。
そして私の作品に挙手して下さった審査員の方々。
など全ての方々のおかげで、
今回の入選があったと思っている。
本当に感謝しかない。

よぉ私、
これが終わりではなく、
節目として、
ここから始めようじゃないか。
これからも日常は何も変えず、
淡々と作品制作し続け、
何食わぬ顔でやっていこう。
でも嬉しいことがあったら、
堪えるなんてせずに
踊ったり叫んだりして表現することは許そう。
と自分に声掛け、
今日は寝る。


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