見出し画像

葛葉川本谷遡行記

 暑い夏は冷たい沢水を浴びながら沢登りを楽しみたいところです。
 沢登りは一般登山道と違って人の手が入っていないところが楽しいのですが、谷は元々崩れやすい地形であることから危険な場所になります。
 行かれる方はヘルメットはもちろん、十分な装備と使い方の修得が必要になりますのでご注意ください。
 最初はガイドツアーなどに参加することをお勧めします。


時期

7月下旬
 ※雨は危険なので梅雨を避けて天気が安定してからが良いでしょう。

アクセス

 新宿から秦野または渋沢まで小田急線で1時間
 「秦野→渋沢駅北口」または「渋沢駅北口→秦野」の神奈川中央交通バスで菩提原まで20~30分

紹介ルート

https://www.google.com/maps/d/edit?mid=1KK79qGh-crNzve-jZvHTYZMFvr4js6U&usp=sharing

 菩提原バス停~くずはの泉~大平橋~富士形の滝~大平橋~くずはの泉~菩提原バス停
距離:11.3km 登り:844m 下り:844m

菩提原バス停~くずはの泉

 バス停に降りたらバス通りを離れて丹沢の山に向かって進みます。
 直ぐに道の右側を葛葉川が流れる場所に出ます。この辺はまだ堰堤の続く町中の川なので入渓しません。暫く川に沿ってなだらかに登っていくと「くずはの泉」は左という看板があるので矢印の通り歩いて行きます。この辺から坂道も少し角度がついてきます。
 気温は30℃を越えていて汗が止まりません。

案内板を見落とさない様に

 「秦野市表丹沢野外活動センター」が右手に見えたら「くずはの泉」まではもうひと頑張りです。まだ舗装路ですが、ここから坂道は更に角度が上げます。
 ちなみに野外活動センターではテント泊やBBQを楽しめますので、ここに泊まりながら沢登を楽しむというのも有かもしれません。残念ながら通り過ぎる人が使えるトイレなどは無い様です。
 暫く急な坂を登り堰堤からの水の流れを横切れが、道の先に建物の矢面が見えます。これが駐車場のトイレの屋根です。「くずはの泉」は駐車場の目の前ですのであと少し頑張りましょう。
 「くずはの泉」は全国名水百選に選ばれた水場で、いつでも冷たい水を楽しむことができます。ポリタンクや大量のペットボトルで汲みに来ている人も居ますが、看板にも書いてある通り取水口の独占は禁止ですので譲り合いながら給水しましょう。手ぬぐいを濡らし、首にかけると冷たくてとても気持ちが良いです。
 ではここで沢登の準備を整えていきましょう!

くずはの泉

くずはの泉~大平橋

 準備が出来たらまずは水場の近くにある水神様に安全祈願します。もちろん人力で十分安全には配慮しますが、崖が崩れてきたらアウトなので神様の力もお借りしましょう!
 「くずはの泉」併設の「葛葉の泉広場」の橋を渡って対岸に渡ります。ちなみにこの広場はBBQ禁止ですが葛葉川で川遊びができるとても良い場所です。
 東屋前の踏み跡をたどって少し登り、小さな堰堤を越えた先から入渓します。
 入渓したら沢の流れにそって歩いて行きます。最初は2~3mの小滝が続きます。登れそうなら積極的に小滝に突っ込んでいきましょう!慣れていないと反射的に水を避けてしまいますが、沢においては水に濡れるのを避けるとかえって危なくなってしまいます。もうどんなに濡れても関係ないや!というくらい序盤で水に濡れておきましょう!
 ちょっと登るのが大変そうな滝は無理せず安全なルートを探して巻きます。沢登りはルートを自分で決めます。滝を登れば勝ちという人も居ますが、無理に登る必要はありません。沢歩きを楽しんで無事戻ってくることが最善です!

イワタバコが沢山咲いてました

 最初に訪れる試練は三段の滝です。右から大きく巻くこともできますが、この巻き道は沢からかなり高く、細く、滑落することを考えると結構怖いです。巻き道が必ずしも安全という訳でもないので、この時点で登るのが無理そうなら下った方が良いでしょう。
 一段目は滝の右から登って途中トラバースして左から登りました。必ずしも正解という訳ではありませんので、自分なりに安全そうな登攀ルートを検討してください。
 二段目は釜が深く188cmの私でも腰までつかります。左側を水浴びでも登れそうですが右の水の流れがない場所の方が安全そうだったので右から登ります。
 三段目は高くて確保なしでは危ないので素直に右から巻きました。巻き道といっても滑れば滝下ですので慎重に。
 三段の滝を越えればひと段落です。暫く小滝を越えながら進んでいきます。

こういう所は楽しいのですが

 次の試練は8mの滝です。滝の右に埋まっていた大岩が崩れて沢に落ちてきています。谷は元々崩れやすい場所なので絶えず変化します。崩れたおかげで登りやすくなる場合もありますが危険になる場合もあるので注意して登っていきます。
 水の流れに沿っても登れそうですが、こちらは左側が登りやすそうなのでそちらを登ります。ただ水が少ない場所では苔がぬめって滑りやすくなっているので注意が必要です。わずかなデコボコでもグリップは変化しますので慎重にグリップを確認しながら登っていきます。
 登り切ったところに先行していたパーティが休んでいました。引率登山でしょうか?リーダー以外のメンバー4人は若い子たちの様でした。ここで先行パーティをパスして先に進みます。

二番目の試練 8mの滝

 3つ目の試練は板立の滝と呼ばれる7mの滝です。こちらが恐らく葛葉川本谷の核心部だと思います。一見して危ないので素直に右側から巻きました。ただ、以前より巻き道の方も崩れが進んでいる様で、なんとなく前よりちょっと悪くなったような気がします。
 先に進むと二股の滝があります。この沢で沢筋を間違えそうな二股はここ1箇所のみです。ここは右が本流になります。

二俣の滝は右が本流

 4つ目の試練が最後です。上の方に太平橋のガードレールが見えたら5mの二段滝です。ただこちらは崩れが進んだ結果、昔より登りやすくなったように感じました。滝の右側を登りました。
 太平橋下は少しスペースがあるので休憩ポイントにするパーティが多い様です。

大平橋~富士形の滝

 太平橋からのエスケープは真下からはいけませんので一旦太平橋を通り抜けます。
 小滝を暫く登り太平橋より少し高い場所まで来たら振り返りましょう。右岸に林道まで抜ける踏み跡がありますのでここからエスケープすることが可能です。
 今回はもう少し先の富士形の滝まで遡行しますので今はエスケープせずにこのまま登っていきます(後でここまで戻ってきます)。
 エスケープポイントの先の滝だけちょっと高いので巻きますが、残りは滝の真ん中を突っ切って最後の水浴びを楽しみます。富士形の滝が近づくにつれ次第に水量は減っていきます。
 暫く登っていくと沢が左に曲がっている場所の向こう側に富士山の形をした大きな岩が少しずつ姿を現します。真ん中を水が落ちているこの滝が「富士形の滝」です。昔と比べるとなんか小さくなったような気がするのは気のせいでしょうか?

富士形の滝

 一応この富士形の滝も岩の右側から容易に巻くことができて稜線までツメることができますが、ここから先は沢枯れが急速に進み、水もなく暑くるしい藪漕ぎが増えるのであまり行きたくありません。ここを遡行の執着点とします。
 暫くここで涼んでいこうかな?と思っていましたが念のためスマホで天気予報を確認すると、いつの間にか夕方からにわか雨が降る予報に変わっていました。沢で雨が降ると水量が急に増えたりして危険なので、残念ですが早めに退散します。

富士形の滝~大平橋

 一般的に沢を下るのは危険と言われます。これは「足場が緩く怪我をしやすい」ことや、「谷が崩れてくる危険性」などもありますが、なんといっても「滝などの下ることができない場所で進退行き詰ってしまう」ことにあります。
 幸い富士形の滝から太平橋に下るまでの間は、ちゃんとわかっていれば降りやすいルートがあるので行き詰ることはありません。ただし慣れていないと見つけられずに危ない場所を下ろうとしてしまいますのでザイルやスリング等の確保装備は必ず携行しましょう!
 大平橋が近づき、高低差が大きい滝の上まで来たら左岸の踏み跡に沿って林の中に入ってしまいます。枝沢までトラバースしてから下ります。とはいえ枝沢の土壌は崩れやすいので慎重に!
 枝沢から本流に戻ったら丁度エスケープポイントに出ますので右岸から踏み跡をたどって太平橋の林道に出ます。

大平橋~くずはの泉

 太平橋に出たら沢装備は解除してかまいませんが、この日は沢装備のままヘルメットだけ脱いで舗装路を左に登っていきます。
 暫く舗装路をあるくと、右手の草むらの中に菩提(葛葉の泉方向)へ降りる案内板が隠れています。ここから登山道を下っていきます。
 ちなみに私は沢足袋をはいていますが、ソールのない沢足袋で山道を下ると一歩一歩が足つぼ状態で結構痛いです。昔の人の足の裏は頑丈だったんだなと改めて思います。
 下っている途中、未だ雨予報の時刻前だというのに雨が降り始めました。沢装備のままにしておいてよかったです。濡れるのも構わず下っていきます。
 舗装路に出たら右に進めばすぐに車止めゲートがあり、葛葉の泉に戻ることができます。

くずはの泉~菩提原バス停

 葛葉の泉広場の対岸にある東屋に移動して暫く雨宿りです。雨雲レーダーを見ると、雨が降っているのはここだけの様子。予報の時刻に降る雨雲もその後に控えているものの、とりあえずは20分ほどで一旦止むみたいなので雨上がりを待ちます。

東屋で雨宿り

 雨がやんで着替えると太ももに一匹のヒルがとりついてました。沢では一匹も見つけませんでしたがどこかで取り付かれていた様です。あら塩を持ってきていたので、しっかり塩漬けにして退治します。

太ももに憑りついたヒル

 来た時と同じ道を通って菩提原バス停まで歩きます。歩いている最中にも後ろからゴロゴロという雷鳴が聞こえてきて、いつ雨が降り出すか気が気ではありません。
 農家の直販棚がそこかしこにあるので覗いてみましたが、行きでは見かけたキュウリがすっかりなくなっていました。残念ながら良いものから売れてしまう様です。
 まもなくバス停という所で道路に水玉模様が描かれ始めました。小雨が降り出す中、運を天に任せてバス停で待っていると、丁度良く来てくれたので本降りになる前に無事乗車できました。秦野に移動するバスの中で、フロントガラスにはたくさんの水滴がはじけていました。

動画


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集