要約 ライプニッツ『モナドロジー』
・モナドは不可分の生命であり、表象と欲求をもつ。
・モナドは重複しない
・モナドに窓はないが、予定調和の世界である。
・最善説と共可能性
・充足理由律/事実の真理と矛盾律/永遠の真理
・個体の完足性は消極的な悪であるのみで、最善世界は維持されている。
〇ライプニッツはデカルトとスピノザの実体概念を批判して、モナドという実体概念を提起する。それは確かに単純かつ非物理的で不可分なものであるが、表象と欲求という能力をもち、生命的に活動する個々の存在だとされる。
〇表象とはモナドが宇宙を映すその仕方である。無意識的状態においても微小表象として機能し続けるため、モナドないし自己の通時的同一性は保証されている。
〇欲求とはこうした表象の変遷をつかさどる動力であり、各々の能力に応じて宇宙を明瞭もしくは不明瞭に映し出しているのである。
〇モナドは重複せず、すべて異なる個体として存在する。これが不可識別者同一の原理であり、この原理は充足理由律という世界観に支えられている。
〇モナドはまた窓を持たず、つまり相互に不干渉である。各モナドが対応して連動している、作用しあっているようにみえるのは、神が全個体の間を取り持って整合的な世界を作っているからである。これがライプニッツの予定調和である。
〇予定調和は最善観を導く。神は自らの悟性において各個体に含まれうるすべての述語を羅列し、さらに全個体が矛盾なく存在できる可能性―共可能性をもとに各個体に述語すなわち個体の歴史を精査する。こうして共可能性の組み合わせリスト、すなわち可能世界のリストのうち、神は自らの意志によって最善の世界を作り出したのである。
〇充足理由律は、人間的認識において機能し、選択された可能世界―現実世界の因果連鎖を説明する。これが事実の真理である。
〇他方、矛盾律は神も従わざるをえない永遠の真理であるが、これは可能世界のリスト、共可能性と矛盾という決定的な基準においてみられる。
〇充足理由律は、神の自由に置いて選択された可能世界で機能するという意味で偶然的真理とも呼ばれる。偶然的真理が神の自由、善意を示している。
〇現実世界において個体に組み込まれた全歴史は完足性として変更不能である。この世界における悪とは被造物の有限性に根差す欠如としての悪のみであり、最善世界において積極的な悪は存在しないといえる。
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