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成功体験を捨てればトレーナーは成功する


はじめに

昨日、朝イチは新規の「パーソナルトレーナー独立開業コンサル」の第1回目をオンラインで開催。
その後、偶然ですが全く別ルートで「パーソナルトレーナー独立開業」のご相談をいただきました。
特に個人の方が新規参入を目指す際に、初回はとにかくいろいろなご質問をし、お話をお伺いします。
特に僕の場合、重要視するのは「開業を志す動機、きっかけ」
その際にお話しされることが多いのは「トレーニングを通しての成功体験」です。

トレーニングを通しての成功体験

「病気や怪我を克服した」
「ダイエット、ボディメイクに成功した」
「コンプレックスがなくなり自分に自信が持てるようになった」
などトレーナーを目指す方、現在トレーナーの方はこんな成功体験を持ち、それがきっかけとなりトレーナーになった方も多いようです。

成功体験の弊害

もちろんきっかけとして、そのような成功体験を持っていることは悪いことではありません。
トレーニングを通して自分が「ポジティブ」に変化したことは人生の中で輝かしい瞬間であり、誇るべき記憶です。
それを大切にしておくことは人生の宝物であると言っても良いでしょう。

ただその成功体験を「トレーナーとして活かすこと」には大きな弊害があります。
それは簡単にいうと「自分の方法論を押し付けてしまうこと」です。
例えば
「筋トレ」で成功したら「筋トレ」を。
「ヨガ」なら「ヨガ」を。
「ピラティス」なら「ピラティス」を。
「朝トレ」なら「朝トレ」を。
「プロティン」なら「プロティン」を。

言い出したらキリがないのですが・・・

でもそれはあなた個人の成功体験に過ぎない。

運動の目標、性別、年齢、運動能力、体力レベル、運動歴、筋繊維の組成、生活環境、性格、好み、その時の精神状態、価値観などなど

どの運動とどんな生活環境とどんな栄養素の組み合わせがどんな結果をもたらすのかは上記の要素の組み合わせで変わります。

だからどんな方法がその一人のクライアントに適しているのか?
クライアントごとに十人十色、百人百様。
「これが全ての人に有効!」なんて方法はありません!

それをクライアントごとにオーダーメイドで処方し、指導方法も変え、そのクライアントが望む結果をもたらすのが本来のパーソナルトレーナーの仕事です。

なぜ成功体験に引きづられるのか?
これは世に「パブリックナラティブ」という宣伝方法が溢れているから。
あえて強い言葉を使うとすれば「洗脳されているから」です。

「パブリックナラティブ」とは

  1. 私はあんな困難な状況をこの方法で克服した

  2. 実は私だけじゃなく世の中の多くの人はこの方法で成功している

  3. 同じ状況のあなたもきっとこれで克服できるかも

ざっくりいうとこんな手法でのプレゼンや宣伝方法を言います。
もちろん順番はこれだけではなく、目的に応じて2.と3.が入れ替わることもあるのですが、あらゆる場面であらゆることがこんな風に宣伝されているのがわかるはずです。

それはSNSでインフルエンサーがやっているステレスマーケティングからダイエットジム・ダイエットサプリ、果ては地球温暖化まで、基本的に同じ手法が用いられています。

ここでポイントなのは「原因」や「根拠」よりも「体験・体感重視」であることです。

ほとんどの方はテレフォンショッピングのあの手法はわざとらしくて嘘っぽいと思っているでしょう。
でもあの手法がずっと続いているのはあれで売れるからです。

毎日毎日「体験・体感重視」のパブリックナラティブ手法に晒されていると、気づかぬうちに思考もそうなりやすい。

そうすると
「初めて新規に新しいビジネスを立ち上げる」

「自分がトレーナーになるモチベーションは何か?

「そう言えばあの憧れのトレーナーさんは自身の成功体験を語っていた」

「そうか!私もそれで変わったんだ!」

という思考の流れで「自身の成功体験」が強く脳に刻まれ、それを元にパーソナルトレーニングビジネスを進めてしまうわけです。

ただ思い出してください。
「パブリックナラティブ」はプレゼンや宣伝の手法にしか過ぎない。
だからそこで語られている「成功体験」は100%真実ではないかも知れないし、他の全ての人に当てはまる訳ではないことを。

ただ「ダイソン」の吸引力が長持ちなのは誰が相手でも同じで、誰にとっても便利で有効です。
それに掃除機のない家はほとんどない。

でもパーソナルトレーナーが売るのは「運動」と「生活習慣の改善」と「健康」と「人生の質の向上」
しかも1時間5,000円から30,000円と結構高額商品です。
ましてや日本のファットネス人口は4%以下。
さらにコンビニフィットネスなら月に3,000円です。

潰れていくパーソナルジムを見るのは本当に悲しい・・・

つい最近も面識のあるトレーナーのパーソナルジムがクローズしました。
ここ数年オープンが続いているように見える「パーソナルジム」ですがその裏ではクローズも続いていますし、つい最近話題になったように「パーソナルジム」での怪我の多発も問題になっています。

僕自身も「コンサルティング」の仕事をしているため「個人トレーナー」がどんな動機で開業し宣伝をしているのかを常にリサーチしていますが・・・
「(自分だけでなくクライアントの例も含めて)個人の成功体験を全面に出しつつ、そこで展開されている商品はパーソナライズされていない一般的なもの」
なのか
「特殊な商品をあたかも全ての人に効果があるようにうたったもの」
なのかに分かれる様です。

ただどちらも「パブリックナラティブ」の手法が採られている。
でもきっと「みんなの宣伝方法が同じ」だから「自分も同じ」だと考えている気がします。

もちろん宣伝方法として「パブリックナラティブ」は有効ですが、それで釣られてきた顧客を満足させ「極めて特殊」な「高額商品」である「パーソナルトレーニング」を定期的に購入させるには「個人の成功体験によってもたらされる商品」では極めて魅力に乏しく、長期的継続的により多くの人に購入させ続けるのは難しいのです。

もう一度書きます。

「運動の目標、性別、年齢、運動能力、体力レベル、運動歴、筋繊維の組成、生活環境、性格、好み、その時の精神状態、価値観などなど
あらゆる要素を考慮して、目の前にいるそのクライアントの方「個人」と真剣に向かい合い、完全オーダーメイドのトレーニングを提供する」

これがパーソナルトレーニングであり、それができるから高額商品を定期的・継続的に買ってもらえるのです。

その際にトレーナー個人のトレーニングによる成功体験は「宣伝手法としての価値」はありますが、トレーナー自身がとらわれている場合、邪魔にしかなりません。

昨日も

初回のコンサルの方もやはりきっかけはご自分の成功体験でした。
だからこそ上記の内容をお伝えしたところ、とても喜んでくださいました。
そんな柔軟な思考の持ち主で僕も嬉しかったのと同時に、初回で一番重要なマインドセットを作れたことで今後の成功が見えてきた気がしました。

一緒にどんな素晴らしいジムができるのか?
本当に楽しみです。

気づきましたか??

実はこのnoteも「パブリックナラティブ」の手法を応用して書かれていることを。


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